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忘れられないお客様
わたしには、30年の接客人生の中で忘れられないお客様がいらっしゃいます。
30年の間に何度か転職していますが、その中で5年間、某カフェで働いていました。
そのお客様は92歳のおばあちゃん。
笑顔がチャーミングで、大好きなお客様でした。
今回は、そのおばあちゃんとの思い出をご紹介したいと思います。
出会い
実は、そのおばあちゃんとの出会いは覚えていません(汗)
いつ頃からご来店いただいていたのかは思い出せませんが、認識するようになってから、悪天候でない限りは一日も欠かさずご来店いただいていました。
だいたい10:00~15:00の空いている時間帯に息子さんとご来店され、1時間ほどお食事を楽しみます。
決まってホットドックとコーヒーを召し上がっていました。
初めてお年を聞いたときは、本当に驚いて。
いつもニコニコ穏やかな笑顔でお話ししてくれるおばあちゃん。
わたしは、すっかりファンになってしまいました。
温かい触れ合い
おばあちゃんが来店されるようになって、どれくらい経ったころでしょうか。
もともと背中が丸まることもなく姿勢良く、足取りも軽かったおばあちゃん。
それでも年月が過ぎるごとに、徐々に足腰が弱まっていきました。
椅子から立ち上がるのも大変そうで、息子さんが手を取り、時間をかけて駐車場まで歩いていきます。
そんな姿を見て、手助けをしたくなりました。
次の日から、わたしが出勤しているときはお手伝いすることに。
おばあちゃんが来店される時間は、比較的空いている時間帯です。
車が入ってきたのが見えたら、接客中でない限りは車までお迎えに行き、帰りは息子さんに車を入り口まで持ってきてもらいました。
おばあちゃんに両手を差し出し、わたしは後ろ向きで車までお連れします。
そのときの、わたしを見上げるおばあちゃんの笑顔が本当に可愛くて。
わたしが働いていたカフェはガソリンスタンドが併設されており、入口に車を停めても邪魔にならないほどの広さ。
それでも入口は人がやっとすれ違えるくらいの幅で、他のお客様が見えたら先に通っていただき、おばあちゃんを車までお連れしていました。
中には「お先にどうぞ」「ゆっくりで大丈夫ですよ」などと言ってくださるお客様もいて、本当にありがたく心が温かくなりました。
そんなふうに仲間やほかのお客様の協力もあり、おばあちゃんのサポートに徹することができました。
別れ
その日は、今にも雪が降りだしそうな寒い日でした。
わたしは休憩中で、お車が入ってくるところを見ておらず、後輩が呼びに来てくれました。(わたしが休憩中のときは呼んでくれるように頼んでいたので)
息子さんだけがご来店されて、テイクアウトを頼まれました。
いつもの、おばあちゃんが頼んでいるメニューです。
「今日は、おばあちゃんはお留守番ですか?」と聞くと
「いや、車にはいるんですけど起きなくて」と。
お見送りがてら、息子さんと一緒にお車まで行くと助手席に寝ているおばあちゃんが。
ドアを開け、手を握りながら声をかけましたが、返事はありません。
おばあちゃんの呼吸が、すごく弱く感じました。
寒いこともあり早々にドアを閉め、帰っていくのを見送りましたが、嫌な予感がして。
その後、おばあちゃんが来店されることはありませんでした。
そして1週間が過ぎたころ、息子さん1人でご来店。
わたしが最後にお会いしたあの日に、おばあちゃんは目を覚ますことなく亡くなられたそうです。
朝から体調が良くなさそうだったのに「お店に行きたい」と、おっしゃったそうで…。
息子さんが帰られてから、スタッフルームで泣きました。
今、この記事を書きながらも目がウルウルしてしまいます。
最期まで、わたしに会いたいと思ってくださっていたのかなと嬉しくなりました。(いや、ただ単にお店が好きだったのかも知れませんが)
今でも大切な思い出
わたしは自分の祖父母の記憶が、ほぼありません。
それが関係しているのかはわかりませんが、昔からおじいちゃん、おばあちゃんには優しくしようという意識が強かったです。
それが接客にも活きていたのではないかなと感じます。
こういった記憶の一つひとつが、わたしを創っているのですよね。
これからも大切にしておきたい思い出です。
今日も最後までお読みいただき、ありがとうございます。
また、お会いしましょう。