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大変だったことはすぐに忘れるだからまた大変なことにも挑戦したくなる

2024年2月に取締役副社長に就任した竹田さん。代表の沢井さんと共にサイキンソーを創業され、現在も二児の子育てをしながら重責を担う竹田さんにこれまでのサイキンソーの歴史や今後の展望などを伺いました。
Cykinso’s トップインタビュー 04

こんにちは。サイキンソー広報の山藤(ざんとう)です。
サイキンソーを支える ” リーダーたちの思い ” を、多くの人に知ってもらいたいーー。
そんな思いから、「Cykinso’sトップインタビュー」をスタートしました。

第四弾の今回は、サイキンソーの共同創業者であり1月に取締役副社長に就任された竹田さんにお話を伺いました。

代表の沢井さんと一緒に、サイキンソーを創業された理由やこれまでのサイキンソーのサービスや事業、組織の歴史など詳細にお話いただきました。ぜひ今回も最後までご覧くださ
い。


プロフィール

高校卒業後に渡米し、フロリダ州立大学で分子生物物理学の博士号を取得。帰国後、DNA解析受託サービスを行う企業にて、企業・アカデミア向けにコンサル営業を主に担当。第二子を妊娠中に、当時同僚だった沢井さんと共にサイキンソーの起業を構想し、出産後すぐに創業。CSOとしてサイエンス領域の統括やサービスへの展開などを推進。現在は二児と3匹の猫の子育てをしながら、2024年1月に取締役副社長に就任。

起業理由

ー竹田さんは代表の沢井さんと一緒にサイキンソーを共同創業されていますよね。起業理由を改めて伺ってもよろしいでしょうか。
前職はDNA解析受託サービスを行う企業に勤めており、沢井さんと同僚だったんです。沢井さんが経営企画室にいて私が営業でした。次世代シーケンス ※1 という強力な基盤技術を活用して、何か新規事業をできないか検討をしていました。ちょうどその頃(2013年~2014年ごろ)欧米を中心に、マイクロバイーム・腸内細菌叢(腸内フローラ)への注目が高まっていた時期だったのです。沢井さんと一緒に腸内細菌の世界を調べていくと、腸は人の一生の健康を司る非常に大切な臓器であると分かりました。まだ日本国内では腸内細菌叢ビジネスを個人向けにやっている企業がなかったため、顧問である当時理化学研究所の辨野先生の後ろ盾もありビジネスチャンスも勝機もあると考え、起業に至りましたね。

※1:数千~数百万ものDNA分子を同時に配列決定ができる基盤技術

ー起業タイミングは産休中とのことでしたが、出産や子育てと起業を両立するのは大変ではありませんでしたか?
私の性格上、辛いことや大変なことはすぐ忘れてしまうのもあるのですが、意外とスムーズでした。ちょうど起業の話が具体的に進んだのも産休前のタイミングだったので、ココだけの話ですが(笑)、実際の起業準備は産休中に取り組んでいました。起業後も自分が経営側に回ることで会社員時代よりもマイペースに、時間に融通を持って働くことができています。子どもたちも、小学5年生と3年生になりましたが、子育てと両立しながら仕事ができたことで、成長を近くで見守ってこれたなと感じています。


事業を作る苦しみ

ーサイキンソーの全ての歴史を知る竹田さんですが、特に印象に残っていることを教えてください。
これも1つに決めることができないんですよね。ただ、振り返ると人に恵まれて事業をここまで成長させることができたと思います。沢井さんと事業を進化させたい、新しいサービスを生み出したいと話し合うタイミングで、いつも助けてくれる人に出会うことが出来ていましたね。

ー事業ステージごとにどんな出会いやストーリーがあったか教えてください。
サイキンソーの事業ステージに合わせて、これまで4つのサービスがローンチしてきました。1つ目が「マイキンソー(Mykinso)」、2つ目が研究受託サービス「Cykinso Research」、3つ目が口腔内フローラの検査「マイキンソー オーラル」、4つ目が子ども向け腸内フローラ検査「マイキンソー キッズ」です。

中でも出会いの印象が強かったのが、「マイキンソー」の立ち上げ初期ですね。初めてコンシューマー向けサービスを立ち上げるということで、まずは最低限のシステムを作るところからスタートしました。とはいっても沢井さんも私もシステムを作った経験がある訳ではないので、エンジニアさんやUXデザインの専門家など沢山の人に助けてもらい、なんとか個人向けマイキンソーをローンチすることができました。

