追想の先に見えたもの/木村夏樹覚書2021.12
アニバアイプロで追想の面影
毎年恒例のモバマスのアニバーサリーを記念したアイプロでは、アイドル全員がそれぞれ登場してコメントする演出がある。今回のアニバアイプロでの木村夏樹のコメントは上にある通り、これは昨年モバマスで行われた『追想公演』を踏まえたコメントだろう。
アイドルが演じる劇中劇『LIVEツアーカーニバル』は通称で公演とも呼ばれる。その公演に木村夏樹がメインキャストで登場すること自体が珍しい事件であり、その内容も木村夏樹のカッコつけたがる弱さと、多田李衣菜との関係を踏まえた、木村夏樹の人格の掘り下げでもあり、これもまた珍しい事件。木村夏樹をいつもとは違う別角度で見るような非常に印象深い公演だった。
アニバアイプロで昨年の公演を想起させるなんて、まさに〈追想〉で粋な計らいだ。だがさらに思うこともある。このアニバアイプロのアイドルたちのコメントは昨年からの一年間で何かしらモバマスで行われたイベントに出演していれば、それを踏まえているが、特に何もなければそれぞれの個性を活かしたコメントになる。いくら個性を生かしたコメントとは言えど一年間何もなかったのだな落胆する思いもあろう、それを思えば、昨年から今年にかけて木村夏樹には活躍があったことに、ありがたいと思わざるを得ない。来年のアニバアイプロはどうなろうか、活躍を願うしかない。
『ふたりでアイドルチャレンジ 目指せクールなミュージックビデオ』復刻で、だりなつに思うこと
ついに木村夏樹と多田李衣菜がメインとなる『ふたりでアイドルチャレンジ 目指せクールなミュージックビデオ』が復刻された。モバマスで2017年に開催されたこのイベントは、2013年の『アイドルセッション』以来のだりなつのイベントであり、デレステでは2016年に『Jet to the Future』でお互いに心を開いて再出発した二人だけに、改めてモバマスでもイベントを待望されていた。
その内容は期待に十分に応えるものだった。ミュージックビデオ作成のために、だりなつの二人がお互いを認め合い、高め合いながら、アイデアを出し合い、木村夏樹がまとめ上げながらも、多田李衣菜が推進力となる。二人の関係性がよく現れながら、新境地を拓く、挑戦する。まさに「ふたりでアイドルチャレンジ」。
そうだった。2017年の時点で、だりなつの二人はこれほどまでに、お互いを認め合い高め合い、そして挑戦していた。今いちど思い起こして、その関係性の深さに胸が熱くなる。
そうだというのに、それから3年後の2020年には7th大阪公演で、だりなつの二人が積み上げてきたものを無下にするデレアニのように、多田李衣菜にとっては木村夏樹よりも前川みくとの関係性が大事かのように、木村夏樹はアスタリスクの添え物のように扱われ、木村夏樹は感動ポルノに貶められたのだ。何がどうして3年でこうなった。
今年になってようやく『ハーモニクス』イベントを通して、だりなつの二人はまた向き合って関係は修復されたが、だりなつはアイチャレから3年で関係がおかしくなったことを思うと、また3年後おかしくなるのではないかと、どうせまた多田李衣菜は前川みくとの関係のほうが大事だと何かすんねんやろと。だりなつは3年後どうなっていることだろうか。
木村夏樹は多田李衣菜がいなければ、ここまで来れなかったが、多田李衣菜は木村夏樹がいなければどうなるだろうか。
勝負に出た2021年、その結果はどうだったか
ただでさえ一年を振り返る年の瀬だというのに、アニバアイプロで『追想公演』を思い返され、さらにふたりでアイチャレ復刻もあったならば、どうしたって木村夏樹の過去を振り返るしかない。
今年は本当にいろんな事があった。まずは何と言っても楽曲とライブの充実だ。ミリシタとのコラボで『ハーモニクス』、ゾンサガとのコラボで『徒花ネクロマンシー』、そしてまさかの10周年記念曲『EVERLASTING』と、今年に入って3曲も新曲を歌えた。そのうえリスアニと10th千葉幕張で二度も安野希世乃さんが木村夏樹としてライブに出演して魂の込もった歌声を聞かせてくれたなんて夢のような話だ。
