キャリアバラエティvol.48片山健太(けんちき)さんの場合
キャリアバラエティ、今回ご紹介するのは、片山健太さん。通称けんちきさん。けんちきさんは、長崎市内で古民家を改修した子どものたまり場 自然と暮らしの学校『てつなぐ』を運営しています。『てつなぐ』は大人も子どもも誰もが好きな時に来られる場。長崎の街の中で育ったけんちきさんが、自然の中での学びや子どもの教育に関わるようになったきっかけや思いについてお聞きしました。
【片山健太(けんちき)さんのキャリアバラエティ1/4】
けんちきさんは、長崎市内で飲食業を営むご両親のもとで生まれました。仕事に出るご両親と夜ごはんを一緒に食べるため、他の友達がまだ遊んでいる時間に家に帰らなければならなかったりと、他の家とは生活リズムが少し違うこともあって、他の友達が羨ましかったといいます。
中学校は、10クラスもあるマンモス校。勉強の成績は良かったけんちきさんですが、なんのために勉強するんだろう?学校に行かなくても勉強はできるんじゃないか?と学校に対する疑問をぼんやりと感じ始めていたそうです。
高校は地元の進学校へ。進学すると周りは優秀な人ばかりで、自信をなくした時期もありましたが、勉強以外で自分の持ち味を出そうと、変わったことや面白いことをやるキャラを作っていきました。
卒業後の進路は国立大学一択。映画「アルマゲドン」に憧れて、地球を救いたい!と環境科学部を志しますが、成績との兼ね合いで工学部へ進学。大学に入ることが目的だったけんちきさん、大学に入ったものの特にやりたいこともなく、コンパにアルバイトと遊んでばかりのくすぶる毎日だったそうです。
【片山健太(けんちき)さんのキャリアバラエティ2/4】
そんなけんちきさんに転機が訪れたのは3年生の頃。何か刺激を入れないと、、、とぼんやりと不安を抱えていた時に、友人から誘われ、「出会いがあるかも!」という好奇心もあって子どもたちのキャンプのサポートをするボランティアサークルに入ります。この体験がけんちきさんを大きく変えます。キャンプが初体験なのはもちろん、炊事や洗濯もほぼやったことがなかったけんちきさんには何もかもが新鮮。格好つけてはいられない泥臭いキャンプの暮らしでは、自分よりたくさんのことを知っている子どもたちから教わることがたくさんあったといいます。
けんちきさんは大学院に進学し、勉強の傍ら、サークル活動に邁進します。自然体験や子どもに関わる仕事がしたいなぁ、とぼんやりと考え始めたけんちきさんは、いろいろな人に会いに行ったり、話を聞いたりしていくうちに、自然体験教育を行うNPOの研修職員の募集を知ります。遠く離れた長野での仕事でしたが、大学院1年の12月に面接を受けて合格、大学院を休職して長野での生活に飛び込みます。
子どもの自主性を応援する取り組みや、仕事を任せてくれ、チャンスもたくさんある職場は本当に楽しく、天職と思えるほどでした。
【片山健太(けんちき)さんのキャリアバラエティ3/4】
大学院もこれ以上の休学は難しくなり、本腰を入れて今後のことを考え始めた矢先、職員のポジションを紹介されます。一緒にやろう!と仲間として認めてもらえたことが嬉しく、また自信にも繋がり、覚悟もできました。大学院を退学し、正式に職員として仕事を始めます。
しかし、責任者のポジションになるとさまざまな葛藤が生じます。子どものことを第一に考えて向き合っていきたくても、保護者への対応なども加わり、やりたかったこととの乖離ができ始めました。
体調を崩したこともあって、しばらく仕事を離れ長崎に戻ることにしたけんちきさんは、NPOの仕事をこのまま続けるのか?これからどうするのか?など内省、内観する時間を過ごします。長野での仕事を辞め、長崎に戻る決断を下します。東日本大震災など世の中の環境も大きく変化していた頃でもあり、やっぱり教育が大切だし、関わっていきたいと思っていた矢先、長崎市内の高校の求人を見つけます。自分の学生時代にはなんとなく「苦手」「嫌い」だった学校。学校現場を一度きちんと見てみよう!と長崎市内の高校で、サポートが必要な生徒への学習支援の仕事につきます。2年目からはキャリア支援も行うようになり、学校現場での生徒との関わりは4年間続けることになりました。
【片山健太(けんちき)さんのキャリアバラエティ4/4】
結婚などプライベートでの変化もあり、これから先何をやって、どう生きようか?をじっくりと考えるようになったけんちきさんには問題意識がありました。過去に取り組んできた山村留学や自然体験活動などは経済的に余裕のある家庭の子どもしか参加ができないという現実。お金がない人たちでもいろいろな機会に出会えないだろうか?そんな思いから、自らの意思で行きたい時に行くことができる居場所を作りたいと、今の「てつなぐ」を立ち上げることにしました。
なかなか良い物件に巡り合わずにいましたが、市街地から近いところにある古民家に出会います。古民家の改修作業は子どもたちと一緒に。一緒に作り上げたことによって場への愛着も増しました。地域のボランティア活動を行うなど地域との関係性も地道に積み上げ、「てつなぐ」はスタート。決して儲かる事業ではないので、経済的には苦しいことも。そんな時でも「貧乏を楽しもう!」とポジティブに捉えていましたが、自宅(プライベート)と「たまり場」(パブリック)の切り分けが難しくなり、悩みながらも一旦休止することになりました。
子どもたちから要望もあって、隔週でお休みの日に少しずつオープンしていたたまり場は昨年の春に平日にも再開、自身も第一子を授かったり、離婚をしたりと変化もあり、立ち上げた当初とは環境も状況も変わりましたが、これからも「てつなぐ」は続けていきたい、とけんちきさんはおっしゃいます。「目の前の子どもがどうしたいのか?に丁寧に寄り添い、その子のやりたい!思いを実現するために心を砕く、そんな場、関係を作っていきたい」そう語るけんちきさんのいる「てつなぐ」では、きっと今日も「やりたい!」を持った子どもがやってきていることでしょう。