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『グッド・オーメンズ』(2019)   予想していた以上にテリー・ギリアム風

プライム・オリジナルとして、ほぼ世界同時に全6話をいっきにリリース、本国イギリスでは、BBCツーで放送する予定もあるそうです(ちなみにBBC Radio 4は実在するラジオ局です)。同じ原作者の『アメリカン・ゴッズ』(日本ではアマゾン・オリジナルとして配信中だが、本国アメリカではStarzというケーブルテレビ局で放送されているシリーズ)は私の好みではなかったのですが、こちららはイギリスドラマだからか、大丈夫でした。
ナレーション(実は神の声)は聞き覚えがある声と思ったらフランシス・マクドーマンド。彼女も悪くないが、できればオリヴィア・コールマンでお願いしたかった。ベネディクト・カンバーバッチや『サクセッション』のブライアン・コックスも声の出演。『フリーバッグ』のダド役で知られるビル・パターソンなど、お馴染みのイギリス俳優陣も出演しています。『マッド・メン』のジョン・ハムに『ハンナ』のミレイユ・イーノスとアメリカ俳優も出てくるが、この二人なら違和感がありません。イーノスはヨハネの黙示録の四騎士の一人「戦争」を楽しそうに演じています。最近のイーノスは悪女役が似合う。
あまりにもテリー・ギリアム風なので、どこかにクレジットされているのかと、探してしまったのですが、どうも彼の名前はクレジットされていないようです(最後の"For Terry"は原作の共著者テリー・プラチェット/Terry Pratchettのことだと思う)。実は10年以上前に同じ原作をギリアムが映画化しようとしたものの資金面やその他の事情でで断念したのですが、原作/脚本/エクゼクティヴ・プロデューサーのニール・ゲイマンは「今回のTVシリーズはテリー・ギリアムのアイディア」と言っているそうです。さすがモンティ・パイソンの国、直接かかわっていなくてもテリー・ギリアムのDNAがしっかり受け継がれていたのでした。
アメリカの視聴者を意識してか『ダーティー・ハリー』や『メリー・ポピンズ』のオマージュがありましたが、聖水を被った悪魔が溶けてなくなり服だけ残るというのは『オズの魔法使』のオマージュでしょう。青色の三輪自動車はミスター・ビーンのオマージュでしょうか?

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E4のダーティー・ハリーのオマージュ(というかパロディ)は、翻訳者は気がついてなさそうですね。"Do you feel lucky?"(オリジナルは"Do I feel lucky?")は超有名なセリフなんですが。

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E1冒頭の"Warning Kids! Causing Armageddon can be very dangerous. Do not attempt it in your own home."も字幕では「警告 マネしないでください」と、かなりあっさりしてますね(これはナレーションと被るので仕方なくでしょうけど)。なぜか字幕版でもE1の最後に吹き替え版のスタッフとキャストのクレジットがありますが、字幕版の翻訳者もクレジットするようにした方がいいのでは?

ところでE1でガブリエルが寿司を食べているアジラフェルに対し「なぜそんなものが食べられるのか?」と言うのですが、これは人間の食べ物全般を指しているとも取れますが、まあ普通に観れば寿司のことでしょう。これは寿司や日本の文化を馬鹿にしているのではなく、生魚を食べると腹を壊すと思っていて、今時珍しい寿司の美味さも知らない時代遅れの西洋人を皮肉っているのです。ここで理解が追い付かない人は、本作品を観ても不快なだけで楽しめないでしょう。

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★★★★★

2019年5月31日に日本でレビュー済み

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