その後、ECやプロダクトマネジメントの知識や経験を持っている現取締役CCOの小河原さんに入社いただき、よりマイキンソーを多くの方に届けていくための環境整備を強化していくことができました。ただ、以前、鈴木さんのnoteの中でもこの話が出ていましたが、立ち上げ当時の腸内フローラ検査は世間からは「占い」程度にみられており、実際に今のように詳細な検査結果をお返しすることが難しかったのも事実でした。当時は現段階の研究結果を踏まえて最大限言えることと、顧客が求めていることの狭間で社内でも多くのメンバーが葛藤していましたね。

そんなときに、現在のパートナーサクセスユニット(営業組織)の副ユニットリーダーをされている志田さんが入社されました。志田さんは管理栄養士として特定保健指導などで個別の栄養サポートを多く経験されていました。サイエンスの側面から語れる精一杯を出しても少し物足りない、サイキンソーならではのオリジナリティを出したいというときに、管理栄養士の個別アドバイスを検査結果に記載するというアイディアを提案してくれました。しっかりと商品化に繋がり、競合商品との差別化やサイキンソーならではのオリジナリティを出すことができたと考えています。

ー残りの3つのサービスについてもローンチの背景や経緯を教えてください。
3つのサービスともに、ローチンの背景に共通しているのは、” 腸内細菌だけ ” にこだわるのではなく、腸内細菌叢から得た知見をさまざまな領域に応用し「人々の健康や社会に貢献していきたい」という思いです。

まず1つ目の「Cykinso Research」は、企業やアカデミア向けに、研究支援を行う事業です。普段は一般向けにわかりやすく、そしてできるだけエビデンスが豊富で確実な情報をお届けするように考えていますが、腸内細菌叢というサイエンスに関わる領域で事業をしている以上、最先端の研究にもアンテナを立て続ける必要があります。世界中で積極的に研究が行われ、日々進化しているこの分野だからこそ、研究者向けの事業を続けることで効率よく業界の動向をキャッチアップできるという利点があります。その結果、オーラルやキッズ、そして更にこの先挑戦したい新しい分野も見つけることができています。

2つ目の「マイキンソー オーラル」も、腸だけに拘らず、幅広く細菌叢が関わる部位を見ていきたい、知見を広げていきたい、という想いからスタートしました。全身の健康を考えるうえで、消化管の出口(腸)だけでなく、入口(口腔)もとても大事なんです。ただ、まだ口腔内と腸内の細菌叢の関係性についてはわからないことも多いので、このサービスを通じて研究を進め、知見を増やしていきたいです。

3つ目の「マイキンソー キッズ」は、創業前から絶対に必要と感じていたサービスでした。ヒトの腸内細菌叢は、3〜5歳くらいまでにある程度成熟するといわれています。そこから腸活等で腸内環境を改善することはできるとはいえ、大人になってからは大きく変わらないとされているんですよね。だからこそ、腸内環境が成長中で変化しやすい時期に、状態を確認し必要に応じてしっかり介入(軌道修正)しておくのが、将来良い腸内環境を維持するのに最も効率的な(コスパがいい)はずなんです。残念ながら、いまやっと、一般の子どもたちの月齢別腸内細菌叢の様子が可視化できるようになった段階ですので、まだいつどのような介入をすべきかを的確に示すエビデンスはほとんどありません。今後、サービスや研究を通じて、子どもたちとその家族の健康を守っていくための知見を溜め、世の中に発信していきたいと思っています。

今後の組織や事業の課題

ー創業から組織を見てきた竹田さん、サイキンソーの組織や事業で今後に期待していることはありますか。
沢山あります(笑)。
創業時からつい数年前までは、役員3人の下にそれぞれ数人のメンバーがいるだけの小さな組織でした。人数が少ないからこそ、密にコミュニケーションもとれるし、意思疎通も濃くできていたと思います。シリーズDを迎え、ここ数年でサイキンソーの社員数は50名を超える程、一気に大きくなりました。毎月のように新入社員が入ってきていますよね(笑)。
人数が増えるにつれ、だんだんと1人1人としっかりコミュニケーションを取る機会が減り、経営陣や私自身の考えや想いを社員に伝えていく難しさも感じています。

特に、サイキンソーの事業にはサイエンスの知見が必要不可欠なため、研究で分かったことをどのようにサービスや商品に落としマネタイズしていくか、また逆にどのようなエビデンスがビジネス側で求められているか、といった研究と事業を繋ぐ視点が求められています。今までは私がその橋渡し役を担ってきましたが、同じ視点をもっと沢山の社員に持ってもらい、事業の発展に繋げるアクションを取ってほしいと思っています。

