![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/120487974/rectangle_large_type_2_7de81873bfccd80477b8efb3f268f4c3.jpeg?width=1200)
黒原拓未は第2の村上頌樹になれるのか?両投手のスタッツから考察
どうも、キュプリーヌス(@cyprinus_wrc)です。
今年のセリーグはタイガースが18年ぶりの優勝を果たしましたが、その原動力となったのが大卒3年目の村上頌樹です。
規定投球回に到達して防御率1.75、10勝6敗と先発の柱として1年間ローテを守り抜き、新人王は当確、MVPも獲得するのではないかと言われています。
そんな村上に匹敵する成績を残すのでは、とX(旧Twitter)で噂されているのがカープの大卒2年目左腕の黒原拓未です。
果たしてその噂通り黒原は来季覚醒することができるのでしょうか?両投手のスタッツを比較しながら考察していこうと思います。
なぜそのような噂が出てきたのか?
根拠は二軍成績にあり
この噂の根拠は、両投手の二軍成績にあります。
一昨年、去年とウエスタンリーグで無双状態となっていた村上ですが、その村上と今年の黒原の成績が似ていると言われているのです。
両投手の二軍成績を比較
まずは、本当に両投手の二軍成績が似ているのか確認していきます。
![](https://assets.st-note.com/img/1698825006296-8mGpOZDqT8.jpg?width=1200)
近い数字も多く、似ているといえば似ているでしょうか。ただ、勝利数と投球回以外は全てのスタッツで黒原が上回っており、似ているというよりは黒原の方が村上より優れているという表現が正しいかもしれません。
両投手ともに90投球回以上の投手ではK-BB%とtRAがファーム1位と、投手の実力を測るうえで非常に需要とされるスタッツで優れた数字を残していたことが分かります。
村上はなぜ今年覚醒したのか?
二軍で優れた数字を残していたことは分かりますが、なぜ今年の村上は一軍であれだけの数字を残すことができたのでしょうか?
2020年は杉山(ホークス)、2021年は大竹(当時ホークス、現タイガース)が優れたK-BB%をマークしていましたが、翌年覚醒とはなりませんでした。果たして村上の覚醒はどのようにして引き起こされたのでしょうか?
投球内容から覚醒理由を紐解く
そこで、村上の昨年と今年の投球内容を比較し、覚醒理由を紐解いていきたいと思います。
![](https://assets.st-note.com/img/1698827249004-ELwr1k12Mg.jpg?width=1200)
大きな変化があったのが
ボールゾーンスイング率
ボールゾーンコンタクト率及びコンタクト率
ファーストストライク率
空振り奪取率(Whiff%)
2ストライクからの三振割合(Put Away%)
ストライク率(CSW%)
以上6点です。4.以降のスタッツはなるべくイメージしやすいように日本語で表したのですが、若干の解釈の違いがあるかもしれません。ご了承ください。
この6点をまとめると、より初球からストライクが取れるようになり、カウントに余裕が生まれたことでボール球を振らせるケースも増えたうえ、そのボール球で空振りを奪う確率も上がったために奪三振も増えていき、四球も減ったといったところでしょうか。
ストライクゾーンへ投じる確率(Zone%)は変化していませんが、ボールゾーンスイング率は大きく上昇しているため、ギリギリのゾーンを攻める制球力は向上していたことが推測されます。
球種に変化はあったのか?
ボールゾーンスイング率が向上した要因としてギリギリのゾーンへ投じること以外では、高めへ勢いのあるストレートを投じることや、MLBでも大活躍を果たした千賀(メッツ)のように鋭く落ちる球を投じることなども考えられます。
そこで、村上の球種構成や球種の質の変化があったのかを確認していきます。
まずは構成を確認していきます。
![](https://assets.st-note.com/img/1698829190739-2q4M6kasAc.jpg?width=1200)
最大の変化は、スライダーを捨ててカットボールを増やしたことでしょう。大きく曲げて空振りを奪うのではなく小さく曲げてゴロを打たせようとした、もしくは今年のカットボールに手応えを感じていたことが考えられます。
また、ストレートとフォークの割合も大きく増えています。全体的に球速が速い球種を増やしたと言えるでしょう。
続いて球種の質をPitch Valueで確認していきます。
![](https://assets.st-note.com/img/1698829750715-8AO1K1D3UA.jpg?width=1200)
最も数字が改善されているのがカットボールです。昨年は二軍でも効果的に使えていなかった球種が、今年は一軍で最大の武器となっており、カットボールの質の向上が成績向上に大きく寄与していることが分かります。
また、同じようにカーブもマイナスからプラスへ転じています。効果的に使える武器が2つも増えれば、当然成績は大幅に良化されるでしょう。
球質向上の要因は?
