吉野川可動堰(かどうせき)建設に対する住民運動から民主的なアプローチについて考える
こんにちは、Climate Youth Japanです。
今回はグループワークにて、「吉野川可動堰(かどうせき)建設に対する住民運動から民主的なアプローチで民意を反映させる方法を勉強しよう」ということで、議論を行いました。
端的に述べると、吉野川に設置されている第十堰を老朽化などの理由から撤去し、新しい可動堰を建設すべきだという建設省(現在の国土交通省)と、新しい可動堰による生態系の破壊を懸念した住民の間で起きた実際のお話です。
これに対し安全性などを考慮すると、新しい可動堰を建設することは妥当だと思われます。しかし、住民たちは度重なる勉強会をもとに、建設省の用いたデータや検証方法に誤りがあることを証明しました。
最終的に、住民たちは住民投票のための署名活動などを経て、2000年の住民投票において投票率55%、そのうち90%を超える可動堰建設への反対票を獲得しました。そして現在に至るまで、可動堰推進を目指す徳島県知事、徳島市長は誕生していません。
私たちの議論の中では、主に①なぜ住民投票で可動堰建設への反対票を多く得ることができたのか、②なぜこうした民主的なアプローチで地元住民たちの問題を解決することができたのかの2点について、様々な意見が出されました。
①なぜ住民投票で可動堰建設への反対票を多く得ることができたのか
文献内では、「自然に対する謙虚さや敬意、そして自然との関わりのなかで培われてきた地域の文化や遺産への愛着が広く共有」されていたことと、「住民たちが専門的な勉強に取り組む知的な態度をもち、粘り強く運動を続ける我慢強さを備えて、かつ高い投票率を要求されるなどの政治的困難にぶつかったときに、問題解決のための果敢さや豊かな発想力を発揮した」ことが有効であったと述べられています。
しかしながら同時に、「住民のすべてがこうした思想を自覚的に共有していたわけではない」とされているように、文献内にある情報だけでは効果的ではなかった可能性もあります。
そこで私たちは、彼らが自然や文化に対する保護意識以外にどのような情報を提供したのか、予想を交えて話し合いました。
その一つは、科学に基づいたデータを効果的に用いていたのではないか、ということです。
かの有名なグレタ・トゥーンベリさんも科学の声に耳を傾ける必要性を訴えていましたし、私たちもオンラインイベントの開催などを通してそれを実感しています。
②なぜこうした民主的なアプローチで地元住民たちの問題を解決することができたのか
このことについては、地域社会のつながりがあったことで、地元の情報にアンテナを張ったり、問題意識を共有しやすかったのではないかという意見が大半を占めました。
逆に、現代では都市への人口移動が進んでいるので、地域のつながりは希薄になっていると考えられます。こうした社会の変化を踏まえ、今後の市民活動の在り方を考えていく必要がありそうです。
今後もこうした民主的アプローチによる地域課題の解決の事例を見つけ、議論していければと思います!
それではまた!
参考文献
吉永明弘、寺本剛 2020『環境倫理学(3STEPシリーズ)』昭和堂
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