今、ディビジョンリーダーやユニットリーダーを担っている社員を中心に、ビジネスとサイエンスのバランス感覚を大事にしながら、失敗を恐れず様々なことに勢いを持ってチャレンジしてくれることを期待しています。

今後の展望

ーサイキンソーの展望を教えてください。
サイキンソーとしては、「腸」だけに限らず様々な領域で、これまでの事業で得た知見を活かし、社会に還元できる領域を増やしていきたいと考えています。

日本はこれから益々、高齢化社会が進み、医療費もどんどん大きくなっていくと言われていますよね。これまで、サイキンソーは腸を中心に人々の健康に寄与できるようなビジネスを続けてきましたが、取り組みの根源にあるのは「病気になる前にできるだけ沢山の人が自分の健康を気にかけ、健康寿命を伸ばせる状態を作りたい」ということです。社内では「0次予防」とも呼んでいますが、究極は「健康」を意識することなく健康になっていく仕組みづくりが必要です。そのために個人だけでなく、社会全体に対してもサイキンソーが主体者となり、できるだけ多くのステークホルダーを巻き込んだ動きを加速させていきたいです。

また、SDGsという言葉が注目されるようになり久しいですが、ヒトやヒトが作る社会のみに着目をするだけでは、真に喜ばれる価値を社会に提供できる存在にはなれないだろうと考えています。だからこそ、ヒトの健康やヒトが作る社会だけにフォーカスするのではなく、環境やヒト以外の生物などより大きな生態系を巻き込んで全員良しな世界を目指せるよう、私たちが持つ細菌叢の知見をあらゆる分野に広げていきたいと考えています。

一言でいうと、「細菌叢からの新たな気付きを通じて、ヒトも社会も地球環境も健康にするエコシステム」を実現していきたいですね。

ー最後に竹田さんご自身の展望も教えてください。
副社長という有難いポジションをいただいたので、これまでよりも更に進化するために、会社の中でどんな立ち位置や役割を担っていけばいいのか、日々模索し挑戦していきたいと考えています。

事業の面では2つやり遂げたいと考えていることがあります。1つ目は「乳幼児健診で腸内フローラの測定が当たり前になる世界を作りたい」ということです。先ほどもお伝えしましたが、腸内細菌叢は3歳くらいまでに完成されるため、乳幼児のうちに親が我が子の(というか、社会がこどもの)腸内環境を気にかける文化を作ることが何よりも重要だと考えています。日本には大変すばらしい母子手帳と乳幼児健診という仕組みがすでにあるので、そこに母子の腸内フローラ検査が導入され、母子手帳に記録が残ることで、必要なところに必要な介入が届けられると考えています。その第一歩として、大人の腸活リテラシーをもっとあげなくてはいけないと思っているので、手前で企業健診に腸内フローラ検査を導入していただくなど検査の重要性を啓蒙していきたいです。

2つ目は「食品標準成分表に、腸内フローラを整えるエサとなる成分を載せること」です。ヒトの健康は突き詰めると「食」から来ていると思っています。食が大切だと思いながらも、食生活を改善するのって結構難しいですよね。ヒトの行動を変えるのが難しいからこそ、考える価値があると思っています。そこで、食品標準成分表の中に腸内環境を整える観点を加えたいと考えました。そうすることで、栄養士さんなどを中心に腸活をさらに意識してもらうことができるのではと思っています。千里の道も一歩からですが、ゴールを達成しきるためにも一歩一歩進んでいきたいですね。

もちろん、どちらの夢も私一人でできることではないので、社員はもちろん、お世話になっているアカデミアの先生に協力いただきながら、大きな視点でみると政治・法律まで沢山のステークホルダーを調整していかなくてはいけないということは自覚しています。

大変だからこそやってみたい、と感じてしまうんですよね。

インタビューアー後記

今回は竹田さんにお話を伺いました。
お二人のお子様を育てながら、シリーズDのベンチャー企業で副社長を務めていらっしゃる物凄くパワフルな竹田さん。

インタビュー中に、これまで大変だったことや挫折したことを聞き出そうとする筆者に、にこにこ微笑みながら「大変なこと、すぐ忘れるからないねんな〜」とお話してくれた姿が印象的でした。

サイキンソーや竹田さんご自身の今後の展望や社員に期待していることまで、貴重なお話を聞かせいただきありがとうございました。

これからもサイキンソーのトップたちにどんどんインタビューしていきますので、次回の記事もお楽しみに。最後までご覧いただき、ありがとうございました。