猫の腎臓病治療:AIM製剤への期待
猫の死因の上位は腎不全で、全体の2~3割を占めます。
高齢の猫の80%以上が腎臓に障害があるとの報告が示す通り、猫にとって避けられない病気の一つとなっています。
★腎臓疾患の難点
腎臓疾患の厄介な点は、腎臓機能の3分の2程度が失われるまで症状が表面化しない点です。
また、腎臓は再生しないため、病気を完治させることは不可能であり、主に食事療法を通じて進行を遅らせることしかできません。
もう一つの厄介な点は、猫が腎臓疾患になりやすい理由が分からないことです。よって多少の効果が認められた治療薬はあるものの、特効薬は存在しません。
★猫の腎臓疾患の原因
長らく原因不明であった猫の腎臓疾患ですが、最近になって原因が解明され始め、治療薬の治験も始まっています。
猫好きにとってはこの上ない朗報ですが、まだこの情報が広く生き渡っているとは言えない状況なので、少しでも多くの愛猫家に情報をお伝えしたいと思います。
■原因を解明した宮崎徹教授
宮崎徹氏は東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センター分子病態医科学部門で教授を務めている大変凄い御仁です。
この宮崎教授の研究により、これまで不明とされていた猫の腎臓疾患の原因が突き止められました。
■腎臓疾患が起きる原因
体内には細胞の死骸等のゴミが存在します。
通常は免疫細胞によって除去されますが、これが上手く機能せずゴミが腎臓に溜まると腎臓疾患を引き起こしてしまいます。
ここで重要になるのが「AIM」(Apoptosis Inhibitor of Macrophage)と呼ばれるたんぱく質です。
AIMの役目は除去すべきゴミに付着し、免疫細胞にゴミの位置を知らせることです。
猫にもAIMは存在しますが、人間と違ってほとんど働きません。
そのため腎臓にゴミがどんどん溜まって行ってしまい、腎臓疾患を引き起こしてしまうのです。
■猫のAIMはなぜ働かないのか?
普段、AIMはIgMという免疫関係のタンパク質に結合した状態で存在しています。
猫はこの結びつきが非常に強く、腎臓にゴミが発生してもAIMがIgMから離れることができず、免疫細胞に警報を発することができません。
つまり猫は索敵細胞ともいうべきAIMを持ちながら、持っていないのも同然の状態にあるわけです。
★AIM製剤
AIMを人為的に投与することによって、免疫細胞が腎臓にたまったゴミを除去できるようになれば、すでに負ってしまった損傷は回復できなくとも、残った部分の腎臓機能を正常に戻すことはできます。
また、予防薬として定期的に投与すれば、腎臓疾患そのものを防ぐことが可能です。
完全室内飼いの猫の寿命は約16歳ですが、AIM製剤で腎臓疾患を防げれば大幅に伸びる可能性が高いでしょう。
自分が30歳で猫を飼い始めたとして、還暦手前くらいまで猫が生きていることもあり得るかもしれません。
余談ですが、ギネス公式サイトで調べた猫の最高年齢は38歳3日です(笑)
AIM製剤は猫だけでなく、人間の腎臓疾患やその他の疾患への応用も期待されています。
宮崎教授の研究は愛猫家はもとより、多くの人間にとって目が離せないものになっています。
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