ドイツは自転車の国になれるのか
2020年4月28日より効力を持つドイツの新道路交通法。昨年より改正準備が進められ、コロナウイルス感染防止措置として3月23日に施行された接触禁止令は現在5月上旬まで延長、これが解除される前での導入となる。4月20日より商店は営業を再開し、人々の移動が段階的に増えている最中、アフターコロナの人々の動きに影響を与えるこの新しい交通ルールを、まずは連邦交通大臣アンドレアス・ショイヤーの言葉から見ていきたい。
"遂に!新道路交通法は4月28日より効力を持つ。これにより、私たちのモビリティを安全に、気候に優しく、フェアにできることを喜ばしく思う。新しい規則は特に交通弱者を強くするものである。自転車で移動する人は保護され、カーシェアリングや電気自動車はメリットを持つことになる。そして今後、緊急車両進行路の妨害はより厳しく処罰される。"(原文はこちら)
では早速、自転車交通を強化する新ルールから!
自転車の横並び走行
自転車の横並び走行は従来の規則でも可とされていたが、今回の改正を通してより明確化される。ただし他の交通参加者の邪魔となる場合は、前後して走行しなければならない。
自動車は追い越し時の最低距離保持が義務に
自動車が歩行者、自転車、Eスクーターを追い越す際は、市街地は1,5m、郊外・一般道は2mの距離を保たなければならない。これまで道路交通法には"十分な間隔を空けるよう"と定められているのみだった。
積載量3,5t以上の車両の市街地での右折は徐行
交通安全上の理由により、市街地にて右折する積載量3,5t以上の車両には、徐行(4から7km/h、最高速度11km/h)が定められる。違反には70ユーロの罰金、また1点の加点。
自転車での人の輸送
自転車が人の輸送に適して製造されている場合、車両を運転する人が16歳以上であれば、人を同乗させても構わない。
自転車専用の緑の矢印
この道路交通法の改正により、既存の緑の矢印ルールは、自転車レーン、または建設された自転車道から右折したい自転車にも拡張される。さらに、自転車にのみ有効な緑の矢印標識が導入される。
保護レーン上の一時停止は一般的に禁止に
自転車交通のための保護レーンは、自転車交通と自動車交通を白線のマーキングにより分離するものである(道路交通法、記号340)。自動車のそこへの駐車は不可だが、これまでは3分までの停車は許可されていた。しかし、これは停車する自動車が相次いで道を塞ぎ、自転車が一貫して保護レーン上を通行できない状況を招くものであった。この発生を防ぐため、一般的な停止禁止が導入される。
自転車ゾーンの設置
最高速度30km/h制限区域に似た自転車ゾーンが将来的に設けられる。規制は現行の自転車優先道に基づき、最高速度30km/hでの運転が適応される。自転車交通を危険に晒したり、妨害する行為は禁止。小型電気自動車の通行は可。このルールにより道路交通局は、緩和された条件で自転車ゾーンを設置できることになる。
交差点と合流点エリア手前における駐車禁止区域の拡大
道路と自転車道間の視界を改善し、特に自転車の安全性を高めるため、道路沿いに建設された自転車道がある場合、交差点と合流点手前から8m以内の区域は駐車禁止に。
カーゴバイクの簡素化
特に、カーゴバイクの駐輪場所と積み降ろし場所の提供を目的として、カーゴバイクのシンボルマークを導入する。このマークは所管の道路交通局が使用できる。
自転車高速道路の標識導入
例えば砂地など、道路の性質に関係なく自転車高速道路の識別表示を行うため、標識"自転車高速道路"は道路交通法に加えられる。
二輪車の追い越し禁止
例えば狭い道路などにおいて、道路交通局は二輪車、三輪車など(自転車を含む)車両の自動車による追い越し禁止を指示できる。これに関し、新しい交通標識が導入される。
交通実験規定の拡張
連邦政府による、限定された時間と場所での交通規制や交通安全対策の試験的実施は既に可能であったが、交通実験の実施はこの道路交通法改正により簡素化される。
交通実験のための道路交通法のさらなる緩和には、2020年より引き続き協議が進められる法律レベルでの変更が必要となる。
逆方向に通行する自転車への一方通行侵入可の増設
今回の道路交通法改正の一環として、所管の道路交通局により、一方通行の道路を自転車が逆方向に通行可とできるか、その調査の強化が呼びかけられる。目的は、自転車交通に解放される一方通行の数を増やすことである。
続いて、カーシェアリングと電気自動車: クリーンなモビリティへの対策
カーシェアリング
