グリーンカード(永住権)を取得する5つの方法
グリーンカードを申請する方法(カテゴリー)
アメリカでの永住権を申請する方法は大きく分けて5つあると言われています。
1.家族関係(配偶者や親子関係)を通して申請する方法
2.永住権の抽選プログラムに応募する方法
3.自分の才能、能力を通じて申請する方法
4.アメリカの雇用先(スポンサー)を通じて申請する方法
5.アメリカへ投資をして申請をする方法
このうち、3〜5はEmployment-Based Immigration(雇用に基づく移民)というカテゴリーに分類されており、このカテゴリーはさらに5つに細分化されています。
家族関係(配偶者や親子関係)を通して申請する方法
メジャーなのは国際結婚を通じて配偶者になることだと思いますが、その他に両親・兄弟姉妹・子供がアメリカ国籍をもっている場合も申請可能です。家族がスポンサーになる場合は、21歳以上のアメリカ市民である必要があるため、子供がアメリカ生まれでアメリカ国籍を取得していても、それをもとに両親が永住権を申請したい場合は子供が21歳になるのを待つ必要がありそうです。それ以上の詳しい内容についてはここでは割愛します。
永住権の抽選プログラムに応募する方法
毎年、10月から約1ヶ月間、永住権抽選の応募期間となり、翌年の5月くらいに抽選結果が分かります。移民分散化プログラム(Diversity Immigrants Visa Program)、通常DVプログラムと呼ばれるもので、過去に移民ビザ発給の少ない国を限定して永住権を発行するものです。コンピューターによるランダムな抽選の結果、毎年合計約50,000件の永住権が発行されているそうですが、日本は移民になる人が多くない国の1つなので、それなりの割合で当選できると聞いています。もちろん英語での応募となるので、応募を代わりにしてくれる代行会社がいっぱいあるようですが、応募手続きそのものはそこまで複雑ではないため自力でやることも十分可能です。また、結婚していれば夫婦それぞれが応募できるため当選確率も2倍にあがります。私も2019年に自分で申請を行ってみましたが普通にはずれました笑
雇用に基づく移民申請方法
多くの研究者、または医療者はこの方法での永住権申請になると思います。カテゴリーはEB-1、EB-2、EB-3、EB-4、EB-5と5つに別れますが、関係があるのはEB-1、EB-2の2つがほとんどになると思います。このカテゴリーではほとんどの場合、雇用者にスポンサーになってもらう必要がありますが、EB-1の一部(EB-1A)とEB-2のNIW(National Interest Waiver)、そしてEB-5だとスポンサーがいらないため、EB-2のNIWで申請する研究者・医療者は割と多いと思います。
Employment-Based Immigration: First Preference EB-1
まずはEB-1カテゴリーです。これはさらに以下の3つのカテゴリーに分類されます。
1.EB-1A(卓越した能力の持ち主):科学、芸術、教育、ビジネス、スポーツの分野において、国内外で並外れた能力を継続的に評価されている人
2.EB-1B(極めて優秀な教授や研究者):特定の学術分野において優れた業績が国際的に認知されていること。その学術分野において、少なくとも3年間の教育、または研究の経験があること。大学、高等教育機関、民間企業において、終身雇用の教職員かまたは同等の研究職を目指すためにアメリカに入国する人
3.EB-1C(特定の多国籍企業の管理職や重役):申請する3年前までに1年間以上を、その企業のアメリカ外の国で雇用されている必要があり、今回、管理職や重役として雇用予定がある人
ということで、研究職や医療者に関係あるのはEB-1のAかBになります。EB-1Aで申請する場合は、雇用主にスポンサーになってもらう必要がなくなりますが、下記に示す10個の項目のうち少なくとも3つを証明する必要があります。
国内または国際的にそこまで認知度が高くなくても優秀賞の受賞や表彰をされていること
会員に優れた業績を要求する当該分野の団体に所属していること
専門誌、主要業界誌、その他主要メディアであなたに関する記事が掲載されていること
個人またはパネルで、他人の作品・業績を審査するよう依頼されたことがあること
科学、学術、芸術、スポーツ、ビジネス関連分野において、あなたが独創的で重要な貢献をしたこと
専門誌、主要業界誌、その他主要メディアにおいて学術論文を執筆したことがあること
芸術的な展覧会やショーケースに作品が展示されたことがあること
著名な組織において指導的または重要な役割を担っていること
その分野の他の人と比較して、高い給与または高額な報酬を得ていること
舞台芸術において商業的成功をしていること
それに比べるとEB-1Bは必要事項が下記の6項目のうち2つになります。そしてEB-1Bで申請する場合は、EB-1Aと違って雇用者にスポンサーになってもらう必要があります。
優れた業績に対する主要な賞や表彰を受けたことがあること
優れた業績を証明することを会員に義務付けている団体の会員であること
ある学術分野において申請者の業績について他者より専門誌に掲載されたことがあること
同じ学術分野または関連する学術分野の他者の業績について、審査員としてパネルまたは個人で参加したことがあること。
その分野における独創的な科学的または学術的研究の貢献していること
その分野における学術的な書籍や論文(国際的に流通している学術雑誌に掲載されたもの)の著者であること
