【タートルリリー】IDOL MiXJUiCE 2022/8/26
いつも自分はライブの感想をライブレポとして載せているのですが、今回は全体的な感想ではなくその中で披露されたある一曲にフォーカスし、そこからグループのことを語ってみようかと思います。
なのであまりライブの内容とは関係ないかもしれません。
8月26日(金)に、新橋の内幸町ホールで4マンライブ「IDOL MiXJUiCEらしいステキな華金4マン」が開催されました。
一曲を通じてライブについて書こうと思うのは、ラストに出演した5人組アイドルグループ・タートルリリーです。
初めて触れたときはさほどでも、ライブで何回も聴くうちに好きになっていく曲というのがあります。
例えば推しているグループの「新曲」。
初めから受け入れられるものばかりではなく、出会った当初は微妙だと感じることも少なくありません。
正直、新曲披露を宣言したライブのときは、楽しみな半面「気に入らなかったらどうしよう」という不安も少なからずあります。
とはいってもずっと微妙なままかというとそうではありません。
今までの曲との共通点を見つけたり、曲同士のつながりでストーリーを作り上げたり、以前よりレベルアップしたメンバーの歌のスキルに驚いたりしながら、あらゆる面でその曲のことを眺めていくうちに自然と新曲は新曲でなくなります。
はじめは異物感があっても、好きなグループであれば知識や重ねてきたライブなど土台が出来上がっているので、何がしかのとっかかりをきっかけとしてとても飲み込みやすくなるものです。
ところが、ほとんど初見のグループの曲となるとそういうわけにもいかず、やや時間がかかります。
知った当初はすべてが新曲なわけですが、背景が分からないので良し悪しの区別どころか、雲をつかむような感覚で曲を聴いているような状態です。
前に出されたこの曲があって次の曲がある、などという関連性をもった見方ができません。
長調がメインのグループなのか、マイナーコードが得意なのか。
よほどカラーがはっきりしているグループでない限り、そういう判断すら出来ません。
自分はグループを好きになるときは、強い引きを持った一曲に惹かれていくというパターンがとても多く、始めはその曲しか聴かないことが多いです。
入り口の曲のマイブームが起き、他の曲には目もくれないなんて時期がしばらく続きます。
となると陥りがちなのが、グループのイメージイコールその曲という思い込みです。
やがてマイブームも落ち着き、ようやく他の曲も聴いてみようかとなり、入り口とは全く雰囲気の違う曲と出逢ったときに、その思い込みは戸惑いとなって現れます。
入り口の曲ばかり聴いたことによって染みついてしまったイメージは結構根深いもので、初めて知ったその曲がグループのカラーだと勝手に思い込んでいることがそもそも問題なのですが、そのカラーからして違和感のある曲に対しては「異質な曲」というジャンル分けが知らず知らずのうちに頭の中で作られてしまいます。
強調しますがこれは曲の良し悪しとは別の話で、初めて聴いた曲とどれだけ乖離していたかによる部分が大きいです。
時に路線変更とも呼ばれる大きなイメチェンは、その当時をリアルタイムで知る方であればまだ理解できるものであったとしても、後追いでザッピングしてる自分にとっては少々の違和感がどうしても残ります。
結構決めつけの激しい人間だなと宣言しているようで情けなくなってきますが。
このグループを応援しようと思いだす頃には異質としていた曲も受け入れられるようになるのですが、そのきっかけとなるのはやはりライブです。
数を重ねるごとに視界が広がってクリアになっていくわけですが、これは曲だけではなくグループに対しての視力だといってもいいと思います。
熱せられた鋳物が冷えてその形を定着させるかのように、過ごした時間とともにグループのイメージが明確になり、そのグループを構成している曲一つ一つに対しても意味を見出し、初めて本当の意味で受け入れられるようになってくるのです。
こうして文章に残していると、知りたての頃の的外れな視点が一目瞭然で恥ずかしいのですが、そうした経験はアイドルをいくつも通っていくうちに嗅覚が養われて減っていくのかと思いきやそうでもなく、初めましてのグループと接するたびにやってきます。
初めて聴いたときと今とで印象が変わった曲。
その切り口からこの日のことを書いてみようと思います。
5人組アイドルグループ・タートルリリーの曲で最初と印象が一番変わったのは、自分にとっては「真夏の空とキミ」でした。
