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【緊急解析】『闇バイト強盗』 発生傾向と防犯対策

東京都や埼玉県で一軒家に対する強盗事件が連続発生しています。

逃走中の容疑者もおり、また、闇バイトで集められて犯行に及んでいる様子がうかがわれるので、今後も新たな犯人(グループ)によって連続発生する可能性は十分ありますので、今回発生した事件を簡易解析し、狙われやすい対象や防犯対策についてお知らせします。

■ まずはそれぞれの事件の発生状況

1 発生日時 2024年9月28日(土) 午前2時45分ころ

発生日時 2024年9月28日(土) 午前2時45分ころ
発生場所 東京都練馬区大泉(住宅街) 一軒家
被疑者  男5名以上(うち実行犯2名、運転見張り役1名逮捕)
被害者  50代男性 20代男性 (親子) 
侵入箇所 1階窓ガラス
侵入方法 窓ガラスをたたき割り解錠(周辺住民が叩き割る音を聞く)
その他  容疑者の供述「闇バイトに応募した」「(事件の)数時間前にファミリーレストランに集合した」「他の犯人は顔見知りではない」

2 発生日時 2024年9月30日(月) 午前4時ころ

発生日時 2024年9月30日(月) 午前4時ころ
発生場所 東京都国分寺市恋ヶ窪(住宅街) 一軒家
被疑者  男5名くらい
被害者  60代女性 (独居) 
侵入箇所 1階勝手口
侵入方法 勝手口窓ガラスをたたき割り解錠(被害者が割れる音に気付く)
その他  被害女性の顔や手足を粘着テープで緊縛、スマートフォンの画面に「金を出せ」という文字を表示

3 発生日時 2024年10月1日(火) 午前2時ころ

発生日時 2024年10月1日(火) 午前2時ころ
発生場所 埼玉県所沢市北野新町(住宅街) 一軒家
被疑者  男複数人(うち1名逮捕、2名確保)
被害者  85歳男性 83歳女性 (夫婦) 
侵入箇所 1階勝手口
侵入方法 勝手口窓ガラスをたたき割り解錠
その他  被害者を粘着テープで緊縛・暴行、容疑者の供述「秘匿性の高いアプリで仕事を受けた」
国分寺市の第2事件と使用車両が共通している車2台を発見(筑豊ナンバー、前橋ナンバー(レンタカー))

以上が10月1日現在の発生状況になります。

■ 次に各事件の共通点を洗い出します

1.発生時間帯

各事件とも午前2時~午前4時と通常住人が寝ているであろう未明の時間帯に発生しています。

2.住宅街の一軒家をピンポイントで襲う

3件とも近隣に住宅が複数ある地域で発生しています。近辺を物色した様子などは伝わってきません。
ピンポイントで今回の被害者宅を狙っています。
いわゆる「闇リスト(ターゲットリスト)」に掲載されているお宅が狙われた可能性があります。

3.実行犯が多人数

各事件とも5名程度の人数で犯行に及んでいる様子がうかがわれます。
2023年に発生した東京都狛江市の強盗殺人事件(通称ルフィーグループによる闇バイト事件)と構成人数が酷似しています。

4.被害者の年代

特に2事件、3事件は高齢の世帯が狙われたものと推認されます。
世帯情報が事前に把握されていた可能性があります。
この点からも「闇リスト(ターゲットリスト)」の存在がうかがわれます。

5.侵入・暴行手口

侵入・暴行手口は3事件ともほぼ同一です。

【侵入手口】
1階の鍵のかかっている窓ガラスまたは窓ガラス付きの勝手口のガラスをドライバーまたはバール様の物で叩き割り、鍵に手を伸ばして解錠しています。

【暴行手口】
各事件とも物音に気付いた被害者の方に対し、ハンマーや刃物で暴行を加えています。
2事件、3事件は粘着テープで被疑者の方を緊縛したうえで暴行しています。

