見出し画像

歩行中の筋電図(EMG)をどう正規化する?研究で見えてきた最適な方法とは?

歩行分析の世界では、筋電図(EMG)のデータをどのように処理するかが大きな課題の一つです。特に、データのばらつきを減らし、他の人や異なるタイミングのデータと比較しやすくする「正規化(ノーマライゼーション)」の方法が重要になります。

今回紹介する研究は、歩行中のEMGを正規化する4つの方法を比較し、「どの方法が最も適しているのか?」を再評価したもの。結論から言うと、「どんな目的で正規化するのか」によって最適な方法は異なる、ということが明らかになりました!

4つの正規化方法

今回の研究で比較されたのは、以下の4つの方法です。
1. 平均動的法(Mean Dynamic Method)
→ 歩行中のEMGデータを全区間の平均値で割る方法。
2. ピーク動的法(Peak Dynamic Method)
→ 歩行中のEMGデータをその人の最大値で割る方法。
3. 等尺性MVC法(Isometric MVC Method)
→ 筋肉が動かない状態(等尺性収縮)での最大筋電図(MVC)と比較する方法。
4. 等速性MVC法(Isokinetic MVC Method)
→ 歩行時と同じ筋活動・長さ・速度条件での等速性MVCのデータと比較する方法。

結果:どの方法がベスト?

それぞれの方法を使って、歩行EMGの振幅・個人内変動(同じ人の歩行ごとの差)・個人間変動(異なる人の差)を比較しました。

① 一番安定していたのは「平均動的法」
• 平均動的法は、他の方法と比べて 個人間のばらつきを最も小さくする ことができました。
• つまり、歩行の一般的なテンプレートを作るのには最適!
• ただし、筋肉の活動の強さを示すわけではないので、個別の筋活動の比較には向かないかも。

② 筋活動の強さを測るなら「等尺性MVC法」で十分
• 筋肉がどのくらいの力を使っているのかを知るなら、等尺性MVC法が適しています。
• 等速性MVC法との違いはほとんどなく、「わざわざ等速性MVC法を使うメリットはない」と結論づけられました。

③ 等速性MVC法は、個人内変動が大きすぎる
• つまり、「同じ人が歩くたびにデータがバラバラになりやすい」
• 他の方法よりも再現性が低く、研究や臨床にはあまり向いていないと判明。

結論:目的に応じて使い分けよう!

この研究で得られた結論は、「何のために正規化するのか?」を考えることが大事、ということ。

✅ 歩行のテンプレートを作りたい → 「平均動的法」がベスト!
✅ 筋肉の活動量を知りたい → 「等尺性MVC法」でOK!
❌ 等速性MVC法は非推奨 → 他の方法の方が信頼性が高い!

歩行のEMGを正規化する方法はさまざまですが、「やっていることに意味があるのか?」を考えながら使い分けることが大切ですね!

引用元
題名: Normalisation of gait EMGs: a re-examination
著者: A.M. Burden, M. Trew, V. Baltzopoulos
掲載誌: Journal of Electromyography and Kinesiology (2003)
DOI: 10.1016/S1050-6411(03)00082-8

いいなと思ったら応援しよう!