「使用貸借契約」は・・・
テレビドラマ「正直不動産」をみていて、おやっと思ったことがあったので調べてみた。
|ドラマの概要
ドラマの設定としては、Aが自分名義の住宅(土地・建物)を売却するのだが、この家には自分の子どもBと実の親甲(Bの祖父)の二人が住んでおり、Bが甲を介護している。
AはB、甲に相談なく不動産売却契約をするという設定だ。
子細は不明だが同居していたようにも思えるので余り適切な想定ではないかもしれないが・・~(笑)
このドラマでは、現に住んでいるBと甲が「使用貸借契約」を理由に
・居住者に相談なく不動産の売却し、強引に退去させようとしたことは平穏な生活を阻害するので不当
として、所有者のAに立ち退き無効を主張することになる。
ドラマなので円満解決となるが・・・
学生時代には債権法や借地借家法等を多少学んでおり・・・・
「使用貸借契約」の場合、しかも期間を定めず、目的を定めずに契約した場合の使用貸借契約は、貸主からの通知で解約ができ退去を求めることができると認識していたのだ・・が・・・おやおや・・・
|使用貸借契約ってなあ~に
皆さんは使用貸借契約って知っていますか?
良い機会なので、この使用賃借契約についてちょっと説明しますね。
使用賃貸契約とは
使用貸借契約は、契約の一種形態で民法第593条に定められている。
貸主からの借用物を借主が無償で使用及び収益し、借主が使用収益した後に貸主に借用物を返還することを約束することにより、使用貸借の効力が発生するというもの。
簡単にいうと、
所有している土地や建物などの不動産を無償で他の人に貸借すること
です。
都会では少ないかもしれないが、地方に行くと、長男名義の土地に兄弟を住ませる(新宅するなどというところもある)ということがあるし、親の所有している土地(親名義の土地)に、子どもの家を建て無償で使用させるというケースなどが使用貸借契約として多いケース。
一般的には、使用貸借は親族間で行われることが多いが、隣人や友人など、血縁関係のない他人に土地や建物を無償使用貸借するということもあります。
実際裁判になり判例集に掲載されているものの中には、他人や友人間の例もあります。
|使用貸借と賃貸借との違いは
使用貸借も賃貸借も「貸し借りする」という契約は同じなのですが、金銭などの対価を伴うか否かの違いです。
通常は土地は「地代」、土地と建物なら「賃料」としての金銭のやりとりを伴いますよね。
不動産に限らずにもっとこまかい例を示すと、友だちからカメラを借りることなども無償か有償かによって契約形態が変わります。
このように賃料等金銭をもらう契約を賃貸借契約といいます。一方無償の場合には「使用貸借契約」といいます。
このように金銭のやりとりの有無が使用貸借と賃貸借を分ける大きな違いです。
|契約は書面が必要?
契約は書面である必要もなく口頭でも良いとされている。
契約期間や使用目的などを明確にしない契約でも有効である。
中には「無償で貸すよ」、「借りるよ」ということだけで暗黙のうちに成立している場合もあるが、無償での契約の場合は「使用貸借契約」ということになる。使用貸借の場合には口約束、つまり口頭による契約が多いようです。
契約書のない口約束による使用貸借では「いつまで貸せばいいのか」という明確な期日を設定せずに、「返してほしい」と言わない限り、ずっと貸したままになってしまう例も多いのです。
|使用貸借契約の解約・返還は
民法第598条の1項では、
返還時期を定めなかった場合でも、使用・収益目的が定められていたときは、借用物の返還時期を、借主の使用及び収益が終わる前であっても、使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、貸主は、直ちに返還を請求することができる。
とされており、借主の使用目的が達成される前でも、相当の期間が経過していれば、返還請求ができるとしている。
判例では、
「『使用、収益の目的』は、当事者の意思解釈上、適当な家屋を見付けるまでの一時的住居として使用収益するということであると認められるから、適当な家屋を見付けるに必要と思われる期間を経過した場合には、たとえ現実に見付かる以前でも民法第598条第1項により貸主において告知し得べきものと解するべき。
というものがある。
結局、使用貸借契約では、
所有者から「返して」と言われれば、借りている側はこれに応じなければならない
というのが使用貸借の基本的なルールなんですね。
|まとめ
使用貸借の期間を定めている場合にはその期間満了時に、期間を定めていない場合には使用貸借の目的が達したと認められる時に返還請求をすることができます。
貸主が返還請求をした時点で、借主は速やかに要求に応じなければなりません。
テレビドラマなので設定や子細なところは不明だが使用賃借契約をひもとく良い機会になった。
いざ土地を売却しようとすると、住んでいる人がいる(使用貸借契約がある)ために、さあ~どうしたらよいかと弁護士などに相談する方もいますし、兄弟間で流血騒動になった例もあります。
トラブルを避けるためには、貸し借りなどはきちんと期間を定め、賃料や使用目的等を決めて、契約書を取り交わしておくことが望ましいですね。
そのことによって貸主も借主も法律によって保護されることになりますね。