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実質2泊3日で行く!五島列島教会巡りの旅② 中通島編

五島列島教会巡りの旅の花形は、おそらくこの島ではないでしょうか。五島列島北側に浮かぶ島、中通島です。
中通島は『上五島』エリアの中心となる島で、ちょうど十字架のような形をしています。

(画像出典元:新上五島町観光なび
この中通島と、橋で繋がっている若松島・頭ヶ島の3島だけで29もの教会があります。また世界遺産・頭ヶ島天主堂もこのエリアに含まれています。この圧倒的な教会数故に『キリシタンの島』という印象が強いのですが、歴史的には遣唐使船が立ち寄った古くからの寄港地であり、遣唐使だった空海や最澄の足跡も残る場所です。神楽を伝承する神社もあり、『あらゆる宗教が共存する、交流の島』というのが正解かもしれません。
また中通島はクジラや五島うどん、ハコフグやキビナゴといった『島食』を楽しめるエリアでもあります。
今回は教会に特化する形での観光となりましたが、『島食』や遣唐使の足跡を巡るのも、また一興です。

今回筆者は中通島の十字の中心にある青方(あおかた)に宿を取りましたので、青方から出発し、ぐるっと中通島を巡るルートで観光します。
中通島は教会が散在するので、運転が大丈夫ならレンタカーかカーシェアを利用するのがオススメです。運転に自信がなければ、観光タクシーを利用するのが気楽だと思います。どうしても資金を節約したい!という場合は、行先を絞ってのバス移動になりますが、バスのダイヤ確認等は怠らないようにしましょう。

1.大曽教会

まずは青方の西隣、大曽地区にある長崎県指定有形文化財・大曽教会に向かいます。
大曽教会は青方港を望む高台にあります。水ノ浦教会同様、元々別の教会が建っていましたが、1916年に現在の建物に建て直されました。設計・施工は鉄川与助です。なお、元々あった教会は若松島の土井ノ浦に移築されています。

大曽教会の特徴はドームが乗った鐘楼。またレンガの色を変えることで、デザインのアクセントをつけているのもおしゃれです。

ステンドグラスのモチーフは桜に見えますが、「イエスの御心」を表現しているという話も耳にしました……さて真相はどちらでしょうか……。

【住所】長崎県南松浦郡新上五島町青方郷2151ー2
【開館時間】9:00~17:00
【料金】無料 ※献金箱に寄付するのをオススメ
【駐車場】教会のある丘の下に、車3台分くらいのスペースあり(自動販売機あり、教会には階段を登って向かう)
※厳密には教会前まで車で登れるが、信徒さん用なので控えましょう。

2.中ノ浦教会

大曽教会から青方を経由し、海沿いに国道384号線を南下していくと、入り江の脇に白い教会が見えてきます。こちらが中ノ浦教会。本体は1925年に建てられ、その後鐘塔部分が1966年に増築されました。

こちらの特徴は極めて海に近いところにあること。海が凪いだ時に、教会の姿が海に映り込むのです。そのことから『水鏡の教会』とも言われています。

今回は残念ながら波が立っていたので、映り込みはわずかしか見えませんでした。現地の方にお話を伺ったところ、「朝方が比較的海が凪いでいるので、映り込みやすい」とのこと。映り込みを撮りたい方は、朝一で行ってみるのも手かもしれません。
また内部は基本的に撮影禁止ですが、椿をモチーフとした花の装飾が随所に見られ、全体的に華やかな内観となっています。扉が開いていたらぜひ入ってみてください。

【住所】長崎県南松浦郡新上五島町宿ノ浦郷999
【開館時間】9:00~17:00
【料金】無料 ※献金箱に寄付するのをオススメ
【駐車場】教会前の道沿いに車5台分くらいのスペースあり(自動販売機あり、教会は道の下にあるので階段で下る)
【補足事項】水鏡は教会から道沿いに湾を回り、海際に降りる階段付近で見える。

