宮沢賢治 作 「祈り」水稲倒伏と苦しい経営
1927(昭和2)8月20日の水稲倒伏に関する作品群をご紹介しています。
本作「祈り」では、農家経営、所得、に関する懸念が描かれています。
借金して化学肥料を買って、苦しい経営をしている農家を見た体験が、のちの石灰工場時代の安価な石灰と自給有機肥料中心の施肥設計につながったのかもしれません。
(本文開始)
一〇八八
祈り
一九二七、八、二〇、
倒れた稲を追ひかけて
これからもまだ降るといふのか
一冬鉄道工夫に出たり
身を切るやうな利金を借りて
やうやく肥料もした稲を
まだくしゃくしゃに潰さなければならぬのか
電気会社が
ひなかも点すこのそらのいろ
田ごとにしめも張り亘し
かながらの幣さへたてゝ
稔りある秋を待つのに
無心に暗い雨ぐもよ
(本文終了)