風をおくろう
かつてあなたは
ぴんと張った肌と
すこし生意気に輝く瞳と
どこまでも駆けて行ける脚をもっていた
誰もがその美しさに魅了された
いまのあなたは
柔らかな身体の線と
寂しさと優しさを湛えた微笑みと
だれかに差し伸べる腕をもっている
誰もがその思慮深さに惹かれていく
わたしが出逢ったのがいまのあなたで
よかったとおもう
昔ならきっとその眩しさに気後れをしていたから
わたしは今のあなたに刻まれた皺に
銀色に光る髪に
賢者への敬意を抱く
たぶんこれは愛なのだろう
わたしがあなたをこの胸に抱くことはできなくても
その肩を支えることは叶わなくても
それはどうでもよいのだ
あなたの住む遠い街に
わたしはただ
暖かな島の空気と風を
言葉にのせて あなたにおくろう
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