カーシェアリングというモビリティを促進するため、カーシェアリング用の車両にメリットを設ける。
道路交通法の変更は、カーシェアリング法に基づくものである。この条件により、所管の道路交通局はカーシェアリング車両用の駐車場を設けることができる。
カーシェアリング車両は優先的に駐車可能となる。これを表す追加の標識と新しいシンボルマーク、カーシェアリング車両を識別するフロントガラス用のステッカーが導入される。
電気自動車用の駐車スペース
道路交通法改正により、所管の道路交通局は車線上のシンボルマークを通して、電気自動車用駐車スペースを強調できる。
シンボルマーク"複数人に所有されている乗用車"の導入
まず、バスの可能性は除外とする。この新しいシンボルマークを道路交通局は、例えば交通実験の実施などに使用することができる。
速度取締機アプリ使用の禁止
改正後の道路交通法では、ドライバーの走行中、スマートフォンやナビゲーションシステム上での速度取締機の位置表示アプリの使用禁止が明確化される。これは以前から禁止されていたが、今一度、明示される。
大型輸送、重積載輸送に対する新規制
大型輸送、または重積載輸送への許可、免除申請については、所管の行政局において変更される。将来的にはドイツ全土において料金が導入。この規制は2021年1月より効力を持つ。
新罰則規定
この道路交通法の改正を以ち、新設、もしくは増額された罰金が、違反行為には伴うことになる。特に、歩道と自転車道上の駐車、ならびに今後は許可されない保護レーン上の停車、そして二重駐停車が該当する。これらの交通違反に対する罰金は、これまでの15ユーロから最大100ユーロに引き上げられる。
重大な違反行為にはこれに加え、次の場合は運転適性帳に加点される。禁止に違反する二重駐停車、自転車保護レーン上や歩道、自転車道上への駐車により、他の交通参加者を妨害、または危険に晒す場合、器物破損、あるいは車両が歩道、または自転車道上に1時間以上駐車されている場合である。
違反レベルの分類は所管の行政機関によって行われる。
駐車と停車
そのほか、重度障害者用の駐車スペースへの不正駐車には、罰金は33ユーロから55ユーロに引き上げられる。
また新しく、電気自動車用の駐車スペースへ不当な駐車は不正駐車となり、55ユーロの警告料が科せられる。
狭い道、または見通しの悪い道路上の箇所、あるいは急カーブのエリアにおける違法駐車には、罰金は15ユーロから35ユーロに引き上げ。
一般的な駐停車違反には、これまでの最大15ユーロに代わり、最大25ユーロが罰則に規定される。
緊急車両通行路
今後、緊急車両通行路の不法利用は、緊急車両通行路の形成に協力せず、道を譲らない場合と同様に処罰される。200ユーロから320ユーロまでの罰金、ならびに1ヶ月の免停が適用、さらに2点の加点となる。
新たに、特定の危険や妨害がない場合でも、緊急車両通行路を形成しないドライバーには、1ヶ月の免停が今後は併科される。
同時に罰金は増額。特に右左折を誤った場合、また乗り降り時に注意義務を怠った場合の罰金は、これまでの2倍となる。
制限速度違反
これまでも制限速度違反には1ヶ月の免停が科されているが、今後、市街地を21km/hの超過速度で走行した場合にも同様に適応となる。
その他のルール違反
歩道、左側に敷かれた自転車道、路側帯の自動車による規定違反の利用は、これまでの最高25ユーロの罰金が100ユーロに引き上げ。
また、所謂"アウト・ポージング"と呼ばれる行為にも、効果的な処罰が行われる。改正された道路交通法では、不要な騒音、回避可能な排気ガス汚染、ならびに無益な往復運転を発生させた場合、罰金は最大20ユーロから100ユーロに変更となる。
以上は、連邦交通省の新道路交通法を紹介する記事を訳したものである。画像も同記事から使用させていただいた。ドイツの自動車交通に対する罰則規定や点数制度についてはこちらが詳しい。
コロナウイルス感染防止措置による人々の移動の変化は、道路上の自動車交通量の変化へとつながり、ドイツではフェアな道路を求める市民の声に後押しされる形で、ベルリンを皮切りに期間限定の自転車レーンが設置が進められている。フランクフルトやフライブルクなどの街では、数時間限定の実験的な自転車レーンも、ADFC/全ドイツ自転車クラブや、自転車インフラ改善の市民請願を行うイニシアチブによって導入された。減少を知らない自転車交通が、この道路交通法改正という追い風を受け、いよいよメインストリームにあがるのか、アフターコロナの路上事情も引き続きフォローしていきたい。