猛き風にのせて/木村夏樹の覚え書き/2023.11
『無限L∞PだLOVE♡』CD発売
デレステ8周年記念曲であり、木村夏樹が歌唱メンバーの一人でもある『無限L∞PだLOVE♡』のCDが11月22日に発売された。そしてCDが同時期に発売された『悠久星涼』と『Night Time Wander』と併せて、記念番組『もっと!デレステ NIGHT』も配信された。
『無限L∞PだLOVE♡』のCDには歌唱メンバーごとのソロ・リミックスも収録されている。二宮飛鳥が歌うとキメッキメにカッコよく、ナターリアが歌うと元気が弾けんばかりで、辻野あかりが歌うとあざといほどキュートで、こんなにもラブやハートがあふれる個性的な楽曲でも、歌い手によってこれほど違いが生まれるものかと驚いた。
そして木村夏樹の歌唱は、ラブリーな楽曲であっても媚びることのない挑発的ですらあるカッコよさ、それでいて歌声は真っ直ぐに伸びやかに高らかに響いている。この歌声は安野希世乃さんだからこそだ、つくづく木村夏樹の声がこの方で良かったと思う。
そしてまた『もっと!デレステ NIGHT』でもソロ・リミックス収録の裏話が語られていた。安野希世乃さんの歌唱を指して、梅澤めぐさんがライブ感と評していたが、まったくその通りだと頷いてしまった。ソロ・リミックスのそれぞれのテイストが絶妙というのも全く同意。
安野希世乃さんも『SoL』で歌唱することが決まっていたから、イメージしながら収録して、ライブ本番も心から楽しんで歌えたとも語っていた。楽曲そのものが木村夏樹としては異例な可愛さ、だからこそアイドルとして成長できたようで意義深く、そのうえ安野希世乃さんのモチベーションも高かったというのだから、木村夏樹にとって本当に奇跡のような巡り合わせの一曲だったのだと改めて思う。
その他にも番組内容はバラエティ豊かで、新田ひよりさんがこれほどワチャワチャした人とは知らずにびっくりしたり、やっぱり梅澤めぐさんはあかりんごそのものだと思ったり、短い時間ながらも楽しませてもらった。ガイコツマイクの木村夏樹のスタンプ欲しかったなあしかし。
デレマスにとって12周年は通過点か
2023年11月28日にアイドルマスターシンデレラガールズは12周年を迎えた。シンデレラをモチーフにするこのコンテンツにおいては、12時の鐘に重なる12周年は大きな意味を持つものだと思っていたが、デレステでも大掛かりなイベントもなく、声優さんたちによる記念配信もない。
それでも12周年を記念して、モバマスのアイテムやデザインフレームをデレステで再現するという心憎いサプライズがあった。自分の観測範囲でもモバマスからの古参兵たちが老人会が大盛り上がりしていた。
とは言えどもだ、モバマスが存在していた昨年までの周年イベントやキャンペーンと比べると、今年はささやかな物だという気持ちは拭えない。
モバマスの周年イベントと言えば何と言ってもアニバアイプロ、ただでさえアイドル一人ひとりに向き合う貴重な機会のアイプロが、アニバーサリーという思い出を振り返る情緒たっぷりで演出。さらには曲がりなりにも全アイドルが登場する演出があることから、全てのプロデューサーに向けて公式供給が行われる。この競争が強いられるデレマスというコンテンツにおいては珍しい公平性と温情のあるイベントだった。だからどうしても今年の周年には寂しさを覚える、記念すべき12周年ということを思うとなおさらだ。
しかし考えてもみると、シンデレラをモチーフにするなら12周年にことさら意味を持たせても仕方ないのかもしれない、12時の鐘を待ちわびるシンデレラはいるはずがないのだから。
それでも思うことがないわけではない。
デレステ8周年曲が発売される月に、デレマスそのものが12周年を迎えるのだから何かあってもよかったんじゃないか、アニバーサリーを迎えてもこれといって供給もないアイドルもいることを考えると木村夏樹は恵まれているんじゃないか、そもそも12周年なんだから記念曲を作っても良かったんじゃ、いや10周年曲の『EVERLASTING』があんな事になったことを思えばなくてもよかったんじゃないか、それにしても木村夏樹はよっぽどデレマスの節目や周年に縁があるなぁ、などなど思うことはしきりだ。
ただ今の自分ははありのままに受け入れる気持ちにある。12周年を迎えて特別に意気込むことのないデレマスの境地に重なるものがあるようだ。それは余裕か、それとも熱が冷めているのか、それが良いことなのか悪いことなのかさえも分からないが。
ふと『無限L∞PだLOVE♡』の歌詞を見直してみる。
アイドルとしてオンの時もあれば、アイドルではないオフの時もある。その違いさえもアヤフヤだが、それがいいと肯定しており、そのうえでアヤフヤであるからこそアイドルは自分も見失う、そのアイドルをプロデューサーが愛で真価を見出して導く、アイドルとプロデューサーの在り方を語っているようでもある。
愛することは孤独ではない巡るもの、愛は止まらない。愛は理屈ではないのだから、理屈抜きに愛することの意味を語っているようだ。
もう少し俯瞰的に見れば、裏も表もアヤフヤでどっちに向かっているのか分からない、自分を見失いがちなアイドルをプロデューサーが愛して見出して導くというのは、このデレマスというコンテンツそのものを歌っているようでもある。
方向性が迷子になりがちで、デレマス運営は何を考えているのか分からない。そう思うことはこのデレマスと長く付き合っていれば何度もあった。そのデレマスというコンテンツそのものをプロデューサーが愛して共に歩いていこうと言われているようだ。
プロデューサーをやめた自分は一体どこまで歩いていけるものやら分からない、ただ今はもう少しつきあってやるかなと思える気がする。
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