【ライブレポ】群青の世界 横田ふみか卒業LIVE ~青春をくれた君へ~
5月29日(日)、渋谷WWWにて5人組アイドルグループ・群青の世界の単独ライブが開催されました。
公演タイトルは「横田ふみか卒業LIVE ~青春をくれた君へ~」。
3年半前の結成からオリジナルメンバーとしてグループを支えてきた横田さんがこの日をもって卒業します。
この前日には水野まゆさんの20歳の生誕祭が同じく渋谷にあるO-WESTで開催されたばかりでした。
お祝いムードが冷めきらないうちに卒業ということになります。
卒業ライブの開催時期についてはかなり話し合われたようでしたが、卒業理由が心身の不調でありこれ以上先延ばしにすることは難しく、さらに「5人で誕生日をお祝いしたい」という横田さんの希望があり、それを汲む形でこのようなスケジュールとなったそうです。
記憶がかなり薄くなっている部分もあるのですが、あやふやな部分も含めて書いていこうと思います。
ーーー
◆開演~M7.(群青魂)
この日は前売りでチケットは完売し、当日券は出ませんでした。
会場の外にはお隣のWWWXとも共有のちょっとしたスペースがあるのですが、決して広くはないその歩道には開場前、こんなにかとたじろぐくらい多くの人が集まっていました。
AB二種類ある券種のうち、Aのほうは整理番号250番まで出ているらしいという会話も耳にしました。
対してBのほうは少なく50番くらいにとどまったそうなのですが、買った人全員が集まらないにしても単純に考えて300人近いファンの方が集まったということになります。
入ってみれば場内はいっぱいで、当然のように開演は押しました。
渋谷WWWXのフロアは傾斜が急な棚田状になっていて、一段目以外は高いところからステージを見下ろすような角度になります。
そのため最後列に居ても場所によっては眺めはかなり良いはずなのですが、この日は二段目以降もびっしり埋まり、視界はあまりよくありませんでした。
センターのあたりがちょうど見えず、隙間から覗くような格好になります。
始まりは急でした。
流れてきたのはいつもと同じSEですが、音がいつもとどこか違う気がしました。
照明はステージ手前からフロアに向かって駆け上がっていくように首を動かし、足元から上がってきた光は顔にかかったあと頭上を越えていきました。
やがてメンバーの登場です。
心なしかゆっくりとした歩き方で、顔はうつむき気味でした。
心に秘めたものを出すまいとしているかのような、抑制された表情をしています。
水野まゆさん、工藤みかさん、村崎ゆうなさん、一宮ゆいさんと一人ずつ出てきて音楽が鳴り終わるころ、センターに空いたポジションに横田さんが収まりました。
互い違いになったフォーメーションで空を見上げるところから始まるこの曲は、「アンノウンプラネット」です。
思いつめたようなメンバーの表情がここで華やぎだしました。
始まりは「青い光」「真夏のヘリオス」といった爽やかで明るい曲が連続しました。
打ってかわって4曲目は「夢を語って生きていくの」でしたが、自分の曖昧な記憶ではこの曲は中盤以降に披露された気がしていて、少なくともこんな序盤とは思いもしませんでした。
しかし実際には2時間半に及んだ全19曲の前半も前半。
それだけはじめの3曲だけで濃かったということなのでしょう。
はじめの3曲もさることながら、「夢を語って生きていくの」は特に、記録にも記憶にも残しておきたいステージでした。
右の手のひらを前にかざし、鮮烈な歌声を放つ工藤みかさんの姿があります。
照明は会場の横側を何かの模様に照らしながら伝っていきます。
スペイン坂を上がりきったところに位置する渋谷WWWは歴史のあるライブハウスですが、瞬間的にすり鉢状のホール会場へと変貌しました。
そしてMCへ。
自己紹介とともに、横田さんがこう言いました。
「きょうは群青の世界って良いなと思ってもらえるようなライブがしたい」
最後の最後にこの言葉が出てくるのが、後々にも書きますがグループ本意ですべてを考えてきた横田さんらしいというか、素晴らしいです。
MCを手短に終え、メンバーは次々に曲を重ねていきました。
親指を空に掲げる「コイントス」、広い海を航海していく船びとたちの気持ちにさせてくれる「Quest」と、雰囲気は再び明るめなムードに戻りました。
7曲目は「群青魂」。
コロナ禍となり、フロアからのコールを受け取れなくなってしまったグループが半ば封印していたという、ここぞの盛り上がり曲です。
卒業ライブをあと1ヶ月後に控えたときのインタビューで村崎さんが語った「自分はもうバカになるしかない」というコメントをここで思い出しました
