自賠責保険制度(強制保険)について
| 強制保険は「被害者救済」が目的
交通事故被害者の救済を目的とした法律である「自動車損害賠償保障法」(第3条)で「自動車運行者の『損害賠償責任』」が明記されています。
また、第5条で、原動機付自転車や特定小型原付を含むすべての自動車に加入が義務付けられており、いわゆる「強制締結」義務があることから「自賠責保険」と「自動車損害賠償責任共済」の二種を一般的には『強制保険』と呼んでいます。このページではこの二種を「自賠責保険」として記載します。
| 自賠責保険の支払い対象は・・?
自賠責保険等で補償されるのは、交通事故などで他人を死亡または負傷させた「人身事故」の場合であり、 相手の方の死傷に対する損害賠償として保険金が支払われます。
| もし自賠責保険に入ってない場合には・・?
たとえ事故を起こさなくても、自賠責保険等に未加入で運行した場合は自賠責法違反となり「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」、自賠責保険の証明書を所持していなかっただけでも「30万円以下の罰金」が科せられます。
また保険に加入せずに無保険運行をした場合には、交通違反となり刑事罰のほか行政処分点数6点が付加され、結果として運転免許の効力が停止される処分をうけることになります。
|自賠責保険の補償範囲は・・?
自賠責保険の補償範囲は、対人賠償に限られています。
つまり相手方に対する人身補償のみで、事故を起こした車の運転者自身の死傷等には適用されません。
ただし、自損事故の場合でも同乗者が死傷した場合は自賠責保険から補償を受けることができます。
自賠責保険の目的が被害者救済ということを考えると当然ですが・・。
もちろん車両保険ではないので自分の車の損害や、ガードレールなどの工作物の損害など、いわゆる物損事故は対象外です。
自賠責保険の加入・継続の手続きは、通常は新車購入時と車検更新時に行われ、保険料も併せて納めることになります。
|自賠責保険で補償される額は?
自賠責保険の補償範囲としては
○ 被害者が死亡した時
○ 被害者が負傷した時
○ 被害者が負傷により後遺障害を負った時
です。
そして、それぞれ限度額(最高額)が規定されています。
○ 被害者が死亡した時・・・最高3000万円まで
○ 被害者が負傷した時・・・最高120万円まで
○ 被害者が後遺障害を負った時・・・最高4000万円まで
となっています。
後遺障害を負った時は、障害の程度や介護の必要性によって等級が第1級~第14級まで分類され、それに応じた金額が決まっています。
ちなみに、神経系系統の機能や精神、腹胸部臓器へのひどい障害で介護を要する場合で常時介護が必要な第一級は4000万円。随時介護を要する第2級は3000万円となっており、それ以外の障害は最高が第1級の3000万円~第14級の75万円までとなっています。
※後遺障害等級はこちらで ↓
https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/resourse/data/toukyu.pdf
| 自賠責保険の傷害に対する補償限度額は120万円
上記のように自賠責保険の補償範囲のうち、交通事故により被害者が負傷した場合、補償限度額は被害者1人につき120万円まで。
補償の具体的な内容としては、診察や処置などの治療費や、通院のための交通費、看護料など。休業損害や慰謝料も120万円の限度額の中に含まれています。
被害者救済のための自賠責保険等の制度ですが、治療費、慰謝料など込みの120万円で十分かという議論もされました。が、結果的には最低限を自賠責保険制度で担い枠外は任意保険(自動車保険)に加入することによりこれで賄うことになります。もし任意保険に加入していない場合には自ら(自腹)払うことになります。
| 自賠責保険の重過失減額
自賠責保険においては、示談交渉で行われるような過失相殺は行われません。が、一定以上の過失があった場合のみ、減額するという扱いがされます。それを「自賠責保険の重過失減額」といいます。
今回はここまでにします。次回は自賠責をもうちょっと掘り下げましょう。
なお、自動車損害賠償保障法について関心のある方は ↓