上電の運転体験と前橋サイクリング。アートな白井屋ホテルで非日常体験。
自転車ジャーナリストのハシケンです。まもなく関東にも桜前線がやってきますね。
さて、「関東圏でオススメのサイクリングエリアってどこですか?」と聞かれたら、個人的に推したいのは赤城山エリアです。
東京からクルマで2時間とちょっと。遠すぎない距離感にあるので、週末土日でサイクリングに出掛けても、しっかり午前中からライドできて、翌日も夕方前までしっかり楽しめます。電車でも、北千住から麓の赤城駅まで、東武特急りょうもう号が走っているので乗り換えなしで乗車1時間40分でアクセス可能!
関東のサイクリングエリアには、つくば霞ヶ浦りんりんロードはじめとする茨城県、峠の縦走や河川敷ライドを楽しめる埼玉県、丘陵地帯とシーサイドのミックスライドを楽しめる房総半島など、魅力的なフィールドが多くあります。これまでどのエリアも度々訪れては、ライドや取材を楽しんできました。
そんな中でも、今回は群馬県の赤城山を中心にしたエリアのご紹介です。標高1827mの赤城山に抱かれたロケーションは、関東随一のダイナミックなライドへと僕らを誘ってくれます。
2011年に初開催された赤城山ヒルクライムは、今や日本を代表する一大大会に成長しています。毎年4000人近くが参加。前橋市街地から駆け出して、標高1400mの白樺牧場まで全長20.8kmを一気に上るコースは抜群の走りごたえ。実は私も何度か参加していて、記念すべき第一回大会では、エキスパートクラス4位でした。今は大会のレベルも上がって・・・。
ヒルクライマーにとって知られた存在の赤城山ですが、近年はヒルクライムだけが魅力ではなくなっています。赤城山の裾野に広がる雄大で美しい自然の中での本格的なサイクリング、県庁のある前橋市や桐生市など歴史ある街の自転車散走。さらには、山麓を東西に走るローカル線の上毛電鉄サイクルトレインの活用。街には、乗り捨て可能なシェアサイクル、本格e-BIEKの導入、サイクリストウェルカムなサイクリストに優しい宿も増えています。
また、ちょっと広域サイクリングに目を移せば、赤城山麓の一周ライドというビッグライドも楽しめます。ダイナミックな起伏のあるコースは獲得標高2000mを超え、距離100kmほどのルートを描けます(2021秋に開催された赤城山1周ライドは112kmで獲得標高2400mほどでした)。
こんなにバリエーションが豊かでライド環境も急速に整い出している赤城山エリアは、近い将来日本が世界に誇るナショナルサイクルルートの認定を受ける日も遠くないかもしれません。
さて、ここからは2022年1月に実施されたモニターツアーの様子をご紹介! 東武トップツアーズさんから事前にいただいた旅のしおりには次のようにありました。
「上毛電気鉄道電車運転・車掌体験と大胡電車車庫見学
新型自転車走行体験と初詣 白井屋ホテル宿泊1泊2日の旅」
「自転車走行体験」とあるものの、電車運転や車掌体験って、なんだか鉄ちゃん向けのツアー(!?)。実際、今回のモニターツアーは、より一般観光客を想定した内容になっていて、普段体験できないような非日常体験をてんこ盛りにして組まれていました。普段スポーツバイクに乗らない人にとっては、街中をシェアサイクルで散走することさえ非日常で特別です。
そんな今回のツアーは、僕らサイクリストにとっても赤城山麓の新たな魅力を発見する旅になりました。サイクリング途中に立ち寄りたくなるカフェやランチスポット、観光名所にラグジュアリーホテル滞在。そしてなんと言ってもリアルな電車運転と車掌体験(笑)
当日、北千住駅からりょうもう号に乗車して終点の赤城駅へ。ここで上電に乗り換えて、大胡駅(おおごえき)へと向かいます。本格的に山の方面にサイクリングに出かける人にとって大胡駅は起点としておすすめです。赤城神社経由で赤城小沼・大沼へのガチなヒルクライムルートが続いています。
赤城駅のホームに入線してきた車両は、日本最古と呼ばれる「デハ101」。なんと1928年に製造され、戦前戦後を走り抜けて1970年代まで運行されていたとのこと。現在でも上電のツアーで貸切車両として運行しており、動態保存された貴重な車両として注目を集めています。群馬県近代化遺産に指定されているそうだ。