業績の目安としては論文数が10報以上、論文の引用数が100以上、推薦状が5通以上と言われています。EB-1の強みは最初の審査(I-140)にpremium processing(特急審査)で申し込むと15日後までに結果が分かるという点でしょうか。EB-1AとEB-1Bの似ているところは、ともにLabor Certification(労働許可証)が必要ないところです。この労働許可証の発行は基本的にアメリカ人労働者を守る意味合いがあり、「アメリカ人に求人案内したけど該当者がいなかったので、その特殊技能をもった移民を雇います」という建前が必要なんですよね。そのため、Labor Certificationが必要なEB-2などでは、まずは雇用者が求人広告を一定期間出して該当者がでなかった、もしくは応募してきたアメリカ人が不適当だったことを労働省に報告してからやっと申請者の手続きを始めることができます。
違うところとしてはEB-1Aのほうが要求される業績のレベルが高いところ、EB-1Aは科学、学術、芸術、スポーツ、ビジネスと幅広い領域から応募できるが、EB-1Bは基本的に科学と学術的分野に限定されていること、EB-1Aは仕事の内定(job offer)を必要としないのに対し、EB-1Bは内定が必要となること、またEB-1Bでは専門分野で最低3年以上の経験が必要となりますが、EB-1Aではその限りではありません。
Employment-Based Immigration: Second Preference EB-2
EB-1同様に学術的にすぐれた才能を有する人に永住権を与えるのがEB-2になります。EB-2は2つに分かれており、1つ目が修士以上の学位をもつ専門職従事者、2つ目が際立った才能をもつ外国人になります。1つ目では修士だと取得後から5年の経験が必要で、学士や博士だと経験年数は問われません。2つ目は科学、芸術、ビジネスの分野で卓越した能力をもった人になりますが、下記のような条件を満たす必要があります。
申請者の卓越した能力に関連する大学、専門学校、その他の教育機関から学位、卒業証書、証明書、または同様の賞を授与されたことを示す公式の学歴証明書。
現在または過去の雇用主から、申請者のその職業における少なくとも10年間の経験を証明する書類
資格免許または職業証明書
申請者の卓越した能力による業務に対して、給与またはその他の報酬を受け取ったことを証明する書類
専門職団体の会員であること
同業者、政府機関、専門家または企業団体から、申請者の業績および業界または分野への多大な貢献が認められたこと。
その他、同等の資格証明も可。
EB-2の特徴はEB-1の欄でも述べたようにLabor Certification(労働許可証)を発行する必要があることになります。ただし、National Interest Waiver(NIW)を同時申請することでこの労働許可証の発行手続きの免除依頼(つまりスポンサーなしでの永住権申請)を申請することができます。このNIWが申請できる条件に明確なものはありませんが、EB-2の申請資格があること、申請者の能力がアメリカにとって有益であること、そして労働許可証の発行を免除することがアメリカにとっても有益であること、とあります。EB-2の業績としては論文が5報告以上、論文の引用数が20以上、そして推薦状が5通以上が目安と言われているので、これに該当する人はNIWも一緒に申請する価値が十分にあると考えます(というか弁護士よりそのように提案されると思います)。
Employment-Based Immigration: Third Preference EB-3
EB-3は技術職、専門職、とそれ以外に分かれます。技術職についてはその道で2年以上の実務経験、トレーニング、教育を受けていることが必要であり、アメリカでそれに該当する労働者を見つけることができない場合に限ります。専門職は国際バカロレア(IBプログラム)やそれと同等の学位を取得しており、その学位が就職条件になっている必要があります。この場合、学位は学士以上であれば大丈夫なようです。その他に分類される非熟練労働者は応募要件にある職務について2年以上の経験が要求され、アメリカで労働者を探せない職種になります。例えとして調理師、旅行業事務、工業事務員などがあるようです。
Employment-Based Immigration: Fourth Preference EB-4
EB-4は宗教関係や報道関係、政府関係の仕事の人が申請できる特殊枠のようです。具体的には下記のようなものがあるようです。
宗教関係者
特別な移民の子どもたち
特定の放送局員
G-4国際機関の特定の退職役員または職員、NATO-6文民職員とその家族
海外にいる特定の米国政府職員とその家族
米国軍隊のメンバー
パナマ運河会社または運河ゾーン政府職員
1978年1月9日現在、米国の州において医師免許を取得し開業している特定の医師
アフガニスタン人またはイラク人の翻訳者または通訳者
米国政府に雇用された、または米国政府のために雇用されたイラク人
米国政府または国際治安支援部隊(ISAF)に雇用されていたアフガニスタン人
Employment-Based Immigration: Fifth Preference EB-5
EB-5は投資家永住権プログラムと呼ばれているもので、EB-1AやEB-2 NIWと同じで雇用者にスポンサーになってもらう必要がないものです。というのも、アメリカで新規企業あるいは再建企業に100万ドル($1=135円換算で1億3000万円以上)の投資を行い、2年以内に10人のアメリカ人従業員を雇用するというのが条件だからです。
以上、長くなりましたがアメリカで永住権を取得する方法を列挙してみました。研究者に関係あるのは、EB-1、EB-2、もしくは永住権の抽選あたりになるでしょうか。次から私がどのようにして永住権を取得できたのか、かかった費用も含めて個人の経験について紹介していきたいと思います。
参考文献