ではなぜ、ここまで村上の球種は昨年と比べて向上したのでしょうか。要因の1つとして考えられるのが球速の上昇です。
![](https://assets.st-note.com/img/1698830619583-mmr9Y2r8Bv.jpg?width=1200)
Pitch Valueが0点台となったフォーク以外は、いずれも平均球速が2km/h以上上昇しています。特に投球の核となるストレートは145km/h台となっており、常時力強いストレートを投じていたことが推測されます。
当然、遅い球よりも速い球の方が捉えることは難しいため、全ての球種の球速が上昇すれば、安打を打たれる確率も低くなるでしょう。
覚醒理由まとめ
以上、様々なスタッツから村上覚醒の要因を探っていきましたが、
ストライクと空振りを多く奪える制球力の向上
全体的な平均球速の上昇
カットボールとカーブの球質向上
以上3点が村上が覚醒した要因であると私は考えます。
黒原はどうすれば村上のように覚醒できるのか?
では、黒原はどうすれば来年村上のように覚醒できるのでしょうか?考察していきたいと思います。
村上に近い数字を残す
言うは易く行うは難しではありますが、今年の村上の投球内容に近い数字を残せれば、当然成績も近くなるでしょう。
投球内容比較
そこで、両投手の一軍での投球内容を比較していきたいと思います。
![](https://assets.st-note.com/img/1698832226012-ntROsXMsWC.jpg?width=1200)
イニング数は村上が144.1、黒原が12.2と大きく差があるため、単純比較ができない点はご了承ください。
村上と大きく違うのは、
ボールゾーンスイング率
ゾーンスイング率
見送りストライク率(CStr%)
ストライク率(CSW%)
以上4点です。
ボール球を振らせることができず、逆にゾーンに投じた球は振られているため、3,4も低くなってしまっています。
ゾーンスイング率が高いことから、ストライクゾーンの中でも真ん中近辺などの厳しくないコースに投じるケースが多くなってしまっていることが推測されます。より厳しいコースへ投じる制球力を磨く必要があるでしょう。
球種構成及び質,球速は?
球種は構成が異なるので比較が難しいため、ここでは黒原の数字のみを確認していきます。
![](https://assets.st-note.com/img/1698837825180-pMEQH9xty0.jpg?width=1200)
ストレートとカットボールで投球割合のほぼ7割を占めており、速球系の球種が主体となっていることが分かります。そこにカーブとチェンジアップを加えて緩急をつける形となっています。
平均球速はストレート・カットボールともに村上に近い数字となっています。これ以上の球速アップはなかなか難しいかもしれません。
一方で、カーブの球速は村上より12.5km/h速くなっています。村上はスローカーブ、黒原はオーソドックスなカーブとなっているようです。
Pitch Valueは一軍での防御率が10.66ということもあり、大きくマイナスとなています。ただ、村上も一昨年の一軍でのPitch Valueは大きくマイナスとなっていたため、同じように改善することが期待されます。
二軍ではカットボールが3.24、チェンジアップが2.90となっているため、一軍でもこの数字を叩き出し、-2.25となっているカーブの数字を改善すれば村上に近い数字を残せるかもしれません。
覚醒のために最も重要なことは?
やはり、最も重要になってくるのは制球力で間違いないでしょう。
ただ、その制球力も二軍では発揮できているため、備わっていないわけではありません。二軍でやっていることを一軍でできるメンタルさえ備われば、村上のように急激な覚醒を果たしても不思議ではありません。
結論:覚醒の可能性は充分にあり
すでに球速が村上と同レベルになっていることもあり、ここからなにか大きなレベルアップをしなくとも、一軍で成績を残せる投手となる可能性は充分に秘めていると言えるでしょう。
村上のようにゾーンギリギリへ投じるケースを増やし、見送りストライクの数を増やしていければ、2桁勝利達成も夢ではありません。
画像引用
データ参照