熱さで言えば「群青魂」がこの日一番だったかもしれません。
直後にMCに入り、肩で息をしながら水を飲むメンバーを見て、この曲がどれほどハードなのかを思い知りましたし、「最後はしめっぽくなく楽しく終わりたい」と語っていたことが現実のものとなって終われそうだという満ち足りたものが生まれてくる感覚がしました。
そういえばこの日、メンバーの給水用のペットボトルがステージの前の方に置かれていました。
なんでこんなことが目についたかというと、大概の群青の世界のライブでは水はステージ奥に固められていて、MC終わりで暗転の下、5人がそこに集まってかがみこみながら水を飲み、時に何やら話している、という光景が当たり前のようにあったからでした。
◆M8.「最後まで推し切れ」
もうこのあたりは中盤戦。
横田さんにとって最後の新曲がここで披露されました。
タイトルは「最後まで推し切れ」。
Aメロが「いつも応援して下さってる皆さんへ 続き読んだ記憶を失ってる明々後日」という歌詞から始まるこの曲は、好きなアイドルの卒業発表を受けたファンの気持ちを綴った曲です。
突然のことに驚き、うろたえ、相反する感情の中で揺らいでいる様子が生の言葉で描写されています。
そこには群青の世界に多用される比喩的な表現はありません。
「死ぬまで忘れない」「今が最強だから」といった生身のフレーズは生だからこそ刺さってきます。
お披露目は4月3日開催の全国ツアー「High Five」ファイナル公演からでした。
横田さんの卒業発表はそこからひと月も経っておらず、時期からしてみてもまさに卒業に合わせて制作したのかと思っていたのですが、どうも違うようです。
MVを撮っている時点でもまだ卒業は決まっていなかったと、MCトークで知りました。
ピンクや白に色づいた花をつけた木々や穏やかな陽の光、そして台の上で歌い踊るメンバーと濃紺の衣装。
春の特定の時期でないと揃わないような美しいコントラストは、初めから横田さんのためにしつらえられたわけではなかったというのです。
卒業を決断した具体的な日にちまでは分かるはずもありませんが、このことを知ったとき、決断からこの日までにそう日にちは空いていないことを察しましたし、そこに至るまでにただならぬ葛藤を経てきたことや、発表から卒業まであまり間を明けられなかったという事情も見えてきたような気がしました。
「最後まで推し切れ」は結果的に横田さんの卒業ソングとなりましたが、初めからそれを狙っていなかったというのも、MVのつくりが重くなりすぎないということで良かったのかなと思っています。
「いろんな捉え方があっていいと思う」と横田さんが言うように、もちろん横田さんを送り出す側の曲として味わってみてもいいでしょうし、アイドルを応援する人であればかならず出くわすであろう、だれかの卒業やグループの解散といったエポック的なイベントに対しての広い意味でのメッセージソングと受け止めてみてもいいはずです。
◆横田ふみかというアイドル
卒業ソングがここで披露されたということで、後半にかけてのセットリストを追っていく前に、ここで横田さんがどういうアイドルだったのか、1年にも満たない期間ですが自分が見てきて感じたことを書いてみます。
横田さんの最大の魅力は、笑顔にあると思います。
ひとくちに笑顔と言っても様々ありますが、横田さんのそれは屈託のない無邪気な笑顔。
計算されて生まれたものではない笑顔はメンバーをして「赤ちゃんみたい」と言わしめ、初めて観たときにまず心理的な壁を取っ払ってくれます。
奥行きのあるホール会場でも関係ありません。
笑顔は立体的で、この笑顔をみて好きにならない人などいるのだろうかと以前書いたほどです。
その一方で、歌って踊るパフォーマンスでも存在感は強く、例えば「BLUE OVER」の落ちサビ前の間奏や「Nonstop」などで見せる、センターに立って顔を締めたまま踊るダンスにも惹かれます。
歌声には広がりがあり、息が多く混ざる低音部で特に良く聴こえます。
でもそんな歌声に、少しの陰りが見えたときがありました。
昨2021年の終わりごろ、結成3周年記念ライブを兼ねた東名阪ツアー「Blue Symphony」のファイナル東京公演を終えた直後のことでした。
個人的には2021年観てきたなかで指折りの素晴らしいライブで、しっかり追いかけていくべきグループがまた一つ増えたなと余韻に浸っていたそのタイミングで、横田さんの活動休止の報が入ってきました。
理由は喉の不調によるものでした。
