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夏補正…少し、前進。

「んなーーー!!!!きんもちいい!!!」



夏休み。部活やら課題やらで多忙を極めていたのも束の間、突如として現れた1日off。


「見て!!!○○!!!向日葵だよ!ひ!ま!わ!り!こーーーんなにたくさん!!」



「…はいはい。笑」


菅原は、とんでもなく自由人で。



今日だってどうせ暇でしょとか言われて無理やり連れてこられた近くのひまわり畑。



天気も、一日しかない休みを機嫌よく盛り上げてくれている。


「んもぉー、冷めてるなぁ。せっかくのおやすみにこんなに綺麗な景色が見れてるのにー!」



まるで、菅原のテンションに天気が合わせているかのように。


「てか、向日葵畑って、99本までしか植えられないらしいよ。100まで行くと、なんか植えるための土地代が跳ね上がるらしい。」




「え!!!そうなの!?初めて知った!!」


「まぁ、嘘だよね。」



「いや、どんな嘘!?!?」



「だって向日葵めちゃくちゃ種落とすじゃん。99所の騒ぎじゃないでしょ。笑」



「むむ…確かに。」


「あ、そうだ!そのひまわりの種!!落ちてないかな!」



「なんでよ」


「メジャーリーガーみたいにボリボリ食べたい!あ、あった!!!」



「おい絶対やめとけ!野良の種食ったら絶対に腹壊すぞ!」


ただの、選手とマネージャー。


「ええぇー。こんなにたくさん落ちてるのに…。じゃあ、、、こうだ!!!」



「痛ってえ!投げつけんな!」


「必殺!ホームラン打った時のお出迎えアタック!!!」



「やめろ!こんな痛くねえよ!」


菅原とは、特別仲が良いとは思っていない。



「あ!!リス!!!野生のリスだよ!!!」


「ね!見て!!種食べてる…可愛いいいいいい!!!!」



…。



「あ…ほんとだ…初めて見た。」


「私も!ねっ、来てよかったでしょ??楽しいでしょ!?○○の初めても貰っちゃったし!?」



「……まあな。」


菅原には、いつも振り回されてばかり。



「わっ、あんなにイヤイヤだったけど無理やり連れてきてその反応…もしかして○○、ツンデレ?」



「…うるさ」


仲が良いなんて、思ったこと無い。



「可愛いとこあるじゃーん?えー?顔赤くさせちゃってぇ?」


「いや菅原の方が可愛いとこあるけど?」



「え、ちょ、何よ…急に」


「まず前提として向日葵より全然菅原の方が綺麗だし?え、今日もしかして気合い入れてきた?」



「髪も、心做しかいつもよりつやつやだし。」


「洋服もオシャレで、メイクも…」


「ちょ…やめて!!」



「えー?あ、昨日より笑顔が可愛い!」


「それ以上は…は、恥ずかしいから…////やめて…」



でも、彼女を好きでいる自信なら誰よりもある。


「いつも菅原が俺にやってくることじゃん?何がだめなん?」



「いや…その…お、押されると…弱いタイプで…//」


きっと、彼女も同じ気持ちなのだろう。



「いいんじゃない?それで。」



「……無理////多分…釣り合ってないし…」


ひと夏の、一日の、一瞬間。



少し、期待させちゃう。



いや、それでいいのかもな。



「だって俺、咲月の事、好きじゃないもん。勝手に俺の事好きになれば?まぁでも、多分振るけど。笑」


「……もおー!!!!!雰囲気ぶち壊すな!馬鹿野郎!あんたなんか嫌い!!大っ嫌い!」



「…あっはは!!」



また、逃げた。



汗が少し、頬を伝い




心底暑いと思える季節。




…初めて咲月って呼んでみたけど、案外気づかれないもんだな。


そんな鈍感な所も



彼女の眩しい笑顔も


ちょっと振り回されたからって拗ねる顔も



今しか無いんだ。



お互いがお互いに好きと分かっていても



「付き合ってください」



この言葉は自分から言えない。



付き合う前が1番楽しいという事に縋って、



いつまでも現状に満足し続ける。


夏の暑さに負けない、どうしようもない気持ちを。




「…咲月。」



「何…なに!?!?え!さ、さ、さつ!さつき!はいっ!」



「来年も…また行こうな。」



「…」



「…うん!!!絶対だよ!!!」


夏補正。


…少し、前進。

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