とはいえまだライブに10回も行っておらず、自分が行きがちな大きめの対バンライブでかかる曲は数ある持ち曲の中で割と限定されているため、今後また印象が変わっていったり「真夏」以上にギャップが大きな曲に出会うかもしれないのですが、ともかく現時点ではこの曲です。
以前と重複を承知で自分がグループを知った経緯を書くと、始まりは「ダイヤの翼」という曲でした。
2022年2月にMVが公開されています。
日進月歩の象徴であり長寿のしるしとされる「亀」と、純潔を意味する「百合」とを掛け合わせたのが「タートルリリー」というグループ名で、純潔なメロディーにはまさしくグループ名の中の百合の花らしさが漂います。
ホール会場で撮影された全編ダンスショットのMVも素晴らしく、こちらも鐘の音から始まる曲の雰囲気とばっちり合っていたので、いわゆるライブハウスよりもホールが似合うグループなのだというイメージもセットでついてきていました。
知り合いの方からのおすすめでしたが、じっくりとライブを見たい自分の好みをよくわかって紹介していただいたようで、入り口は見事に「ダイヤの翼」でした。
その後、他の曲を漁っていった流れは先に書いたとおりです。
ダイヤを起点として当時全11曲あった持ち曲を見ていったとき、そこから一番遠いなと感じた曲がありました。
それが「真夏の空とキミ」でした。
ダイヤよりも前の、2020年9月に公開された曲です。
公開時期からして撮影はコロナ禍一発目の夏だったのでしょうか。
ブラス調の弾けるメロディーで、MVは水着を着たメンバーの海辺でのショット。
いかにも夏らしい、爽やかな良い曲です。
その間メンバーの入れ替わりもあったため、MVに映る全体的なビジュアルも今とは少し違うのですが、グループショットよりもその曲調がダイヤと対角線上にありました。
タートルリリーは曲数のわりに曲調の守備範囲が広く、例えばデビュー当初にリリースされた曲など大人っぽく、これまたダイヤとは一線を画します。
ただ、それらの曲はまだライブでのイメージが出来るのですが、「真夏」だけはライブの中でどういった働きをするのかがいまいち見えてきませんでした。
この曲、ライブアイドルというカテゴリーでみれば何も珍しいスタイルの曲ではありません。
むしろいかにもライブアイドルっぽい曲であり、どのグループも一つや二つ、あるいはグループコンセプトによってはほとんどがこうしたブラス調の伴奏のファンクっぽい曲を持っているだろうと思うのですが、いかんせんタートルリリーに限って言えばいまいち不釣合いなように正直見えました。
この日のMCでの辻菜月さんの「かめリリみんな陰キャだから」というコメントにもあるように、もの静かそうなメンバーが多く、二十歳そこそこにもかからわず初期曲に大人路線の曲をあてがわれた理由もなんとなく分かります。
なにより一番の要素はダイヤの翼という曲の存在です。
この路線がグループのカラーなんだと納得してしまうくらい、全ての点でピントがばっちりと合っていました。
深緑の衣装、ホール会場でのダンスシーンのみ、たまに入る抜きの画、そして曲。
音も映像も自然と集まってきたかのような仕上がりからは、ひずみのようなものが見えませんでした。
どこかを無理して形にしたことで生まれるひずみです。
こうした印象も手伝い、タートルリリーというグループはライブアイドルという業界に居ながらどこか違う世界を漂っている気がしていました。
だからこそ、対極にある「真夏」に違和感を覚えてしまったのです。
考えてみれば、リリース時期で後発はダイヤであり、仲間外れと言われてしまうのはこちらのはずなのですが、途中から観始めると何も分からないので順番をすっとばしてしまい、こんなことを思ってしまうわけです。
曲として微妙とは思いませんでした。
ただ、ダイヤのイメージが余りに強すぎたため、その残像が邪魔をして二項対立みたいな図ができてしまいました。
そんな感覚のまま初めてのライブに行ったのですが、その対バンライブでは恐らくダイヤも真夏も両方披露されました。
衣装は青チェックの真夏の衣装でした。
タートルリリーが新旧問わずライブごとに衣装を変えてくるグループだということをまだ知らなかったので、当時の最新曲であったダイヤの衣装で来るのかと思い込んでいた自分は、真夏衣装を見て別グループが出てきたのかと一瞬勘違いしたことも思い出します。
以降、頻度は高くはないものの少しずつタートルリリーのライブを見に行くようになり、単独や対バンライブ、あるいはフェスと色々な角度からステージを眺めていると、グループへの愛着とともに「真夏」の見方も少しずつ変わっていくような気がしました。