3.福見教会

中ノ浦教会から、中通島南東にある奈良尾地区に向かい、途中で細い道を海に向かって降りていくと、福見地区があります。ここは住民のほとんどがカトリック教徒という集落。極めて静かな集落です。
ここにあるのがレンガ造りの福見教会。1882年に木造教会が作られた後、1913年に現在の建物が建てられました。どことなく楠原教会と似たファサードに、『天主堂』の文字が映えます。

今回はコロナ対策で内観を見ることはできませんでしたが、内部は折上天井を用いた少し和の要素のある作りです。ステンドグラスも鮮やか。隣接する鐘塔は火の見櫓のようなデザインですが、五島列島の教会にはこの形状の鐘塔が多く見られます。

【住所】長崎県南松浦郡新上五島町岩瀬浦郷29
【開館時間】9:00~17:00
【料金】無料 ※献金箱に寄付するのをオススメ
【駐車場】海際の信徒館前に車3台分くらいのスペースあり
【注意事項】細くカーブの続く道を使わないと集落まで行けないので、運転に自信がない場合は諦めるほうが良いかも……一応バスはあります。

4.世界遺産・頭ヶ島天主堂

福見教会を後にしたら、一路十字の右側こと、中通島の東の端にある頭ヶ島へ向かいます。福見地区からは中通島中央を通る細い県道ルートか、遠回りになりますが中ノ浦教会側の国道を回るルートかで向かうことになります。実際の走行時間はあまり変わらないので、同じ道を通っても良いなら、走りやすい国道ルートが良いでしょう。

頭ヶ島は元々天然痘患者を隔離する場所として使われていた、断崖に囲まれた島です。患者と看護者の退去後、幕末まで無人島でしたが、仏教徒の指導者のもと、長崎本土の潜伏キリシタンが移住し、開拓が行われました。そしてキリスト教解禁後に、頭ヶ島天主堂を建設したのです。頭ヶ島の開拓の歴史が、潜伏キリシタンが共同体を維持するための試みとして評価され、世界遺産に登録されました。
頭ヶ島は中通島の中心部である青方・有川の集落を東へ抜け、橋を渡った先にあります。同じ島内に上五島空港もありますが、現在は定期便が無いため、基本のアクセスは車かバスとなります。カーブが続く細い道が島の尾根を走っており、最後に教会のある集落へ一気に下っていくので、運転が苦手な方は観光ツアーに参加するか、路線バスを使いましょう。

世界遺産・頭ヶ島天主堂は、鉄川与助の設計・施工により、1910年から建築を開始。1919年にやっと完成に至りました。他の鉄川設計の教会と違い、五島石という地元の石材を使用。頭ヶ島本体と、向かいに浮かぶロクロ島から石を切り出し、船で運んだとのことです。
内部はコロナ対策で窓越しに見るだけとなりましたが、短い梁で持ち送りを作るハンマー・ビーム架橋を用いた、大きな柱のない広々とした空間と、梁部分に施された椿の装飾が美しい教会です。小さな教会ですが、小ささを感じさせない構造の妙が楽しめます。また正面にあるドームが、大曽教会のそれと非常に似ています。素材は違えど、同じ鉄川設計の建物であることがよくわかる部分です。幾何学的なステンドグラスは質素ですが、斜めのラインを入れることで、横のラインが強く強調された外壁へのアクセントになっているように思いました。

高いデザイン性とその保存状態から、頭ヶ島天主堂は世界遺産以前に、国の重要文化財に登録されています。

【住所】長崎県南松浦郡新上五島町友住郷頭ヶ島638番地
【開館時間】9:00~17:00
【料金】無料 ※献金箱に寄付するのをオススメ
【駐車場】2021年5月現在は世界遺産センター前に駐車可能
【注意事項】要事前連絡(長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産インフォメーションセンターHPで事前連絡を受け付けています)

教会から少し海際に下ったところに、キリシタン墓地が作られています。墓地の奥には、美しいブルーの海と、石を切り出した場所であるロクロ島が見えます。キリシタン墓地は立入禁止ですので、外部から眺めるだけにしましょう。
ちなみにロクロ島は元々『骸島』だったそう。海流の影響で、溺死した人の胴体がロクロ島に、頭部が頭ヶ島に流れ着いたため、『頭ヶ島』と呼ばれるようになった……とのことです。

