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あなたを見ている時に思っていること

 痛々しい思いで見ている。体操の動画を見るあなた。一生懸命に取り組もうとしていることを奪っているのは私ではないか。
 昔のモテエピソードを語るあなた。昔の輝かしい思い出を受け入れられずにぐずってしまう私はきっと厄介だろう。
 そんなにも忘れられないなら,その世界にもう一度足を踏み入れるべきなのだ。私に入れ込んでいる場合ではない。体操の道にもう一度進むべきだ。「あの頃は良かった。」「あの頃はヤンチャだった。」と言う話を聞かされて私はどうすれば良いのだ。返事すら求めていないのかもしれないけれど。
 私は,高校の頃はクソほどつまらない人生だったのだ。自由がなく,友達もなく,学力もなく,夢もない。ないことづくしだったんだ。全てが手に入れられないものだった。あなたみたいになんでも手に入るような気持ちではなかった。そんなクソみたいな私は,夢を応援する歌を「バカみたいだ。」「綺麗事だ。」とバカにすることで自分をまもってきたんだ。聴いてきた歌も違ければ,生きてきたバックグラウンドも違う。そもそも生まれてきた時点で遥か遠くの存在だった。そんなあなたに触れて少し恋愛ソングは好きになったけれど,それ以外のキラキラソングはまだ少し苦手だ。夢などない。ただ生きていければ良い。そんな自分にその歌は似合わない。あなたにしか聞けない,努力してきた人間にしか響かない歌があることをあなたは知らない。そのまっすぐさに憧れたりムカついたりする。その歌を私も好きになるだろう。好きになってほしい。と言う顔で聞かせてくるのを私は痛々しい思いで,苦々しい思いで,見ている。

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