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【小説】年上彼女の嘘-今までの生活-

第3章 今までの生活

僕と愛菜さんが付き合ってはや7ヶ月が経とうとしていた。喧嘩もする事なく、週2〜3回会っている。
「愛菜さん、来週の火曜日に映画観に行かない?」
僕と愛菜さんの唯一の趣味である映画鑑賞。今まで映画とかあまり興味なかったけど愛菜さんと付き合いだして好きになった。
アニメ、洋画、邦画なんでも見る愛菜さんに無理矢理付き合わされてから僕もハマったのだった。
「ごめん、来週の火曜日は出張で地方に行くの」
人差し指で頬をポリポリと掻きながら話す愛菜さん。
(受付嬢でも出張があるんだ)と思ったが、今まで付き合ってきて一度も嘘をつかれていなかったので僕はすんなりと受け入れた。
「仕事だったらしょうがないね。いつごろ帰ってくるの?」
「日曜日の朝には帰れると思う」
そうゆう彼女はどこか寂しそうに見えた。
「じゃあさ、日曜日駅で待ってるよ」
「えっ?」
「愛菜さん、仕事で頑張ってくるんだから帰ってきたら美味しいものいっぱい食べに行こうよ!」
愛菜さんは一瞬驚いた顔をしていたが、顔はすぐに安堵の表情となり僕に抱きついてきた。
「修哉くん本当に大好きだよ」
そう言いながら僕に抱きつく彼女の力がグッと強くなった。 
        ❇︎
朝、スマホのアラームで目が覚める。
冷蔵庫を開け、ベーコンと卵を取り出しサッと焼いたらスマホを見ながら食べる。
「午後から雪かぁ」
ネットニュースや天気予報をチラ見していきスマホの左上の時間を見る。
「やべ、」
今日は愛菜さんが出張から帰ってくる日だ。
もう1週間近く会ってない。
付き合ってからこんなに会わなかったことが無かったので早く会いたい気持ちで高ぶっていた。
実は昨日から愛菜さんと連絡が取れていない。
といっても既読になっていないだけなので仕事で疲れているから寝ていたのだろうと思っていた。
傘を持ち、駅までタクシーを拾う。
走る車内から外の景色を見てみるとイルミネーションをしている街中が目に入る。
もうすぐクリスマスかぁ。
そんな事を思いながら愛菜さんと初めて迎えるクリスマスに心を躍らせていた。
9時10分。電車到着予定まであと5分だ。
なんとか愛菜さんが着くより早く着いた。
近くの自動販売機であったかいココアを2つ買う。それをコートのポケットに入れ、冷たくなった両手を温める。
10時10分。あれから1時間経ったがまだ着かない。連絡もない。電話をかけてみたが電波が悪いのか繋がらない。
11時10分。予報通り雪が降ってきた。はく息も白くなり鼻の頭は赤くなっていた。2人分のココアも完全に冷え切っている。屋根のあるところへ行き愛菜ちゃんの帰りを待つ。
だがその日、愛菜ちゃんは帰ってくることはなかった。 
次の日、僕は風邪を引いた。
終点まで待ったが結局帰ってこなかった。そして連絡はまだ無い。さすがに何かあったのかもと思ったのだがどこかで(大人だから大丈夫)と思う自分もいる。とにかく今は風邪を治そう。そう思い眠りについた。
その次の日、目が覚めると僕はすっかり元気になっていた。スマホを見てみるが連絡はまだ無い。
それどころか既読すらついていない。
さすがに警察に行った方がいいのか。僕の頭の中ではそんな事を考えていた。
考えれば考えるほど良くない想像をしていた。
ピンポーーーン
インターホンの音が部屋中に鳴り響いた。モニターの画面を見ると一気に体全体の力が抜けて行くのがわかった。そこにたっていたのは紛れもなく愛菜さんだった。
僕は急いで玄関へ走りドアを開け
「愛菜さーん」
と叫びながら彼女に抱きついた。
愛菜さんはビックリしたような表情を見せたのだがごめんねと言いながら僕の頭を撫でてくれた。
彼女を部屋に入れ、話をした。
携帯が壊れてしまって連絡ができなかった事。
予定より1日出張が伸びてしまった事。
僕は連絡がつかなかったことよりも愛菜さんが何もなく無事でいてくれた事に僕はホッとしていた。
        ❇︎
あれから僕たちは2人で同棲を始めた。
毎日家に帰ると愛菜さんがいる。夜寝る時もご飯を食べるのも一緒。一緒に暮らすと今まで知らなかったことが分かってくる。例えば愛菜さんは目玉焼きにソースをつけるタイプみたいだ。今までは僕に合わせて醤油をかけて食べていたが一緒に暮らすと違う。前までは洗濯物を毎日洗っていたのだが一緒に暮らしてからは2日に一回、溜まったら洗うスタイルのようだ。
今まで見せてこなかった姿を見せてくれるのは僕にとって幸せなことで何も苦にならない。
夜の生活もそうだ。
前までは会ったら2回に1回のペースで行っていたが今はほぼ毎日要求してくる。これも男なら喜ばしいことなのだが戸惑うくらい人が変わったようだった。
今日は僕の仕事が休みで愛菜さんは仕事。同棲を初めて3ヶ月、たまにこうゆうことがある。
朝、出勤をする彼女を見送る。それから僕は部屋の掃除をしたり晩御飯の買い出しに行ったりと休みだが忙しい時間を過ごす。
行きつけのスーパーで材料を買い、レジに並び精算をする。(早く帰ってこないかなぁ)そんな事を思いながら家までの道のりを歩く。
ランドセルを背負った少年少女が僕の横を笑いながら走っている。その光景を見て微笑ましくなりまた愛菜ちゃんを思い出す。さっきまで一緒に居たはずなのにいつどこでも愛菜さんを考えている。僕は病気なのかもしれない。
「あのーすいません。」
突如声をかけられ振り返る。そこにはスーツ姿の男が立っていた。歳は40くらいで背は高めでガタイもいい。髪は無造作に跳ねていて不潔感がある。いかにもそれっぽい人だった。
「あのー半田修哉さんでよろしかったですか?」
僕の名前を知っている事にビックリしたがその人は黒い手帳みたいなものを見せながらこう言った。
「〇〇署刑事課の弾野と申しますが、ちょっとお時間よろしいでしょうか?」
少しダルそうに話すこの人の目を見て僕はなぜか背筋が凍った。
「・・・刑事さんが何か用ですか?」
僕は警戒しながら答えた。
「一ツ木愛菜さんご存知ですよね?彼女が亡くなった件でお話聞きたいのですが。」
こいつは何を言っているんだ。愛菜さんが亡くなった?今朝まで一緒に居たあの元気な愛菜さんが・・・死んだ?
「・・・何をいっているんですか?」
僕は戸惑いながら答えた。
「あれ?ご存知なかったですか?一ツ木愛菜さんはあなたの恋人で間違いないですよね?」
その言葉を遮るように僕は声を発した。
「今朝まで元気だった愛菜さんが死んだ!?何の冗談ですか!?不審者がいるって通報しますよ!?」
僕はかなり動揺していてかなり大声で話していたと思う。
その男は突然の大声でなのか驚いていて少しの沈黙の後こう話した。
「・・・今朝?一ツ木愛菜さんが亡くなったのは今から3ヶ月前ですよ?」
男はそう言い僕の目をじっと見ていた。


第4章に続く





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