元は恐ろしい伝承から名がついた島ですが、現在は美しい風景を見せてくれます。
ロクロ島の左手奥に見える山並みは、中通島北側に伸びる北魚目(きたうおのめ)地区です。

風景を堪能したら、有川方面へ戻ります。
頭ヶ島周辺には飲食店が無いので、有川付近で食事をするとちょうど良いでしょう。

5.旧鯛ノ浦教会

有川から青方方面に向かう途中、蛤(はまぐり)という交差点で左に曲がると、鯛ノ浦方面へ向かうことができます。消防署がある角なので、比較的わかりやすいです。
鯛ノ浦集落は明治期にあったキリシタン迫害「五島崩れ」で被害を受けた集落です。ここには現在、新・旧2つの教会が並んで建てられています。今回は旧教会の方を見ていきます。

旧鯛ノ浦教会は1903年に建てられた建物です。当初は木造の身廊部分だけでしたが、第二次世界大戦後、レンガ造りの鐘楼が追加されました。この鐘楼には原爆で被害を受けた浦上天主堂の被爆レンガが使われているそうです。
鯛ノ浦地区は潮風による塩害があり、旧鯛ノ浦教会もこの塩害によって劣化してしまったため、1979年に新教会が建てられました。旧教会は現在、キリスト教関連の本を所蔵する資料館として機能しています。

【住所】長崎県南松浦郡新上五島町鯛ノ浦郷326
【開館時間】9:00~17:00
【料金】無料 ※献金箱に寄付するのをオススメ
【駐車場】あり(旧教会裏手)

6.青砂ヶ浦天主堂

鯛ノ浦地区から再び蛤の交差点に戻り、今度は左側に曲がります。トンネルを抜けてすぐの浦浜交差点(右手にカミティという商業施設があります)を右手に曲がり、県道32号線を一路北に。魚目(うおのめ)地区を過ぎて丘を下ると、正面に海が見えてきます。T字路になっているので、右手に曲がりましょう。程なくして、右手の丘の中腹に、見事なレンガ造りの教会が見えてくるはずです。
この丘の中腹の教会が、重要文化財・青砂ヶ浦天主堂です。現在のレンガ造りの天主堂は3代目。1910年に、鉄川与助によって設計・施工されました。

青砂ヶ浦地区は江戸時代から潜伏キリシタンが移住していた場所です。明治になった1878年に、初代の聖堂が建てられたとされています。その後2代目聖堂を経て、鉄川の指導の元、信徒が手ずから運んだレンガで作られたのが現存の天主堂です。
青砂ヶ浦天主堂は、バラ窓や尖頭アーチを持つステンドグラスと、三廊に分かれた躯体部とリブ・ヴォールトの天井を持つ堂内、佐世保から運ばれたレンガと、内外ともに優れた意匠で彩られており、日本人が作ったレンガ造りの教会の代表的作品とされています。
残念ながらコロナの影響で内部には入れませんでしたが、外からもステンドグラスの細かい意匠は十分堪能できました。

青砂ヶ浦天主堂は、奈摩(なま)湾を見下ろす高台にあります。天主堂前からの風景も、ぜひ楽しんでみてください。

【住所】長崎県南松浦郡新上五島町奈摩郷1241
【開館時間】9:00~17:00
【料金】無料 ※献金箱に寄付するのをオススメ
【駐車場】あり(天主堂正面)

7.冷水教会

青砂ヶ浦天主堂から、奈摩湾をぐるっと回り込んでいき、対岸の矢堅目(やがため)地区へ向かいます。
こちらに冷水(ひやみず)という集落があるのですが、ここにある最後の目的地・冷水教会は、今まで回ってきた6教会に比べてもマイナーな教会です。外観はこのような姿です。

