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コロナ禍で私たちは狂信的な潔癖が社会に感染することを知った「メトーデ 健康監視国家」

<文学(230歩目)>
この作品は、2009年に刊行されたそうですが、コロナ禍を経た今こそ深く読める作品になったと思います。

メトーデ 健康監視国家
ユーリ・ツェー (著), 浅井 晶子 (翻訳)
河出書房新社

「230歩目」はユーリ・ツェーさんのディストピア社会にかかわる作品。

SFでもあるが、文学に分類した。
出だしから、ディストピアど真ん中。
健康至上主義で、いつの間にか「健康」は義務にすり替わった監視社会。
SF的なテイストであるが、作中で「医療の警察化」にかかわる言及はとても文学作品的。
ドイツのベストセラーと言うのも、テーマが社会にピッタリだったことと文体の美しさではないか??と思った。

このテーマでのSFに大きくシフトした作品だと、ドイツで110万部も売れるとはにわかに信じられない。ユーリ・ツェーさんの作品はこれしか読んだことがないのですが、ディストピア社会を描き、現代ドイツの問題点をあぶりだしたからこその発売部数だと思いました。

健康や科学に反したり、説明できない事項は非理性人として社会から隔離される。
なんか以前に禁煙運動が定着したアメリカ社会のような気もする。

ウイルスについては、先日までのコロナ禍で曰く言い難き騒動があった「他県ナンバーの車を排斥する、自粛警察」みたいなもので、宗教的使命感から社会はバランスを失調すると、「ちょっとあり得ないこと」もすぐに現実化したことを私たちは経験している。

その為に、この物語が書かれた2009年の時点では、私は共感も感情移入も出来ない「クリーン」なディストピア社会だと思った。

これが「コロナ禍」を経験して、とても身近な作品に感じています。
つまり現実を10年先取りした作品で、その意味で目の付け所が素晴らしい。

ユーリ・ツェーさんの作品は文体が気に入ったので、他の作品も翻訳してほしい。

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