家族でkintoneをつかってみたら、あたらしい情報共有とチームのかたちを見つけた話
みなさんは家族と連絡を取る際、どんなツールを使っていますか?SNS・メール・電話など、きっと家族の数だけ情報共有のスタイルも存在していると思います。
そんな家族とのコミュニケーション手段に、なんとkintone を使うという選択をしている方がいます。
今回は、実際に家族でkintoneを活用するユーザーのお一人である菅原 吏利(すがわら りき)さんにお話を伺いました。
物理的な距離がある中での家族間コミュニケーションに感じていた課題
現在、サイボウズのパートナー企業でもあり、KOYOMI・KANBAN・KOTEI等のプラグイン販売でも知られる株式会社アーセスに所属する菅原さん。まずはkintoneに関わり始めたきっかけと、家族でkintoneをつかうようになった経緯を伺いました。
「もともと前職時代、社内の業務改善サポートを行う部門にいた時に、kintoneの存在を知りました。『誰でも業務改善に取り組むことができる点』に可能性を感じ、kintoneに関われる仕事へ転職を決意。そこで、チーム応援ライセンス(※1)というものがあることを知り、さらに“家族”もチームとして認められることを知ったんです。その時自分自身がkintoneを家族で使うモデルのひとつになり、いろんな家族にとって再現性のある事例を作っていきたいと感じました。kintoneは難しそうだと思っている方々に対して、家族という、多くの人にとって一番身近なチームの中で活用する事例を作ることでkintoneはそんなに難しいものじゃないんだよ、ということを伝えたいと思いました。」
現在kintone環境を利用しているのは、東京に在住の菅原さんご夫婦、宮城に住む菅原さんのご両親、菅原さんの妹さんご夫婦の6名です。もともとはSNSアプリを使って連絡を取っていたそうですが、当時は次のような課題感を感じていたそうです。
「関係者が3人以上になると、ふとした情報の共有漏れが起こる感覚が漠然と自分の中にありました。私の家族の場合、物理的に両親と顔を合わせやすいのは隣県に住む妹夫婦です。そのため、『こんなことがあったよ』というようなふとした出来事の共有が、東京にいる私たち夫婦と東北に住む親族とでは、物理的な距離もありなかなか難しかったんです。また、お互いの子どもの情報共有も『こんなに背が伸びたよ!』と写真を送るだけじゃ、実際どれくらい大きくなったの?という事実が分かりづらかったこともありました。そもそも世の中のコミュニケーションツールは機能がありすぎて両親にとっては複雑に感じられたり、複雑なアプリケーションだと両親の使うシニア向けのスマートフォンでは操作性が悪かったり。その時、これってkintoneの出番かも、と感じ、2019年の暮れに家族間での導入を決めました。」
導入を進めていく際は、“目的・理想の共有”を大切にしたと語る菅原さん。子ども(お孫さん)の成長を親に伝えたい、という理想と、菅原さんのご両親も孫の成長を知りたい、というのは双方にとってうれしいことです。根底にある想いをしっかり共有しつつも、初めから数多くのメリットを伝えるのではなく、「SNSツールで同じことをするより、楽になるかも。よかったら使ってみてね」と、まずはライトなメリットを伝え利用を開始したそうです。
こだわりが詰まったシンプルなアプリ構成、情報の受け手も送り手も続けやすい手段を
そんな菅原さん一家の家族kintone、現在稼働しているアプリは、こども成長記録
・あそびレポート・安否確認アプリの3つ。
こども成長記録
おじいちゃんおばあちゃんが、孫の情報を知りたい時に開く、成長を伝えるためのアプリ。最近のベストショットや服のサイズ、好きな食べ物、最近の興味を記録。服のサイズが変わった際には、通知が飛ぶ仕組みも整っています。これを見て、新しい服を送ってくれることもあるそう!すてきですよね。成長の度にレコード(kintone上の記録)を編集していく運用のため、「変更履歴」の機能をたどると過去の成長記録を知ることができます。
あそびレポート
日々の出来事を共有するためのアプリ。“文字列一行フィールド”(※2)に出来事を記録し、"添付ファイルフィールド"(※3)で写真を添付できます。新しいあそびレポートのレコードが追加されると、kintoneから通知が飛ぶようになっています。あそびレポートへの反応は、コメント欄で!近頃は、公開からたったの2分後には既にお母様からコメントがついていることもあるそうです。ふとした日常を通しての、家族間のコミュニケーションにつながっています。この“文字列一行フィールド”の選択にも、後述する菅原さんのこだわりが。
安否確認アプリ