特に強く感じたのが、確かな疾走感です。
もとからある音源を使っているのでテンポが変わるなんてことはありえないのですが、生で聴いてみると、どういうわけか音源以上に速く感じます。
早くもAメロからピークがやってきます。
ギターメインのイントロに始まり、四つ打ちのパーカッションとともにメンバーが歌いだすところです。
まるで目の前に急に動く歩道が現れ、気付かぬまま足を踏み入れたら持っていかれたような、ステージから引っ張られる感覚をここで得ます。
Bメロではリズムが変わって若干落ち着き、再びテンポを取り戻すサビではさらに速さを増してきます。
振り付けを見てみれば、1サビでの「君への想いに僕は飛び込んだ」のところ、4拍子の前半では前に二歩、後半では後ろに下がるという足の運び方だと思うのですが、MVでは控えめな後半のステップがライブでは大きな動きになっていて、ここのばたつき加減もちょうどいいです。
かたや伴奏のベースラインは驚くほどしっかりしていて、そこでちゃんと引き戻されます。
浮ついている感じはありません。
「真夏」は毎回といっていいほどセットリストに入ってくるので、ライブのたびに出会うわけですが、グループへの視力が上がっていくにつれていつしか「真夏」で迎える走り気味のテンポがたまらなくなってきました。
もう違和感はとうにありません。
タートルリリーの応援スタイルは手拍子を打つことが少ないようですが、「真夏」では何もせずじっと観ているのはもったいない気もします。
声が出せない分、手拍子なり鳴らしてこの波に参加したくなってきます。
名古屋での劣悪な屋外ステージでも、綺麗に整えられたTIFの屋内でもこの曲は大活躍でした。
始めはライブアイドルっぽいなと思っているだけだった曲が、グループに無くてはならない曲なのだと実感とともに理解しました。
大人しそうなメンバーがどうパフォーマンスするのかと、初めは思っていました。
しかし実は曲とメンバーとのバランスがちょうどよくて、大声で煽ってヘドバンしてmixを打ってと要素が多いのでテンションがしっかりと上がりますし、かといって元々のメンバーから出る雰囲気の良さもあるので安っぽくはなりません。
メンバーはフロアに真似するように拳をあげるのですが、これまで散々披露してきたであろうにも関わらず心なしかぎこちなくみえました。
でもちょっと不慣れに見えるくらいがちょうどいいです。
拳を上げ慣れている感は、このグループには似合いません。
この日のライブではラスト5曲目にやってきました。
4マンのトリということで、前の3組の名前を出し「前のグループさんっぽく可愛く盛り上がる曲を持ってきました!」というMCでの言葉通り、4曲目「イチコイ」から続く人気曲の黄金リレーでは静かな雰囲気を打ち破ってきました。
ここはゾーンに入っていたと言ってよかったと思います。
「真夏」はコロナ禍となって先が不透明だった時期にリリースされた曲でした。
そのタイミングでリリースされたのは、底抜けに明るい曲で暗い状況を打破しようという狙いに加え、ファンも一緒に歌うパートを歌詞に入れることで、いずれ規制がなくなって声を出せるもとの状況に戻ったときにファン含め会場全体でライブを作り上げようという願いが込められていたそうです。
本格的な声出し解禁の流れはまだのようですが、そうなったときのライブがとても楽しみです。
ここからは「真夏」以外の曲について、ライブをざっくり振り返ってみます。
普段は落語やコンサートなど、ライブアイドルとは異なるジャンルの出演者が立つことの多い綺麗なホール会場の照明は、1曲目「Say Hello!!」では黄色と紫のツートンカラーでタートルリリーを迎え、2曲目「アプデ」で赤黒く変わり、後半にかけては七色に光りました。
ホール会場ということで、ファン以外の方の多くは座ってライブを観ています。
そんな状況を見たメンバーの、MCでの「立てる人は立ってください!」というセリフは、以前のidol mixjuiceでも聴きました。
見方を強制するわけではないけれど立ったほうが楽しいと思うよという、タートルリリーなりの優しい呼びかけです。
「真夏」の最後は、辻菜月さんだったかと思いますが金曜日のライブということもあり「お仕事お疲れ様!」とフロアに呼びかけてくれたメンバーがいました。
これだけで疲れがどこかに飛んでいきました。
新曲「シ・ゲ・キ・チュ・ウ♡」は真夏以来の水着MVとなった曲ですが、生で2回目の感触もいい感じです。