宮沢賢治 作 「降る雨はふるし」 水稲倒伏被害の分析へ
「もうはたらくな」の最終版
1927(昭和2)年8月20日の、水稲の倒伏を描いた一連の作品のうち、「もうはたらくな」の系統としては最後に書かれた詩です。
諦めと次に向けた分析
代表作「もうはたらくな」の熱い感情にくらべて、冷たい諦めの気持ちが目立ちます。
また、被害の状況を冷静に分析して、翌年の肥料設計に活かそうという姿勢があらわれています。
PDCAサイクルでいえば、DoからCheckのステージに移行した感じです。
(本文開始)
降る雨はふるし
倒れる稲はたほれる
たとへ百分の一しかない蓋然が
いま眼の前にあらはれて
どういふ結果にならうとも
おれはどこへも遁げられない
……春にはのぞみの列とも見え
恋愛そのものとさへ考へられた
鼠いろしたその雲の群……
もうレーキなどほうり出して、
かういふ開花期に
続けて降った百ミリの雨が
どの設計をどう倒すか
眼を大きくして見てあるけ
たくさんのこわばった顔や
非難するはげしい眼に
保険をとっても辨償すると答へてあるけ
(本文終了)