元来、未明に発生する住宅対象の盗難事件の手口の多くが「忍び込み」という手口です。
「忍び込み」とは、その名のとおり、寝ている家人(被害者)や周辺住民に気づかれないように静かに家に侵入して室内を物色、物を盗むという手口です。
忍び込みは、気づかれないように静かに侵入、静かに物色する必要があるので、言い方は悪いですが犯行を実行するにはそれなりの練度が必要になります。

それに対して今回の一連の事件は、周囲に気づかれるほどの大きな音をたてて窓ガラスを割って侵入、住民を縛り上げて脅して金の所在を聞き出すというとても荒々しい凶悪な手口です。
極めて凶悪なものですが、手口自体は極めて単純な手口であり、犯行に練度は全く必要ありません。つまり素人でも実行可能。

このことからも「闇バイト」を利用した匿名流動型犯罪グループ(トクリュウ)による犯行が強く推認できます。

6.発生場所


引用:読売新聞オンライン

それぞれの犯行現場から15キロ程度離れた場所で連続発生していることからも同一グループの意思で犯行が行われていることが推認できます。

以上が各事件から見えてくる共通点です。

■ さらなる連続発生の可能性

3件連続して発生し、犯人の一部も逮捕されているのだからもう発生しないのではないかと思われるかもしれませんが、そう判断するにはまだ時期尚早と言えるでしょう。
その理由は以下のとおりです。

1.闇バイト(捨て駒)による犯行であること

今回一連の強盗事件はまず間違いなく「闇バイト」つまり犯行実行役は全て捨て駒であるということ。
実行犯の意思で今回の犯行が行われているのではなく、この捨て駒を動かしている指示役の存在があります。
警察も懸命な捜査を行っていることと確信していますが、この指示役を検挙しない限り再び同種強盗が発生する可能性は否定できません。

2.過去の闇バイト連続強盗は3件程度では終わっていない

闇バイトの連続強盗事件で記憶に新しいのは、2023年1月を中心に発生した通称ルフィーグループによる広域連続強盗事件があります。Wikipedia


引用元:読売新聞オンライン

上記のとおり、東京都内で2022年12月に連続発生し、その後千葉、埼玉、神奈川、茨城で次々と発生しました。(すべての事件がルフィーグループによる犯行とは未だ特定されていません)

過去の闇バイト強盗事件の例を見てみても、今回の事件について、残念ながら連続発生の懸念は残ります。

■ ターゲットとなる可能性の高い家

以下の対象以外の家は狙われないと保証するものではありませんので悪しからずご了承ください。
下記に限らずすべてのお宅で防犯意識を高めていただきたいのが大前提です。

1.一軒家または集合住宅の低層階

今回の一連の強盗事件は今のところマンションなどの集合住宅ではなく一軒家が狙われています。
闇バイトで集められた素人による犯行ですので、今後も「入るのにテクニックをあまり必要としない」住宅がターゲットになる可能性が大いにあると思います。
窓を割って簡単に入れる住宅と考えると一軒家または集合住宅でも低層階が狙われる可能性が高いと考えます。

ただし、マンションなどの高層階にも宅配便などを装った強盗事件も過去に発生していますので、警戒は必要です。

2.過去に一度でも「オレオレ詐欺」「アポ電」など特殊詐欺の電話がかかってきたお宅

今回の一連の事件は、「闇リスト(ターゲットリスト)」を利用している可能性が高いのは既出の通りです。
同じように「オレオレ詐欺」「アポ電」などの特殊詐欺の電話も同じように「闇リスト(ターゲットリスト)」を基に電話をかけています。

つまり、一度でもお宅やスマホにこの手の電話がかかってきていれば、そのお宅の情報は少なからず既にリストに載ってしまっているということなので、一層の注意が必要です。

■ 強盗から身を守る防犯対策

お金をかければできる防犯対策(防犯カメラ、センサーライト、警備システムなど)は非常に有効でできればやってほしいですが、ここではなるべくお金を掛けずにできる防犯対策をご紹介します。