随分レトロな外観に見えると思います。それもそのはず、この冷水教会は、頭ヶ島天主堂や青砂ヶ浦天主堂を設計した鉄川与助が、最初に設計した教会なのです。鉄川がこの協会を設計・施工したのは1907年。鉄川がレンガ造りの天主堂を作るのは、冷水教会の翌年に竣工した旧野首教会(中通島の北に浮かぶ野崎島にあります)が最初です。
レトロでシンプルな外見に反して、可愛いステンドグラスとリブ・ヴォールト天井を持つしっかりした教会です。最初の作品と思うと趣もひとしおです。
冷水教会はマイナー気味で他の協会に比べても小さな教会ですが、数多くの教会を手掛け、『教会建築の父』とまで称されるようになった鉄川与助の原点としての意義がある教会だと思います。

冷水教会正面のバス停は、教会堂と合わせたデザインになっていて可愛らしいです。
このバス停の付近からは、北に長く伸びる中通島の絶景を見ることができます。冷水地区まで来たら、ぜひこの絶景も見てみてください。

【住所】長崎県南松浦郡新上五島町網上郷623ー2
【開館時間】9:00~17:00
【料金】無料 ※献金箱に寄付するのをオススメ
【駐車場】なし(付近に停車するしかないので、状況に応じて車を移動させる必要あり)

8.食事・宿泊と交通手段~中通島編~

【restaurant umigoto】
HOTEL AOKA KAMIGOTO内のレストラン。五島牛や五島豚、周囲の海から運ばれる魚介類など、五島の味覚を堪能できる。宿泊者以外も利用可能。
ランチ・ディナーともにセットメニューでの展開となる。
個室もあるので、特別な食事を堪能したい場合は個室予約もオススメ。

【住所】長崎県南松浦郡新上五島町青方郷1714ー1
【電話番号】 0959-42-5090
【営業時間】ランチ11:45~14:00(L.O.13:30)/ディナー17:30~21:30(L.O.20:00)
【定休日】不定期
【駐車場】ホテルの駐車場を利用
【HP】https://hotelaoka.com/restaurants/

【竹酔亭】
五島の名物・五島うどんを製造する、ますだ製麺の直営食堂。五島列島初の五島うどん専門店で、地元民もオススメする名店。
特製うどんは、卵やわかめ、五島牛など盛りだくさんのトッピングが。ガッツリ食べたい方向けの定食展開もあり。

【住所】長崎県南松浦郡新上五島町七目郷56ー1
【電話番号】0959-42-0650
【営業時間】平日10:00~14:30/土日祝10:00~15:00
【定休日】1/1~1/3
【駐車場】15台分あり
【HP】https://www.masuda-udon.co.jp/shop/

【前田旅館】
中通島中央にある青方郷の旅館。本館と、古民家をリノベーションした別館がある。別館は他の予約が無ければ一棟貸しも可能。
食事の美味しさでも有名なお宿で、女将お手製の郷土料理が楽しめる。女将の息子さんが経営する居酒屋も本館に併設されている。

※別館宿泊の場合も本館でチェックイン・アウト。以下の情報は本館のもの。予約は電話推奨とのこと。
【住所】長崎県南松浦郡新上五島町青方郷1364
【電話番号】0959-52-2112
【駐車場】本館前に3台分程度あり
【HP】http://maedaryokan.com/

【OMIZUカーシェア】
HOTEL AOKA KAMIGOTO付近にあるカーシェアリングステーション。
シェア予約はearthcarを通じて行う。軽自動車2台あり。

【住所】長崎県南松浦郡新上五島町青方郷1717-86
【予約HP】https://carshare.earth-car.com/

9.終わりに~中通島はまだまだ魅力いっぱい!~

中通島の7つの教会を巡る旅はいかがでしたか? 思った以上に多種多様なデザインが多かったのではないでしょうか。
西洋建築を意識したレンガ造りをベースとしつつ、土地に合わせた素材も使い、作り分けられていったのがわかるかと思います。

今回は教会に特化しましたが、中通島は美しい海でも有名な場所。マリンスポーツを楽しむのもオススメです。その場合は、中通島でも利便性が高い有川などを拠点とすると良いでしょう。

最後に、その有川からの風景をご紹介。天気が良ければ平戸島も見えますよ。

五島の旅は最後の目的地へ。
続いては世界遺産の2つの教会、旧五輪教会堂と江上天主堂を訪問します。

それでは、また。

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