地震や台風など、安否を確認したいときに使うアプリ。確認を求める側がレコードを作成し、回答を促す流れです。回答を求めたタイミングで通知が飛び、「無事、軽傷、重症」の選択肢から回答を選択。一定時間回答がない場合は、リマインダーの通知が飛ぶようになっています。
菅原さんがアプリを作る上でこだわったポイント
「やはり両親にとって、新しいツールを使うというのはそれだけハードルが高いことです。最初からkintoneを使うことに乗り気だったわけではありませんでしたが、導入初期の頃は、とにかくこちらから投稿して両親にkintoneを開くことに慣れてもらうところから始めました。すると自然とkintoneを開くサイクルができて、現在に至っています。
両親にも浸透したなと感じた瞬間は、『またkintoneに写真載せてね』と母から言われたとき。そして、父からも『スマホ変えたから、kintoneを入れてくれ』と言われたときです。
あそびレポートを公開したとき、主にコメントをくれるのは母ですが、コメントというアクションを起こさない父もしっかりkintoneを見ることを楽しみにしてくれていることがわかった瞬間でした。孫の情報を見られることって、重要なんだと改めて感じましたね。」
菅原さん一家で利用しているアプリ、構成はとてもシンプルです。シンプルな構成だからこそ、そこには菅原さんのこだわりがたっぷり詰まったものになっています。例えば、ご両親が行うアクションを、アプリごとに明確にすることです。こども成長記録はレコードを見るもの、あそびレポートは写真をみてコメントするもの、安否確認はボタンを押して回答するもの。様々な行動を期待するのではなく、行動がシンプルになるようにしました。メンションやいいね、等の機能もあえて使っていません。
その他の工夫についても、次のように語ってくださいました。
「あそびレポートアプリの“出来事”を記入する欄を、“文字列複数行”(※4)にするのではなく“文字列一行”にしているのも工夫の一つです。たくさん文字を書かなくて良い印象を与え、一言でも気軽に投稿できるように。結果として、あそびレポート投稿の増加につながります。妹と私も、“子ども自慢バトル”をしたいわけではありません。誰のための情報共有なのかを考え、入力も手間にならない工夫をしました。また、両親が慣れたスタイルを崩さないように、リリース時から大きな機能追加をあえて行っていないこともこだわりの一つですね。」
家庭料理のような温かみのある、私達の家族に合った情報共有を
家族でkintoneを使いはじめて3年ほどが経った菅原さん一家。お母様からは日常的にあそびレポートへコメントが入り、お父様はたとえ通知が飛んでいないタイミングであってもkintoneに日常的にログインしていることが監査ログからも確認できるそう。導入後の効果について次のように菅原さんは語ります。
「スマホをあまり使いこなせていなかった両親がコメントをくれたり、気になってkintoneを覗いたりしてくれていることがとてもうれしいです。歳を重ねるにつれてどんどん難しくなる新しい挑戦へのきっかけを作ることができました。と同時に、孫のことを知りたい、という気持ちは、すごくパワフルなモチベーションを生むんだ、ということにも気が付きました。
また、私自身も、両親に対しての情報共有のハードルが下がったという変化がありました。これまではとっておきの話題がくるまで連絡しない…なんて感じでしたが、今は日々の出来事を気軽に共有しています。
導入当初から、家庭料理のような温かみがあるkintoneをつくりたいと思っていました。家族みんなで試行錯誤したことで、私達の家族に合ったあたらしい情報共有の形が実現できています。すべてを効率化・システム化するのではなく、必要なところはシステムに人の手を入れていく。それは決して、悪いことではないと思います。」
最後に、菅原さんにとって家族とはどんな存在なのかを伺いました。
「いつでも気軽に当たり前に所属しているチーム、と言えるかなと思います。家族でkintoneをつかってみたことで、私達は肩肘はらずにゆるさを備えながらつながる、そんなチームだと感じるようになりました。そして今後もずっとゆるくつながりつづけるチームだと思っていますし、そのためにも今日も家族kintoneを更新する、そんな感じです。
もしこの記事をきっかけに、ツール問わず家族での情報共有のあり方について考えてみたいという方がいらっしゃったら、私と同じように肩肘はらずに挑戦してみてほしいと思います。」
家族での情報共有の土台になると同時に、お子さんや家族のかけがえのない一瞬一瞬を蓄積し成長の記録をたどることができる菅原さん一家のkintone。他のツール活用とはひと味違う、家族のコミュニケーションの形を知ることができました。菅原さん、ありがとうございました!