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個人的に多大な影響を受けた/強烈な印象を残したバンド紹介 #6 Skylark
※個人ブログに掲載した記事を一部加筆修正して転載。
エクストリームメタルをプレイしている身なんでどうしてもそういうバンドからの影響が強いが、実は20年程前は普通にメロディックパワーメタルとかを聴いていた時期がある。RhapsodyとかSonata Arcticaとかを愛聴していたのをよく覚えているが、それとは別に特に影響は受けていないが色々な意味で強烈な印象を残したバンドを紹介したい。
Skylark。決してファミレスではない。イタリアから1994年に登場したメロディックスピードメタルバンドだ。現在では下火だが、当時この手のメタルは「メロスピ」とか「クサメタル」とか呼ばれておりコアなマニアに大人気だった。今じゃとても考えられないが日本盤だけで1万枚を超える売り上げを達成したバンドも普通にいたようだが、Skylarkは所謂「B級」に位置するバンドだ。
チープなプロダクション、シンセ頼りでリフの無いギター(ベースだけは無駄に巧かった)、指一本で奏でられる楽器の特性を完全に無視したピアノ、単調な2ビートのドラムに所謂「ヘナチョコ」とよく形容されていた線の細い半泣きハイトーンヴォーカル。曲が無駄に長い上にアレンジも実にダサい。しかしそれを補って余りあるメロディーの臭さ、哀愁に当時のメタルファンは青い涙を流しながら悶絶していた。個人的にはDark MoorとかHeavenlyとかのほうが遥かに好きだったんだが、Skylarkを挙げたのには理由がある。彼等を語る上で欠かせないのが「SNSの闇」だ。
そう、Skylarkを熱心に追いかけていたのは本当にバンドを愛している純粋なファンではなかった。そのチープさ、ヘッポコさを半ばネタとして消費する底意地の悪い悪辣なファンだった。奇しくもネトウヨの前身として悪名高い名無しの掲示板が全盛期だったあの時代、Skylarkはネタとして祭り上げられ嘲笑されながらの支持を集めていく。
それでも人気そのものはあり輸入盤がヒットを飛ばし、2003年には奇跡とも言える来日公演まで果たしてしまう。しかし所詮は悪辣な似非ファン連中。やがて飽きて去っていき、バンドとしてもフロントマンが交代。後任はあろう事かモデル出身でルックスは滅茶苦茶良いのに歌が滅茶苦茶下手糞な女性シンガーだった。
バンド自体低迷を迎え、やがて西新宿で日本人スタッフにブチ切れるメンバーの姿が確認される。自分達が本当に愛されてはおらずネタとして馬鹿にされていたという事実に気付いてしまったらしく、2007年にリリースされた名目上のラストアルバム『Divine Gates part III -The Last Gate-』の歌詞は「自分達の存在なんか無かったほうが良かったんだ!」みたいな極めて自虐的な内容だった…。
しかしそれでも来日公演の夢を忘れる事は出来なかったのか、その後も細々と活動しており全然売れないにも関わらずアルバムを数枚リリースしていた。パワーメタルブームの終焉もあるが、単純にクオリティーが全然向上せず最後までアマチュアレベルなままだったというのが影響し当時の勢いは見る影も無い。
ただそれでも音楽をやっている身としては「誰にも聴かれずひっそりと消えるよりネタでもいいんで聴かれたい」って気持ちになってしまうのも確かだ。そのショボさ故にネタとして愛され、やってる側もそれを受け入れファンサービスを徹底した結果本当に愛される存在になる。かつてセガサターンで発売された伝説のクソゲー『デスクリムゾン』のようにありたい所だ。