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熊本のバス「共同経営」〜私たちが「お客様」でいいのであれば答えは一つ

熊本市と熊本を拠点とするバス5社(九州産交バス・産交バス・熊本都市バス・熊本電気鉄道・熊本バス)が、バス事業の改善のため事業者間調整を行い、運行ダイヤの調整や運賃の均一化などを図ることで合意しました。

NHKのみ共同経営を「検討」で合意と、トーンが少し違います。

主な内容を各紙記事からまとめると、
(1)それぞれの事業者は独立したまま
(2)事業者間で調整のしくみを作り
(3)バス路線の重複区間の最適化
(4)バスレーンの導入
(5)バス路線の幹線・支線の整備
(6)共通定期券・均一運賃の導入
(7)運転手や車両の最適配置
を行い、収益面・運用面で都市圏路線の効率を改善し、そのことで過疎地路線の維持も行おうということのようです。

独占禁止法で禁じられていた事業者間の運行調整が、通常国会で提案される特例法案が可決すればできることになるということで、事業者間の垣根を超えて熊本の交通を改善しようという取り組みであり、今後の動きに期待したいところです。

しかし情報不足で今回の取り組みの良し悪しが判断できないところも多く、また個人的には「もやもや」するところもあります。

今日の段階では、その「もやもや」を書き残しておこうと思います。

(1)なぜ「共同経営」なのか。「事業統合」ではだめなのか。
(独禁法?しかし「とさでん交通(土佐電気鉄道+高知県交通)」の事例あり)

(2)「船頭が多くて物事の決定が遅い」状況が起きないか。これはこれまでの市公共交通協議会の議論でも実感しているところであり、枠組みが大きく変わらないことには不安を感じています。

(3)熊本都市バスは、市営バスの移管の他に都市圏内交通の再編の役割ががあったかと思うのですが、このままでは結局「バスの運転士さんの給料を下げる組織」になってしまったのではないか。その位置づけを再確認したほうが良い気がします。

(4)バスレーンって、特例法案とか事業共同経営とは全く関係ないですよね。

(5)路線網再編は2008年「バスのあり方検討会」から論じられてきたことであり、これも独占禁止法にふれるものではなく、なぜ今なのか。

(6)共通定期も今だからできるようになったことではなく、実際楠団地線の産交・電鉄など実施例があります。

(7)運転手や車両の最適配置については、事業者間で出向などダイナミックな取り組みができるのであれば、運行本数の増減やコミュニティバスの拡充など期待するところも多いです。しかし一方で(1)に立ち返り「事業統合ではだめだったの?」ということになりますし、コミュニティバスにおいてはむしろ今までの「なわばり」を廃し自由競争によれば低コストや高頻度運行、タクシーや観光バス事業者の参入など、地域の新しいビジネスが生まれるきっかけにもなるのかなと思ったりします。

結局の所私のもやもやは「今までの枠組みを変えない」というところにあるのかなあと感じます。(1)(7)以外は「できるのにしてこなかったこと」でもありますし、それにしても「共同経営だけが唯一解なのか」ということは知りたいところです。

誰のための何のための「共同経営」なのか。
事業者は「お客様のため」というでしょう。「うちが潰れたらお客さんが困る」。
では、なぜお客さんは、バスの運転士さんになろうという人は減り続けているのでしょう。

今回の決定は、市と事業者の間で決められました。今回の決定に、欠けているものはなかったでしょうか。

お客様にバスの存廃が「自分ごと」として捉えていただくよう、声を聞き、一緒に考える機会を設ける必要はなかったでしょうか。

ICカードも、バス無料も、今回のことも、私たちはいつも「お客様」扱いです。
私たちが「お客様」でいいのであれば、どんなしくみだって構わない。シビアにそのサービスの良否を判断し、便利であれば使う、不便であれば使わない、それだけなのです。








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