車内に踏み入れれば、板張りの床と壁の内装が独特の歴史を感じさせる。激動の昭和を生き抜いた人々と共に乗車しているかのような錯覚を覚えるほど雰囲気がある。中吊り広告もまた趣が! カメラのシャッターを切る回数が自然に増えていく。
ちょっと目線を車窓へそらすと・・・、昔から変わらず上電を見守ってきたであろう赤城山が悠然と佇んでいる。最高の電車旅だ。ガタンゴトン・・・。
大胡駅に到着すると、いよいよ今回のツアーの目玉「電車運転と車掌体験」だ。我ら一行が大胡電車庫に近づくと、威勢のいい汽笛を鳴らしてお出迎え。
みんなのテンションが一気に上がったところで、車庫内へ。まずは、普段上電の業務に携わるスタッフの皆さん方がご挨拶。なんと、古澤和秋社長自らお出迎えしてくれた。
一通り上電とデハ101、そして運転体験の説明を受けたのち、車庫内に設置されたシミュレーターで擬似運転をして、運転と停止の感覚を掴む練習が行われた。なんだか難しそうだ・・・。
いよいよ体験車両に乗り込み、あの特別な空間へ。鉄ちゃんではないけれど、電車の運転席って幼少期からの憧れといいますか、きっと多くの人にとって立ち入れないけど身近な特等席って感じの場所。しかも今回は、実際に他人も乗せた本物の車両を動かせる!という驚きの体験。
実際の制服もお借りしてビシッとキメて、気分はすっかり運転士&車掌さん。ところが、いざハンドルを握ると、本当に大丈夫なのか・・・と不安が!でもそこは安心。隣でスタッフさんが「ノッチ入れて」「払っていいよ!」と厳しく(?)も優しくアドバイスしてくれる。そして、車両が動き出す。おおっ、本当にこの鉄の塊(失礼!)を動かしている!!「電車の運転士になりたい」と幼少期に一度は夢見たことが、30代半ばを過ぎて体験できるとは、想像以上の感動体験になった。
上電が定期的に開催している「運転体験・車掌体験ツアー」でも用意される「車庫弁当」をいただいた。
大胡電車庫を後にして、大胡駅から終点の中央前橋へ。こちらは前橋市内への玄関口の駅として多くの市民に利用されている。駅には前橋市内に82地点も登録されている「あかぎサイクルオアシス」(サイクルラックや工具などが常設され、サイクリストを歓迎してくれる施設)
さて、ここからは自転車で市内観光へ。2021年春からサービス開始、市内32ヶ所に設置されているまえばしシェアサイクル「cogbe(コグべ)」を利用。15分25円〜というお手軽価格で、当然ながらポート間の乗り捨てもできる。シティサイクルタイプの電動アシスト付きなので、街中移動に最適だ。
前橋市内というとビジネスシティのイメージが強く、街中のサイクリング環境はあまり知られていないだろう。ところが、いざコグべで走り出すとイメージ一変。今、前橋市では前橋アーバンデザインという策定を進めている。中央前橋駅から続く広瀬川沿いには水辺空間が広がり、ゆったりとしたサイクリングにちょうど良い感じだ。
そして、歴史も感じられる街でもある。あの有名な上毛かるたにある「県都前橋 け生糸の市(まち)」とは、前橋市が日本で最初の製糸場があり、生糸の町として繁栄していたためだ。明治3年、富岡製糸場の2年前から前橋では日本初の製糸の機械化に取り組んでいたそうだ。世界的芸術家の岡本太郎氏作「太陽の鐘」も! ゆったり流れる景色と合わせて、こういう歴史を見聞できることこそ、サイクリングの魅力なんだと思う。
こちらは群馬県指定重要文化財に指定されている「臨江閣」。木造二階建て、入母屋造りと瓦葺き屋根が特徴で、前橋を訪れた皇族方の滞在など迎賓館として利用されてきたそうな。
サイクリストにとって、自転車の安全をお祈りできる神社は有り難いところ。「前橋東照宮」では、自転車を含めた車のお祓い専用の祭壇があり、お祓いをしてくれる。前橋市内サイクリングで立ち寄りたいスポットのひとつだ。
さて、コグべでの市内サイクリングの終わりはここ、群馬県庁。最上階の展望スペースは、人気のデートスポットにもなっているそう。
日本一ロケーションのよいトイレとして有名とのこと。確かに!
