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階級社会の息苦しさ「窒息の街」

<文学(209歩目)>
現代フランスの鬼っ子の作品。

窒息の街
マリオン・メッシーナ (著), 手束 紀子 (翻訳)
早川書房

「209歩目」は、マリオン・メッシーナさんのデビュー作。
描きたいものを書いて、自らの考えを表明する。すごくパワーありました。

作家はデビュー作に、好きなこと、自らが関心を持つ問題を書ける。
まさに、メッシーナさんの経験が描かれている。
こぎれいで、生活しやすい集合住宅。欠けているものはチャンス。
ひどく貧しいのではない。それこそ、貧しい環境から見たらうらやましい環境でもある。
でも平等の名のもとに未だ階級社会の残る国で、機会が平等ではない故に、心がいたむ。
日本も少子化の中で、大学まで機会平等に見えるが、本当のところはやはり違うと考えてしまう。
平等で努力が報われるはずの「大学」が別の意味を持つと、若者は絶望してしまう。
国際都市のパリも東京も、平等のはずがそうでない部分があるからこその閉塞感。

この閉塞感が社会を沈滞させる。真の意味での「機会均等」はどこで実現されるのか。
重い問題点を読者に突き付ける筆力ある作品でした。

二作目が近未来、女性大統領が登場したフランス。
この作品って、なんかミシェル・ウエルベックさんの一連の作品みたい。
若いメッシーナさんの視点のこの作品を読みたくなりました。

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