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1年で7社63億円のM&Aと出資をした2024年を振り返る

この記事は クラウドワークスグループ Advent Calendar 2024 シリーズ1の25日目の記事です。

クラウドワークスの社長をしています吉田です。2024年のクラウドワークスを振り返ると、機関投資家の皆さまから大きな反響があったのは何と言っても「1年の間に7社63億円のM&Aと出資をした」という実績についてだったと思います。「クラウドワークスの経営は明確に変化したね」と言われたり、経営者の友人や知人からもこの点について聞かれることが増えました。

7社の内訳は、完全子会社4社、資本業務提携2社(うち持分法適用会社1社)、事業譲渡1社です。また、現在のところ過去3年間にM&Aをした5社合わせて合計12社についてグループイン後も順調に成長しており、一切の減損もせずに2024年を終えることができそうです。

そのような実績の中で、投資家や友人から
「M&A未経験の状態から、どのようにしてM&Aのケイパビリティ(能力)を身につけて来たのか?」
という質問があったので、過去の経緯も含めてまとめてみます。

■背景1:失敗したM&Aの経験(FY18-20)
※FY (Fiscal Year):事業の会計年度を表す略語

【出来事】
2017年11月:株式会社電縁の子会社化(9.6億円)
2020年6月:株式会社電縁をSBIテクノロジー株式会社へ譲渡(13.3億円)

我々も最初からM&Aに成功していたわけではなく、むしろ解像度が低いまま買収をして手痛い思いをしたことがあります。2017年にM&Aをした電縁社は我々が取引実績の無い日本の大企業のシステム開発を請け負っていたのでシナジーを出せるのではないか、と思っていましたが、グループイン後に連携してみるとリモートワーク一切禁止(オンサイトのみ)、フリーランス禁止の取引ばかりで全くシナジーを出すことが出来ず、それゆえ経営に関与しても付加価値が出せないため単に売上の足し算以上の効果が出せませんでした。

そこから
1.単に売上の足し算をしても対象会社を自分たちの手で成長させられなければ同じグループ会社である意味は無いし、
2.WACC(加重平均資本コストと呼ばれる資金調達コストにかかる利息のような概念)を学べば学ぶほど成長しない企業の売上の足し算だと必ず行き詰まる

ことが理解できるようになりました。

ちなみに余談ですが9.6億円で子会社化した会社を13.3億円で株式譲渡して、約4.7億円の特別利益を出しました。赤字で上場した我々としては過去最高の利益を創出し、転んでもただでは起きないクラウドワークスという結末になりました。

■学び1:M&Aは”Who am I?”が極めて重要(FY20-24)

【出来事】
2020年6月:電縁の事業譲渡前に電縁社内にあったSaaSの新規事業のみCW本体へ移管し、サービス名を「クラウドログ」に変更して運営開始、当時のARR 0.65億円
2024年9月:クラウドログARR 6.4億円突破(4年で10倍に成長!)

電縁社のターンアラウンド(事業の再成長)に失敗する中でなぜ失敗したのか?を考えると、要は”Who am I?”、つまり私は誰?ということがまるで分かってないのでリモート禁止・フリーランス禁止の会社をグループインしている、という学びに行き着きました。(今考えるとめちゃくちゃ恥ずかしいですが、相手がいて初めて気づくこともあると理解ください苦笑)

“Who am I?” 当時の我々は、
1.プロダクト:Crowdworks.jpという仕事マッチングのプラットフォーム
2.BtoB営業:クライアントを直接スタッフがサポートして人材紹介するエージェント

の2軸で成長していましたので、電縁の中にある当時ARR 0.65億円のSaaSプロダクトをBtoB営業で売るなら成長させられるのではないか、と考えてその事業のみCW本体へ事業移管して取り組んだところ、4年で10倍の成長を遂げ、ARR 6.4億円を突破しています。

その経験を基に、”Who am I?”を習熟させていったのが、
「 CW Growth Driver:クラウドワークス 5つの経営アセット」になります。IR資料でも公開していますのでぜひご覧ください。

新規投資家向け資料(事業計画及び成長可能性資料に関する資料)
P10 CW Growth Driver:クラウドワークス 5つの経営アセット

特に年間約80万人、7万社が登録するプラットフォームのデータベースを使ったシナジーは毎回劇的に効果を上げていまして、ここが鍵となってクラウドワークスグループに入ることを決めていただけることも多いです。

我々の経営アセットを使って成長させる仮説が立った事業や企業をM&Aし、そのM&Aの成功・失敗をまとめてさらに”Who am I?”の解像度を上げていく、ということを繰り返したことにより、直近4年合計12社を全て成長させることが出来ていると考えています。

■背景2:M&Aに知見のある専門人材が採用できない(FY18-21)

電縁の経験をする中で手弁当でM&Aをしていくのは限界があるということで、M&Aの専門人材を採用する必要に迫られていたわけですが、当時の売上は80億円程度で成長も横ばい、営業利益も赤字か年間1億円未満で推移しており、そんな専門人材が来たいと思うような会社では全く無かったと思います。

■学び2:他人を口説く前に、まず自分を磨け(FY21-22)

先日の東証が出した「グロース市場における今後の対応」資料から引用すれば、

「成長できていない小規模な会社から機関投資家に投資してもらいたいという話があるが、そもそも機関投資家側に投資ニーズがないことを理解すべき。まずは自社の時価総額が継続的に低い理由をしっかりと分析し、改善に向けた取組みを進めるべき。」