カフェも入っているので、赤城山を望むベストロケーションから夕景を楽しみつつコーヒータイムを楽しんだ。
こちらの動画は、前橋シェアサイクル「Cogbe」と、電動クロスバイクタイプ(TB1e)のシェアサイクル「あかぎCogbe」に乗ってサイクリングした時の様子を簡単にまとめた動画です。
ここからは夜の楽しい時間の始まり始まり! 先進的なアートホテルとして前橋の中央通り沿いに開業した「白井屋ホテル」に宿泊。創業300年の白井屋が大きく生まれ変わり、異彩を放つホテル外観を眺めるだけでワクワク感が湧き上がってくる。
簡単に、白井屋ホテルの歴史と誕生について触れておこう。
創業300年、江戸時代に生まれ、明治・大正・昭和・平成の時代を前橋の歴史と共に生き多くの人に愛されてきた「白井屋旅館」。2008年に廃業を余儀なくされ取り壊し寸前までいくも、2014年に前橋市の活性化活動を主導する田中仁財団の活動の一環として再生プロジェクトがスタート。世界的デザイナー、アーティスト、建築家、そして地元の情熱と才能あふれる人々が次々に関わり、6年の歳月をかけて「SHIROIYA HOTEL」として生まれ変わった。今街全体が「めぶく。」をテーマに活性化されている前橋において、多くの人々が交わる新たな場所として注目だ。
エントランスから入ると、コンクリート壁を生かした吹き抜け空間に圧倒される。そこに張り巡らされた配管をイメージしたライトアップアートが温かみとエンターテイメントをマリアージュする。
4名の世界的なクリエーターがデザインを手がけたスペシャルルームは、インスピレーションを刺激し非日常のステイを楽しめること間違いなしだ。
メインダイニングでいただくディナーも贅沢なひとときだ。地元上州の食文化に対するオマージュはレベルが高く、選び抜かれた地元の食材をふんだんに使ったフレンチはどれも絶品。
まさに、独創性に満ち溢れた一皿一皿へのこだわりを堪能できる時間と言える。ペアリングとのマリアージュには言葉は要らないだろう・・・。
念のため一言だけ。最高だ。
日本最古の車両デハ101への乗車。電車運転・車掌体験。さらに、前橋市内の歴史を再発見する自転車散走。そして、”めぶく街”こと前橋のアートホテルで過ごす贅沢時間。
赤城山麓で過ごす刺激いっぱいの非日常体験。前橋・赤城山エリアはスポーツサイクリングのフィールドとしてだけでなく、より一般のトラベラーも刺激いっぱいに楽しめる要素が多い場所であると感じたモニターツアー初日であった。
モニターツアー2日目は、電動アシストスポーツバイクのE-バイク(e-bike)に乗って、ちょっと足を伸ばしたサイクリングへ。サイクリストにオススメの立ち寄りカフェやスポットも多くご紹介します!
上毛電気鉄道ツアー案内
あかぎサイクルオアシス
あかぎコグべ(Akagi cogbe)
白井屋ホテル
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