『アブセンシア~FBIの疑心~』シーズン2 もしかして『不思議の国のアリス』?
地上波ドラマみたいに「前シーズンまでのあらすじ」は無く、いきなり本編から始まるので、ストーリーを忘れてしまった方はS1から観直したほうがいいかもしれない。またS1未見の方のS2からの視聴は勧めできない。
シーズン2も中盤くらいまで『THE BRIDGE/ブリッジ』的な群像劇になっており、そこに『ホームランド』と『FRINGE/フリンジ』が入っているような感じだ。
(以下、結末や核心に関する記述あり)
イスラエルとアメリカ合作で監督、脚本家にプロデューサーはほとんどイスラエル人とユダヤ系。原作があるわけではないのだが、クリエイターや脚本家たちは、イスラエルが舞台でモサドかなんかを念頭に作ったシナリオを、アメリカとFBIに置き換えたのかもしれない。FBIという設定では、ちょっと無理があるところも多い。
モルドヴァといえばヌマヌマ・ダンス(恋のマイアヒ)が有名だが、傭兵の売り手市場という情報は聞いたことが無い。むしろ欧州最貧国の一つであるモルドヴァは傭兵輸出国だ。劇中のモルドヴァはおそらく、製作当時のウクライナを意識しているのだろう。米英のメディアではロシア側の傭兵ばかり取り上げられていたが、ウクライナでは「やけに装備の良い所属不明の英語を喋る軍事要員達」の目撃談は多く、アメリカのPMC(民間軍事会社)が活動していたのはほぼ間違いないと思われる。また現在のウクライナ東部は地雷だらけといわれているが、ソ連崩壊後とくに軍事紛争はなかったモルドヴァでは、地雷の話はあまり聞かない。おそらく第二次世界大戦の残存地雷ということなのだろう。
主人公の養父はByrneという姓からしてアイルランド系(演じるポール・フリーマンはイングリッシュ)。警官や消防士は伝統的にアイルランド系が多い。また傭兵トンプソンの隠れ家に聖ミカエルの画が掛けてあるのも興味深い。正教会でも崇敬される聖ミカエルだから、オクサナが掛けていたのかもしれない。聖ミカエルは兵士/警官/救急隊員などを守るといわれる守護天使だ。
元夫のFBI捜査官と市警の刑事は、相変わらず主人公の引き立て役。ライアン・ゴズリングとベン・アフレックを足して割ったようなパトリック・ヒューシンガーの演技がパッとしない。いや、頑張っているんだろうけど、他の俳優に比べて見劣りする。カーラ・テオポルドはたまにイギリスアクセントが出る。主演のスタナ・カティックを除くとメイン・キャストの大半はイギリス人。彼らの演技がシナリオの弱点を補っている。やはり群像劇はイギリス俳優に限る。
まあ、そうは言っても主演のスタナ・カティックありきのシリーズで、シーズン2では彼女のドレス姿も見られる。主人公の名前が「エミリー」、新しい相棒がジョン・クラシンスキー似の髭男。狙っているのでは、というのは考え過ぎか?
さて、ガラスに書いた文字が曇って浮かび上がるという、ダリオ・アルジェントの『サスペリアPART2』のオマージュっぽいシーンがあったので気が付いたのだが、主人公が閉じ込められたり、そこから逃げようとして大量の水に流されたり、『不思議の国のアリス』まんまじゃないか。考えてみたら、シーズン1も「トンネル」とか「地下」とか『不思議の国のアリス』要素が強いし、ダリオ・アルジェントの『フェノミナ』に似ている気もする。
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?