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決断力と運「運命の旅」

<文学(43歩目)>
決断力って、大切。でも運がもっとも大切。

運命の旅
アルフレート・デーブリーン (著), 長谷川純 (翻訳)
河出書房新社

「43歩目」はナチスドイツからフランスに亡命したアルフレート・デーブリーンさんによる、フランスからアメリカへの亡命記です。

ユダヤ人だから故に、祖国のドイツからいち早く逃れてフランス政府に協力していた。でも、「安住」はカンタンには来ない。
この物語は自伝であり、時系列的な事実の記録です。

長文ですが、興味深く一気に読めます。

前半の「フランスからの脱出」と「フランスを離れて、アメリカに到着する」の2編に分かれている。
後半は、良質な紀行文です。

しかし、前半にこそ「奇跡」の連続がありました。「奇跡」って、掴もうとしないと掴めないもののようです。

第二次世界大戦で、開戦後まもなく降伏したフランスに居住していたユダヤ人は多かったようです。

ただ、それぞれの家業を持っている。あるいは、財産を所有していたことから、2023年の私たちは「早く逃げないと収容所に送られる」ことを知っているので、登場人物の多くにヤキモキしました。
でも、読むと「変化は少しずつ」であったことが判明します。

開戦後、一気に破れたフランス。そのフランスに進駐する規律が守られているドイツ軍。

占領下でも、「規律を守ること」により保護を与える告知をして、それを信じる多くの人々。なんか身につまされる思いでした。

デーブリーンさんは、当時55歳で幼い末息子を抱えていた。財産も仕事も全てフランスで順調。

こうなると、なかなか腰を動かすことが難しくなる。何しろ、脱出時には「ほぼ何も持てない」からです。

今まで築き上げた資産も交友関係も全てを捨てて、身一つになる。
これがなんと難しいことか。。。

また、「全てを捨てる決断」は早くないとまるで意味が無い。わずか一晩の逡巡で収容所に送られる人も大勢いた。

そして、「決断」をしたとしても、人間が持てる荷物に限界あり。重要なものでも、やはり捨てないといけない瞬間が来る。。。
そして「全てを捨てても運が必要」である。。。

デーブリーンさんは、まさに「僥倖」と言うべき「運」に何度も後押しされている。。。

すると、やはり大多数は大きな力にからめとられてしまう。。。

デーブリーンさんがフランスからアメリカに脱出した同年齢で読んだが、本当に難しいことが理解できた。

生き残れる人はわずかですね。

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