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東京女子流 「Attack Hyper Beat POP」
ライブに通い始めると、好きな曲がなかなか披露されない、なんてことにたびたび直面します。
前稿のKEYTALKライブレポでも書いたのですが、決して「レア曲」ではなくても、巡り合わせの悪さで全然お目にかかれないことが多いです。
この記事の冒頭です。
いつしか自分の中でその曲への気持ちが大きくなり、その曲が披露されないライブは、それ自体は楽しかったとしてもいくばくかの物足りなさを感じてしまいます。
もちろん、披露される/されないでそのライブの価値が決まるわけではないですが。
今回は、そんな気持ちがあふれてしまった一曲について書こうかと思います。
僕はかつて、東京女子流というアイドルグループのライブによく行っていました。もう6年も前の話です。
アイドルグループとは書いていますが、女子流はアイドルなのかそうでないのか非常に線引きが難しいグループのうちの一つです。
アイドルとすると色眼鏡で見られてしまうきらいもあり、なかなか、女子流本来のアーティスティックな魅力が伝わりにくいんじゃないか。アイドルアイドルしている曲があまりないだけに、グループとして葛藤があったと推察します。とはいえ握手会・特典会などアイドル的な部分も捨てるに惜しい。
はっきりとした線引きをするために、アイドルフェスなどに一切出演しない「アーティスト宣言」をしていた時期もあった気がします。それもいつの間にか撤回されましたが。
そんな女子流の、数少ないアイドル寄りな曲の一つに「Attack Hyper Beat POP」という曲があります。
「AHPB」と呼ばれるこの曲は、「Hyper」と冠するほどテンポが速いわけではないのですが、歌詞が襲いかかってくるような感覚を受ける曲です。
◆東京女子流 Attack Hyper Beat POP
ココロ 熱くなる 焦らさないで
出来るだけナイショで近づいて
これ以上もう 誤摩化すのなんて ツラい
恋愛を想起させる、こんな思いつめた歌詞に終始しながら、女子流メンバーは非常にポップにこの曲を歌います。そのギャップがまた良いです。
この曲はまた、女子流の中でも貴重な「盛り上がり曲」でもありました。
Aメロの歌詞「お行儀悪くて(タメグチきいて) ごめんなさい」の「ごめんなさい」の部分をファンも一緒になって叫ぶだとか、サビで腕をぐるぐるまわすだとか、その他コールも他より多めです。
腕を回している最中は、メンバーの煽りが入り、熱の上昇を加速させます。
僕がこの曲を「アイドルっぽい」と評価したゆえんです。
女子流はこれまでリリースしてきたオリジナル曲には、グループの英名(Tokyo Girls Style)の頭文字をとって、その発表順にTGS〇〇と通し番号であるTGSナンバーを振っています。
2020年11月現在、77曲リリースされている東京女子流の曲うち、この「AHBP」はTGS10に入ります。
2011年にリリースされた1stアルバム収録の、かなり古株の曲です。
昔の曲ばかりで恐縮ですが、女子流には、デビュー曲の「鼓動の秘密」に代表される、少し暗めの雰囲気をもった曲が多いです。
◆鼓動の秘密 MV
7枚目シングル収録の「Limited addiction」もまた、一言でいえば大人な雰囲気です。
◆ Limited addiction MV
以前の記事でも書いた「Liar」も含め、これらの曲からは10代そこそこの女の子たちが歌うには大人っぽい、モノクロな雰囲気を感じます。
それを思うと、コールがふんだんになされる「AHBP」のような曲は、これらの大人っぽい曲の中にあってはかなり異質な曲といえます。
それでも、1stアルバム収録の曲にはまだ、「はなかっぱ」のエンディングテーマにもなった「おんなじキモチ」のような、かわいらしい、アイドルっぽい曲もありました。
◆おんなじキモチ MV
そのため、セットリストに1st,2ndアルバムの曲が並ぶことがメインの、というかそれくらいしか曲の選択肢がないような初期のライブでは使われることも多かったと思うのですが、曲数も増えていくと、使用頻度も徐々に減っていったかと思います。
それに加え、僕が通い始めた頃、2014年の女子流は、グループ自体がより大人っぽい路線にシフトしていました。
象徴的なのが、2014年の7月から赤坂BLITZで行われた、5カ月連続のマンスリー公演である「HARDBOILED NIGHT」。
脱線しますが、赤坂BLITZはその後、ネーミングライツの移行によって名前を変え、最終的には2020年9月で閉館となってしまいました。
個人的には、女子流含めアイドルのライブでよくお世話になった場所であり、赤坂という立地のプレミア感や、地下アイドルにしてはそこそこのキャパの会場であることから、誰かの卒業ライブなど節目の公演をする会場というイメージもあり、何かと思い入れが深い場所です。
「HARDBOILED NIGHT」の中身は、メンバー5人が演じる探偵もののストーリーがまずスクリーンに流れ、その間隙に女子流メンバーが出てきてライブする、演劇とライブパートの2段構成となった公演でした。
探偵ものの話は作りこまれていて、昔の刑事ドラマを思わせる、まさに「ハードボイルド」なストーリーでした。
この公演自体は今でも色濃く思い出に残っていますし良かったのですが、この公演においてのライブパートのセットリストは、ストーリーの世界観から外れないような曲で固められていました。
この公演ではさらに、毎月新曲が初披露となったのですが、リリースされる曲もかなりハードボイルドを意識した曲でした。
例えばこの「existence」。この公演において象徴的な曲です。
◆existence MV
こうした曲で占められたセットリストの中には、どうしても空気感の違う「AHBP」が入る余地はありませんでした。
このころから女子流を好きになり、AHBPの盛り上がりも体感してみたかった身からすると、これは少しばかり残念でした。
しかし、強調しますが「HARDBOILED NIGHT」公演自体は素晴らしいものでした。新曲披露の時に覚えたゾクゾク感は今でも忘れません。
女子流はこの年の年末や、翌年春にも東京でライブを行いました。ハードボイルドとは関係ない、普通のライブです。渋谷公会堂とZepp東京だったと記憶していますが、そのどちらでも結局「AHBP」は披露されずじまいでした。
同じ日に第一部第二部のような複数回しのライブがあるような場合、例えば一部にのみ行ったけどこちらでは披露されず、二部のほうに「AHBP」が入っていた、なんてこともありました。二択を外してしまう引きの悪さです。
それからは、本当になんとなくですが女子流のライブからは足が遠ざかっていきました。Zeppでのライブ以降は、対バンライブですらお目にかかっていません。そのため、AHBPは生で聴けないまま、もう6年も経ってしまいました。
早いもので2010年にデビューした東京女子流は、今年をもって10周年を迎えます。
アイドルとしてはもうレジェンドクラスの経歴なわけですが、いまなお活躍し続けているのは特筆に値します。リリースされた曲も、もはや半分くらいは知らない曲です。
その中にAHBPは埋もれ、レア曲になってしまったのでしょうか?それとも重要な乗れる曲で居続けているのか?それだけは気になります。
見出し画像出典(AHBPとは関係ありません)