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新しい「医療」系です「あなたの燃える左手で」

<SF(64歩目)>
「医療」と「文学」の一つの新しい形を楽しむ。

あなたの燃える左手で
朝比奈 秋 (著)
河出書房新社

「64歩目」はまた新しい才能が出てきたと感嘆する作品です。

作者の朝比奈秋さんは、現役の医師のかたわらデビューされた新人です。
何気に手に取り、読んでみたら驚きました。

このコロナ禍の中で、出版業界は沢山の「感染」「ウィルス」「パンデミック」関係の書籍を世に出してきました。それは玉石混交で、「ダメじゃん・・・」という作品が大量に積みあがっている。

その中で、この作品は「移植手術」の世界に深くかかわる作品です。
「移植手術」は一般常識として「拒否反応=免疫反応」が出るために難易度が高いことを理解はしていましたが、この「事実」が朝比奈さんの手にかかると「時事問題」「SF」にもつながる作品に昇華しています。

物語は医療的な側面がかなり色濃くでています。
しかし、単なる「医療もの」にならない展開です。文中にある「移植片の量が多いほど、拒絶反応は起こりにくくなる。逆に指一本だけを移植した日には、拒絶反応で一瞬のうちに指は焼け落ちる」という医療の中での真理を日本文化まで昇華した世界観は初めてでした。薄い本ですが、とても心を突かれました。

そして、舞台は中欧のハンガリーの第二の都市のデブレツェン。そして、ウクライナのクリミヤ半島やキーウが絡む。
地政学的な話題を背景に「医療」を絡めているのが「いいね!」です。

※それにしても、描写が細かい。クリミヤ半島と本土との境、あるいはデブレツェンの描写。
 以前に訪問しているのかな??と感じました。少なくともクリミヤ半島にはもう入れない。。。

とても薄い本で、出張時に速攻で読める。でも、余韻はなかなか素晴らしい作品です。

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