1.鍵を確実に掛ける

防犯の基本は「鍵」です。朝晩すずしく気持ちの良い季節になりましたが、就寝時には必ずすべての出入口、窓に鍵をかけてください。窓を開けたまま就寝するのは厳禁です。

今回の一連の強盗事件は、施錠中のドアや窓を割られて侵入されていますが、施錠をしていることで侵入するために窓やガラスを割って大きな音をたてています。

特に1件目の練馬の事件では窓を割る音に気付いた周辺住民の方が110番通報してくれるなど、検挙に繋がっています。

鍵をかけるのは本当に大切なことです。

2.補助錠の活用

今回の一連の事件の侵入方法の特徴として、窓または勝手口の鍵付近のガラス部分を割り、手を内側に入れて鍵を開けるという手口です。

建付けの施錠設備に加えてもう一つ鍵をつけるのは防犯上非常に有効です。

一つの開口部に対して2つ以上の施錠設備を設けることをお勧めします。
100円ショップなどでも補助錠を扱っていますのでご検討ください。

3.防犯フィルムの活用

上記と同じように、窓などのガラスを割られない対策が必要です。
ガラスの中にワイヤーの入っている強化ガラスには防犯の効果はありません。
3事件目の所沢の事件では、勝手口のガラスはワイヤー入りの強化ガラスでしたが、破られていました。

防犯性能の高い窓(CPマーク入りなど)でない場合は、ガラス破り対策で防犯フィルムを張っておくことをお勧めします。

防犯フィルムの選び方にもご注意ください。サイズが小さすぎたりすると貼られていない部分を容易に割られてしまうので、ご自宅の窓などのサイズに合った防犯フィルムで対策していただきたいと思います。

4.タンス預金厳禁

自宅に大量の現金を保管しておく行為はかなり危険です。
本人は言っていないつもりでも、どこでどのようにその情報が漏れているかわかりません。

大量の現金が保管されていることを悪い奴らが知ってしまえば間違いなく狙われます。
金融機関など適切な機関に保管しておきましょう。

5.見せ金を用意しておく

今回の事件の犯人らも明確に被害者の方に対し「金はどこだ」と聞いています。

奴らの目的は人を殺すことではなく、金を奪うことです。
金がすんなり出てくれば、暴行をやめ、犯人らがその場からいなくなる可能性が高まります。

万が一に備え、自宅内に1万円程度の「見せ金」を用意しておけば、被害が最小限に収まるかもしれません。

6.こんな時だからこそご近所同士の助け合い

一連の事件は住宅街で発生しています。1件目の練馬の事件では、ご近所さんが110番通報をしてくれたり、犯人を捕まえることを協力してくれたり、ご近所さん同士が見事に連携してくれました。

犯人は武器になるものを所持している可能性もあり、犯人を捕まえる行動は慎重になっていただきたところですが、ご近所さんの連携の大切さを実感した事例です。

ぜひ、一度ご近所さんとの世間話で今回の件を話題にしていただければと思います。

また、犯人らの使用車両は県外、それもかなり縁遠い地のナンバープレートでした。そのような不審な車両を見かけた際は躊躇することなく110番通報をしてください。

地域の目が安全・安心を作ります。

■ 終わりに


今回の一連の強盗事件の指示役や実行役が一人残らず早期に検挙されることを心から願います。

匿名・流動型犯罪グループの壊滅に日本の警察は全力で取り組んでいます。遅かれ早かれ今回の事件の犯人も必ず捕まります。

犯人が全て検挙され全容解明されるまでの間、一人ひとりが高い防犯意識を持ち、進化(深化)する犯罪のその先に備えておいてもらいたいと思っております。


文責:刑事事象解析研究所(ケイジケン) 代表理事 森 雅人

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