この10カ月で分かったパラレルワークの弊害と、働き方の妙。
遡ること 10カ月前..
2021年10月某日、人生で初めて「複業兼業」という働き方に一歩踏み出した。コロナ禍の影響も相まって、基本 在宅ワークという限られた空間の中で仕事をこなすことに何の躊躇いも戸惑いもなかった訳だが。。
然うは問屋が卸さなかった。
悪魔のささやきは、すぐそこに。
複数の企業と関わること自体、生活に幅を持たせてくれたことは確かで、自己肯定感も高めてくれた。また、子どもたちと距離が近くなった分 家庭での会話が増えたことや、家事との両立に垣間見える忙しない日々が、当たり前のように感じられた。
ところが、業務委託という雇用形態のまやかしが、毎日を積み重ねていくうえで課題点を浮き上がらせるのを、ひしひしと肌で感じながら、色々と難しい側面が顔を覗かせていく。
立場上 外部の人間だからこそ、強く当たってしまう相手からの要望。自分に見合ったスタンスじゃないと、毎回のごとく発生する擦り合わせのミーティング。一緒に仕事をしていくうちに綻びが出ていくのが怖くもあり、とはいえ、契約している期間中は、言われたことは忠実にこなそうと、必死にもがいて もがいて もがきながら業務に当たった。
囚われない為の負の鎖を断ち切るには。
何故 こんなにも相手との認識に齟齬がでてくるのか。自分が期待してもいないことや、自分のペースを勝手に解釈されても困ってしまう。別に受け身になっているつもりは微塵もなく、いざ 主体的にアクションを起こそうと思っても、オンボーディングもままならない状況 且つ、頭の中が真っ新な状態でどう動けというのだ。。
そんなシチュエーションを、日常茶飯事のように突き付けられた。
契約する以前に、しっかりと話し合いをもつというのは、むしろ暗黙知でもあるのだけれど、稼ぎを優先にしてしまうと、その大前提の部分をすっとばして話しを進めてしまうこともあった。
相手からすれば、この人に任せておけば 何とかやってくれるだろう。という、アバウト過ぎる思い過ごしに、今更ながら唖然としてしまう。
その1点張りは、どんなプロジェクトや案件でも多分に感じられ、面倒くさいことや、厄介ごとに首を挟んでくれないと困るとでもいうような感じで、オブラートに包んだような遠回しの言い方も多かった。
役回りと能動的な動きと。
受託PM、プロダクトマネージャー、自社サービスPM、コミュニティ企画設計、広報・マーケ支援。これまで 数ある職種職域に携わった背景には、自分の経験や知識を、必要とされる会社があればそこに還元したい気持ちが根強くあったから。
自分と言う存在を認めてくれて、受け入れてくれる場所さえあれば、どこまでも赴く。そして、その会社の力になれる喜びを感じる。それが、この半年間で唯一無二の働くモチベーションでもあった。
でも、相手からは、有無を言わさず、次のような言葉が突いてでた。
『Slackでチームのメンバーに会議の招集を行ってください。』
『Googleカレンダーの予約は前もってやっておいて貰えますか?』
『議事録の係を率先してやってください』
『日程のアポ取りは自分から動いて欲しかった』
『イシューの内容のどこを確認して欲しかったのか分からなかった』
『PdMとして雇っているのに、、自分から動かないじゃないですか』
『自分の伝え方も悪かったんですが、(単価 ¥3,000 も払ってるのに)ロードマップ引いて終わりじゃないですよ』
いやいや、そういう風な話しは全然聞いていないし、どうしてそのような口ぶりになるのか。。
途中、自分自身を見失いそうになった。
人と関わっていくこと。 最も大事にしなければいけないこと。
相性が合わなかった。ひと言で表すと そう捉えられてもしょうがないが、果たしてそれが正しかったのかどうかは 今思うと判断が難しい。
人それぞれ、思うことがあっても言えない人。本当はそうして欲しいけど、思うように動いてくれないもどかしさでイライラを募らせる人。色んな思いが錯綜しながら、互いに業務を紡いでいくことが、どれほどの繊細さを求められているかなんて、コロナ禍以前は 誰も思いも寄らなかったのではないだろうか。
毎日、顔を突き合わせることもない Slackのハドル越しでの朝会も、本当であれば 会話することの重要性を問う為のものが、意味を成さないルーティンになるにつれ、人間として大事なことを思い出させてくれた。
相手に敬意を払うこと
リスペクトすること
労いの気持ちをもって接すること
ほんの少しだけ、そこの部分が足りて無かったと思いたい。
それでも、潰れない。
この夏は、尋常じゃない暑さだ。ここ数週間、外に出るのもうだる様な熱波で嫌になってしまう。仕事するには最悪な環境だ..
いつもながら珈琲を買いに、近所のコンビニに向かう足取りが異様に重い。
2022年7月末、この10カ月間、お世話になったひとつのベンチャー企業との契約が満了した。それは突然のことで、けれども 半ば分かっていたことが明るみになった感触だった。
『いつもオンライン展覧会の業務、ありがとうございます。この6月から事業責任者として配属になった松尾です。』
急遽 組まれた謎の 1on1 は、何の前触れもなく湧いてきて、たったひと言で終わった。
『来月の7月で終わりとさせて下さい。リモートだと何かと難しいので。』
理由は、勿体付けたようなものだった。
必要とされる場所を探しに。
人の人生は、大概が仕事で終わる。ひとつの会社に属して一生を終える人もいれば、自営業でお店を構える人もいて、大学を中途で辞めて起業する若者もいれば、脱サラしてフリーで屋台を広げる人もいる。
僕はといえば、会社の組織から離れることで、自分らしい働き方を見つけることが出来た人といえるかもしれない。
それは、コロナ禍という世の中で、人と会うことが当たり前じゃなくなったところから始まって、自宅で仕事ができる環境が揃ったからこそ生まれた局面ともいえなくもない。
人それぞれ己の価値観を大事にして生きているから、他人に干渉されることを極端に忌み嫌う人もいる。ただ、仕事に私情は挟んではいけないし、同じ仕事仲間であることを 第一に考えてほしいと思う。
僕は、今日も必要とされる場所を探しにいく。あてもなく彷徨い続ける旅烏のように。