東京証券取引所 「グロース市場における今後の対応」
P6 「現状の課題:上場後の経営者の意識」

まさにこのような状況でした。

要はM&Aやりたいとか言ってる以前に自分を改善しろ、という話ですね。売上成長鈍化、営業利益も出ていないところからどうやって改善したか、は2年前に書いてますのでこちらをご覧ください。

生産性向上ポリシーを中心とした「経営の体系化」と「事業の再現性」を創出した結果としてFY21において営業利益5.7億円を出したことを受けて、みずほ証券IBのクラウドワークス担当だった相場トーマスがそのクラウドワークスの変化に驚き、いつか事業会社でチャレンジしたかった、ということで2021年11月(FY22)に入社してくれました。

その後FY22で売上100億円、営業利益(Non-GAAP)10億円を達成し成長軌道へ乗せることができました。

自分を磨けば、他人も口説ける、ということですね!笑

執行役員 兼 CFO 相場トーマス祐介

■背景3:M&Aにおいて山積みの疑問(FY22-24)

  • どうやって案件を開拓するのか?

  • 仲介から良い案件はどうやったら紹介してもらえるのか?

  • 仲介無しの直接取引はどうすれば探せるのか?

  • 仲介のメリット・デメリットは?

  • 売り主が強気の価格で開きがある場合どうするのか?

  • どうやって独占案件にするのか?

  • 一次入札で他社が高値を提示している、どうやって残るのか?

  • どうやって価格交渉して合意するのか?

  • どうやって監査法人と事業計画を合意するのか?

  • どうやってPMIするのか?

  • DDで想定しきれていない事業や組織の状態があった場合どうするのか?などなど・・・

■学び3:There is no magic solution!(FY22-24)

上記については一つ一つに私としての答えはあるのですが、いずれにせよ言えることは「There is no magic solution!」(≒ 魔法は無い!一つ一つ積み上げていくしか無い!)であり、M&Aは現在の自分の経営能力が成果にそのまま現れる、ということです。自分の経営能力がある部分においてはグループインしても再現性のある成果が出るし、経営能力が無い部分は後日必ず手痛い目を見ながら新しく学ぶ必要が出てきます。

M&Aというのは、「クロージングまでのあらゆるプロセス」と「グループイン後の経営」のあらゆる指標においてポリシーを定めて仮説を持ち、実行して検証し、改善を積み重ねていくものなのだなと実感しています。

※社内資料より抜粋
新規投資家向け資料(事業計画及び成長可能性資料に関する資料)
P17 経営ポリシー:経営ノウハウをポリシー化、グループ全体に拡張

グループイン後にも以下のような形で全140項目のバリューアップ手段の仮説を持ち、一つ一つやっていくことで生産性改善し、最初の30日間で新たな利益創出からの再投資原資が生まれますのでグループイン後に多くの経営陣に喜んでもらえることが多いです!

CW Growth Driver  :実行メニュー40項目 実行期限DAY30/90
グループインポリシー :実行メニュー100項目
実行期限DAY30/60/90
■バリューアップの例
1. 年間約80万人、7万社が登録する国内最大級のプラットフォーム
・クライアントDB提供
・ワーカーDB提供
・ワーカーパスアップ
・クライアントパスアップ
2. プラットフォームモデルとエージェントモデルを両立
・.jpアセットの活用
・高単価事業の導入
・稼働中ワーカーの単価向上
・認定ワーカー制度導入
など・・・

(※社内資料から抜粋)

また、コーポレートにおける生産性向上も自社で培ってきたノウハウが豊富にあり、特に債権自主回収率を上げることや貸倒率の低減はそのまま売上総利益の増加に繋がりますので、これも大変喜んでもらえます。

新規投資家向け資料(事業計画及び成長可能性資料に関する資料)
P16 . 生産性向上文化:コーポレート部門における生産性向上

まとめますと、
FY2020-2022:生産性向上3か年計画達成、売上100億 営業利益10億実現
※営業利益はNon-GAAP
FY2023:M&A体制拡充に着手
FY2024:CW Growth Driverを軸に連続的M&A体制を確立、2024年1年間で7社63億円のM&Aと投資
となります。

そして、先日の株主総会を持って創業取締役CTOの野村が退任しました。野村、13年間一緒に走ってくれてありがとう!野村との出会いに感謝しています。今後は農業を手掛けてみるとのこと、新しい挑戦楽しみにしています!

最後は先日のクラウドワークス初のアルムナイ(&野村お疲れさま)イベントのダイジェスト動画を。感想としては業績が良いとみんなも喜んでくれるし、会社が評価されることはそこで働いてくれていた皆さんの人生の価値づけにもなるんだなと実感しました!
(今回のアルムナイイベントは初回ということで人数を限定して開催したので、今後は規模を拡大してアルムナイ同士のネットワークを広げていきたいと考えています。ex-Crowdworksの皆さんよろしくお願いします!)

そして、ここからいよいよ名実共に新しい経営陣での新生クラウドワークスになります。皆さま、良いお年をお迎えください!

ミッション「個のためのインフラになる」実現のためにもこれからもめちゃくちゃ伸ばすつもりですので来年もよろしくお願いします!

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