そしてまた先述したようにコラボも盛んだったが、さらに今年は枠を超えた活躍も多かった。TSUTAYAとの他社コラボに木村夏樹が抜擢されたことが意外性では一番だろう。さらにはポプマスにも『ハーモニクス』コラボの熱冷めやらぬままに、多田李衣菜とジュリアと一緒にロックつながりで実装なんて嬉しさ余って状況が飲み込めないほどだった。その他にも、スシローその他イベントでも意外な出番も見逃せない。
そして『ハーモニクス』イベントはじめ、つくづく木村夏樹は多田李衣菜と深く、それでいて変化し続ける、他にない関係性なのだと思うこともしきりだった。その他にも炎陣などこれまでの関係性を大事にする様子も随所で見られた。まったく細かいネタを拾えばきりがない程だ。
1月の覚書で、何の気なしに書いた“期待と不安が入り交じる2021年は、木村夏樹にとって勝負の年になるだろう。”という言葉そのままに、まさに2021年は木村夏樹にとって勝負の年だった。これほど様々な場面に登場して挑戦した年はなかった。
そしてまた、よくよく考えてみると、2021年の木村夏樹の活躍は間違いなく、2020年からの連続性の上にある。
2020年に、7th大阪公演で木村夏樹はろくでもない扱いをされた。その原因とも言うべき木村夏樹への理解の欠如を埋めるかのように、2020年後半から木村夏樹の掘り下げが深まった。デレステのストコミュ第62話で、木村夏樹が思う強さを垣間見せ、モバマスでは『追想公演』で弱さが掘り下げられた。こうした掘り下げで、分かりにくい木村夏樹の内面的な強さや弱さやが伺えるようになった。
そしてさらに今年に入って『ハーモニクス』コミュでは多田李衣菜との関係性を見直し、服部瞳子のスシローコミュでは木村夏樹らしさのまま人間関係を広げ、ついには『EVERLASTING』コミュでは楽しい記憶ばかりじゃないと、過去を振り返ってネガティブなことも口にできるほど成長した姿を見せた。
こうして2020年から2021にかけて木村夏樹の活動は、人格が掘り下げられ、人間関係が広がり深まった。そして木村夏樹のみならずデレステ全体でも集大成とも言うべきデレマス10周年の、その日10thライブ千葉幕張において木村夏樹はどうであったかと言えば、大切な過去の歩みを振り返るべき時に蔑ろにして、逃れるべき過去の呪縛に囚われていた。
いったいこれまで掘り下げてきた木村夏樹の人格は、これまで広げて深めてきた人間関係は、何だったのか。何かが致命的にズレている。
だからこう言うしかない2021年の木村夏樹は勝負には出たが、その結果はここぞという時に全く活きていなかった。もはやどうしようもない結果を次につなげることはできるだろうか、何かが致命的にズレているままで、できるのか。
編集後記
過去を思い起こさせるトピックが多かった今月の木村夏樹だが、その他にも、シンデレラガールズ劇場では雪合戦で異様に薄着な姿を晒す炎陣の一人として、デレぽではバイク関係で続いている原田美世の関係など、なんだかんだで、いつもの木村夏樹らしくもある姿を見せてくれた。
では来月、いや来年はどうなるだろうか。今年は木村夏樹にとって勝負の年だったが、来年はデレマスそのものが勝負の年になりそうだ。
2022年には、デレマスのアイドル全員が登場するアニメの公開予定。さらに例年通りならばシンデレラガール総選挙とボイスオーディション開催時期の4月に、10thライブの追加公演が予定され、そのうえ出演者も完全シークレットという、現時点でも並々ならぬ熱の入れようがわかる。
どうにも2022年は何となくではあるが、いつになくデレマスというコンテンツ全体に及ぶ、大きな思惑を感じずにはいられない。
もしもデレマスというコンテンツ全体に及ぶパラダイムシフトがあるとしたら、その中で木村夏樹はどうなるだろうか、今年2021年にこれだけ色々あったのだから、もういいだろうとばかりにほっとかれるのではないか。
今月はいつも以上に過去を振り返って、今年の勝負と挑戦、さらに今年につながるこれまでに、想いを馳せた。
ではその先に見えたものはなにか、何か恐ろしく不安なものが見えた。
来年はプロデューサーである自分自身にとって、プロデューサーでいられるか勝負の年になるかもしれない。
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