統合失調症 人格が変わってしまった娘をこの胸に取り戻すまで No.2 発症

「娘さんが帰りたくないと言って動きません。迎えに来て下さい。」

学校からの連絡にびっくりしたものの、大したことだとは思っていませんでした。久しぶりに学校に行けて嬉しすぎたんだ。だからちょっとゴネてみてるだけだろうって。

でも、今までそんなことをする子ではなかったのです。

振り返ってみればこれが最初の大きな変化でした。

この日はなんとかタクシーに乗せて連れ帰りました。

でもそれから徐々に、娘は私達家族が見たこともなかった姿を現していきました。

私が育ててきた娘は口数が少なく、おとなしく、素直で、いつも笑顔で、我慢強かった。軽度の知的障碍はあったものの、そんな性格だったのでどこにでも連れて行けました。

ただ、自分の思っていることを上手に伝えることが出来なかったので、学校で辛いことがあっても自分の胸にしまって耐えてしまう子でした。

高校に入学してから1学期が終わるまでの3か月間、きっと毎日が夢のように楽しかったのでしょう。

『学校が好き 皆とずっと一緒に居たい』

その想いが夏休みという孤独な日々に積み重なり、それが良いほうにでなく悪いほうに増幅されてしまった。きっとそういうことなんだろうと思います。

そして「我慢」がなくなっていきます。


早く学校に行きたいと思う気持ちが強いので朝は6時頃に目覚めます。家を出るのは8時過ぎなのに。

そして支度が終わったらすぐに学校に行こうとします。

「行ってもまだ学校の扉は開いていないからいつもの時間まで待とうね」

「なんで行っちゃいけないの!今すぐ行きたいのに!」

「だから行っても開いてないから・・・」

「どうして開いてないの!私に意地悪してるんでしょう。お母さんなんか大嫌いだ!!!!!!」

「意地悪なんかしてないよ。学校は9時にしか開かない、知ってるでしょう。今から行ったら8時には着いちゃうから1時間も立って待ってなくちゃいけなくなるんだよ。」

「もういいよ!!!!!」


娘は時間がわかりません。今が何時何分かはわかります。好きなテレビは夜の何時から始まるというのもわかります。でも、目的地に着くまでの所要時間や身支度の時間を遡って計算することは出来ません。

だからこんなことが起きます。以前は説明すれば納得しておとなしく待つことが出来ました。でも、「我慢」というものが消えた今、どんなに説明してもなだめてもただ娘を逆上させるだけでした。


好きなTV番組が特番や野球中継でなくなった時も大変でした。

TV番組はTV局が決めるものであなたじゃない。これは仕方のないことなんだと説明しても社会の仕組みが理解出来ていないので納得が出来ません。

逆上して泣きわめきます。その声が今まで聞いたこともないほど大きくて、つんざく様な高い声。


これは普通じゃない。


発症から2か月ほどが経っていました。

どんどん酷くなっていく娘を見て、私は友人の心療内科のH先生にメールをしました。

H先生は娘が幼稚園の時から仲良くしているママ友です。一緒に旅行に行ったりもしたとても親しい間柄でした。

「娘の様子がおかしいの。一度診てもらえない?」

「思春期にはよくあることだよ。そんなに心配しないで大丈夫だと思うよ。」

これで一旦は納得しました。一時的なものなんだと。


でも、娘を見ていて一番怖かったのは食事でした。

口に入れたら飲み込むだけ。一切噛まずにただ黙々と飲み込んでいきます。

それも口いっぱいにほおばるので飲み込めず「ぐえっ」と吐き出したり、時には本当に喉に詰まらせて苦しがるので焦って水を飲ませたり。

目が離せませんでした。


H先生に「やっぱり普通じゃないと思うから診て欲しい」ともう一度連絡を入れ、診てもらうことになりました。


今日はここまで

7年前を思い出しつつ書いていますので時系列が少し自信がありません。

一度に色んなことが起こりすぎたせいもあります。

それと、今この日記を書いているのは娘が私の胸に戻ってきているから。

今はとても幸せに暮らしています。ご安心下さい。







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