台風15号静岡災害支援をふり返って
こんにちは。ディレクターの牧です。今回は、わたしが12月まで東京から通いながら関わっていた静岡災害支援🗻をふり返ってお伝えしたいと思います。
CWS Japanの価値観
CWS Japanが大切にしている価値観に「パートナーシップ(=協働)」と「ローカライゼーション(=地域の視点)」があります。先日の静岡災害支援では、これらが上手く調和し、やっと思い描いていた協働のカタチが実現できたように思っています。
大きな議論を呼んだ元首相の国葬を数日後に控えていた2022年9月23日、台風15号が発生し、翌日まで続いた豪雨によって、静岡市は市内だけでも3,800世帯超が床上浸水の被害を受け、2週間も断水が続いた地区がありました。
CWS Japanでは、新型コロナウィルス感染拡大以降ずっと中止していた国内外の出張も昨春から再開したことにより、やっと緊急災害支援にも出動することができるようになりました。発災直後、わたしはACTジャパン・フォーラム内で地元に拠点を置く教会・団体関係者を探し、連絡を取ることから始めました。ACTジャパン・フォーラムとは、国内30超のキリスト教派・教団・団体が加盟するNCC日本キリスト教協議会とCWS Japanが共同事務局を務める災害人道支援ネットワークです。
東京から新幹線に乗れば、わずか1時間程度で行ける静岡ですが、その近さがあったせいか、それまで災害に備えるためのネットワーキングが後回しになっていた地域でした。頼れる団体・個人もいない、そんな近いけれど未踏の地で協力して下さるパートナーや支援拠点を探すことは、災害が発生する度に苦労していることです。
遠距離で地元関係者を探しながらも支援に入るために必要な自治会・町会単位での被災状況の情報が入手できず、時間の経過に焦りが募っていきました。そんな中、日頃から交流がある牧師に相談したところ、やっと日本バプテスト連盟静岡キリスト教会の松坂牧師を紹介され、松坂牧師と親交のある日本聖公会・静岡YWCAメンバーの藤原玲子さんとつながることができご一緒に活動を開始することができました。
見えない被災者にとどき隊
このようにして、最初はたったの3人で「とどき隊」というチーム名で情報収集から始まりましたが、支援が届いていない人たちにわたしたちが支援をお届けするまでに大変長い道のりがありました。
特に今回の災害では、公設避難所や仮設住宅が設置されず、ほとんどの被災者が在宅避難者となりました。水害に遭ったはずの市街地では、水が引くと、一体どこがどれだけ水没していたのかも見分けがつかなくなりました。停電や断水が続いていた頃は毎日のように被害状況を報道していたメディアも、一旦インフラが復旧されると、やがてニュースで取り上げなくなっていきました。
それでも、わたしたちが支援対象者としていた、単身高齢者や生活困窮者世帯では生活が元に戻った訳ではありません。なかには住宅が床上1m近く浸水し、一切の家財道具が水没し、処分を迫られた高齢者宅もありました。このような被災者世帯は、災害によって二重三重の苦難を強いられることになりますが、行政による公的支援にも限界があり、これらの要支援者が自身で必要な支援情報にアクセスし、手続きすることが難しい上に、「自分だけじゃないから」「自分よりもっと大変な人たちはいるから」と被災者特有の謙虚さ・遠慮が自ら支援を求めにくくさせていき、見えなくなってしまう被災者の多さを知るのに相当な時間がかかってしまいました。
NPO法人POPOLOとの出会い
災害は地域を襲い、災害が発生すると地域力がその後の復興や生活再建の速さに影響します。支援を受けるにも地域単位の対応になりますし、行政からの情報はインターネットからも入手できるものの、全て自治会を通じて周知されます。このような有事の際には個人情報保護が支援の制約にもなり、外部支援者にとって被災者の特定は自治会長や日頃から地域住民と交流がある社会福祉協議会生活支援コーディネーターやケアマネージャーのような方々と早くつながれることが重要です。しかし、今回の災害支援では、このような方々につながろうとしましたが、そこにたどり着くまでに様々な障壁がありました。
そのような状況の中で、生活困窮者支援のフードバンクを運営していたNPO法人POPOLOとの協働は突破口になりました。地元出身の若者たちが長い間地域で活動してきた実績と地元関係機関から得られた信頼に助けられ、社会福祉協議会が運営するボランティアセンターからも協力を得て、家電・生活用品配布支援が始まりました。それまで面識がない、よそ者のわたしの話を信じてくれた事務局長にも感謝していますが、またPOPOLOの活動を日頃から支える関係者の中にACTフォーラムにつながる地元の教会関係者がいて下さったことに大いに助けられたとも考えています。
さまざまな紆余曲折を経て、10月~12月までの間に単身高齢者や生活困窮する被災者32世帯全てに対面でヒアリングを行い、家電や生活物資を直接お届けするという、大変きめ細かい活動ができました。
人道支援拠点としての教会
こうして、災害があったからこそ出会うことができた人々、生まれたパートナーシップは今後も続きます。二度と起きて欲しくはありませんが、再び、静岡で災害が発生したら、また同じチームが集まって活動をともにできることを願います。そんな時に地元の教会が人道支援の拠点として用いられるようになっていけば、それは地域に立つ日本の教会が新たなフェーズを迎えることができるように思います。
最後に、なかなか地域コミュニティに入るのに苦労していたわたしたちに手を差し伸べてくれたピースボート災害支援センター(PBV)にも感謝を述べたいと思います。
(文:ディレクター:牧 由希子)
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