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超難解、だけど途中から惹きこまれる「石灰工場」

<文学(202歩目)>
文体についていけるか?最初の20ページ程度が合うか合わないか。

石灰工場
トーマス・ベルンハルト (著), 飯島 雄太郎 (翻訳)
河出書房新社

「202歩目」は、トーマス・ベルンハルトさんの代表作の一つ。改めて読むとやっとこの文体についていけるようになっていた。

以前に早川書房版で通勤途上に読むも、集中力が続かずに挫折。
このたび、河出書房新社版で再度トライ。
集中力を切らさないように、通勤途上の「細切れ読書」ではなく、真剣に取り組んでやっと最後まで読めました。

トーマス・ベルンハルトさんはこの作品が最初の出遭い。
「でも」、あるいは「だから」なのか?段落なく、ず~っと続く文体等により途中で中断されるたびに展開を読み直ししているうちに挫折しました。

その後、トーマス・ベルンハルトさんの作品が翻訳されるたびに友人たちから薦められるも手が出せませんでした。

今回、河出書房新社から新訳で刊行されるとのこと。
途中で雑念が入らないようにして取り組んだところ、やっと面白さがわかりました。
ここまで何年かかったののだろう?

ジョゼ・サラマーゴさん、ミシェル・ウエルベックさん、フランツ・カフカさんでこのような文体に慣れていたからか?やっと問題なく読めて、面白いと思えました。

メインテーマである妻女の殺人は、この作品の中の背景のようなもの。
主人公のコンラートの心情がひたすら、改行なく続く。

この文体に、以前は挫折したのですが、この文体が読めるようになると実験的なこの作品の核心部に入れた。

間接話法を巧みに使うも、間接話法での解明にいたる物語ではなく、このまた聞きでの展開の中から、「自称」科学者のコンラートのくらい世間からかけ離れた世界と時代の変化から取り残されている男の心情が見えてくる。

間接話法って、要は噂話。
これを並列していって、読者を引き込んでいく手法がとても新鮮でした。
この作品が半世紀以上前に書かれていること。

それが、翻訳されるも、挫折により半世紀を経てやっと読めたことに感謝です。

とても「癖になる」文体だと感じました。また取り組まれた河出書房新社さん、ありがとうございます。

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