群青の世界のことを深く知る人であれば、その前後で歌声が本調子ではなくなっていると気付くことができたのかもしれませんが、少なくとも自分は当日はおろかライブ後公開されたアーカイブ映像を注意深くみてもそんな気配には全く気づきませんでした。
だましだましやってきて、でもツアーファイナルまではなんとか、と調整してくれたのでしょう。
そうした苦悩はしかし、映像や生のライブで目にしていた全くもってよどみのない笑顔の下に隠れて一切見えませんでした。
活動休止のお知らせを聞いてそこではじめて「そこまで重症だったのか」と愕然とした、自分のような人も多かったのではないでしょうか。
陰りが見えた、と先に書きました。
しかしそれはお知らせを受けて後で分かったことです。
音が思うように出せない、など苦しさを抱えつつも、ずっとトレードマークの笑顔を崩さなかったことには、改めて尊敬の念を強くします。
このエピソードからは、よほど仲良くならなければ分からないような、横田さんの職業アイドルに対する向き合い方がもう一つ見えてくるような気がしています。
恐らく横田さんは、弱みや隙を見せない、完璧なアイドルで居続けようとしたのではないでしょうか。
活動休止は結局2カ月弱続き、復帰は2月ごろになりました。
2月から開催の東名阪ツアーを完走、ツアーファイナルでは水野さんと村崎さんがグループに加入してちょうど2周年を数える8月に初のバンドセットを組んでのライブ開催が発表されました。
5人でこのままもっと進んでいくのだろう...
そう思った矢先にあったのが、このたびの卒業発表でした。
復帰から間もないこともあり、喉の不調はふた月休んだ程度ではだましきれないところまできていたのかなと思ったものですが、理由はそれだけではなかったようです。
当然ながら僕は横田さんと膝を突き合わせて喋ったわけでもなく、どういう気持ちで過ごしていたかは断片的な情報をかき集めて多分こうなんだろうなと邪推するくらいしかできません。
よくSNSに今の気持ちを長文で吐き出すアイドルを見かけますが、群青の世界に関しては投稿にもルールがあるのか、インスタのストーリーですらもそこまで裏の顔みたいなものを吐き出している印象はありません。
そんな横田さんが、心の底にあったものをほんの少しだけこちらに見せてきたときがありました。
卒業ライブの直前、5人で最後の定期公演の時に公開された記事「青の記録」には「卒業特集」ということで、横田さんに関するインタビューが通常回以上の字数を割いて掲載されていました。
卒業理由を聞かれ、横田さんはこう答えています。
一周回ってどうすればいいかが分からなくなってしまったことが大きいです。
自分がなりたいアイドルとか、自分が頑張りたいとか、何をすれば自分が成長出来るかも分からなくなっちゃった
どこを目指してやればいいのかが多分分かんなくなっちゃったのもあるのかな
次の夢が出来たからという理由でアイドルをやめる人はたくさんいます。
えてしてそういう人の卒業コメントには清々しさがにじみ出ているものですが、横田さんのそれは驚くほどに正反対です。
読み進めていけばいくほど、暗い気持ちになっていきます。
アイドルがよく言う「いいねが少ないと存在意義が分からなくなる」という不安の、もっともっと深いところに、横田さんの悩みが根っこを下ろしているようでした。
もちろん喉の不調も、そこからくるいらだちや不安などからメンタルに響いてきて...と連鎖していくであろうことを思えば卒業と無関係とは言えないのでしょうが、あくまでこの記事から判断するに、では喉が万全なら曇りの気持ちなく続けられたかというと決してそういうわけでもなさそうです。
歌が思うように歌えなってしまったことはいくつかある要因の一つに過ぎず、グループにおける自分の存在意義だとか、求めるレベルに達せていないとか、あくまで自らのものさしのなかで現状に満足できておらず、かといって何をしたらいいか分からなかったからマイクを置くと、インタビューを通してそういう風に感じました。
自分自身の停滞があったという言葉に対しては、「そんなことないよ!」と思ってもしまうのですが、もうそんなレベルの話では無いことは「ファンの方々が細かい部分までライブを見て気付いてくれて(中略)でも、やっぱり自分の中では納得がいかなかった」というコメントで明確です。
ボロボロになってまでアイドルを続けることを許さなかったのは、美学とかプライドなどという見てくれの面ではなく、自分への厳しさやストイックさによるところが大きかったのでしょう。
「出来ないと言ったら現実になる気がして」と、メンバーにも思い悩む姿を見せることは少なかったといいます。
ライブへと戻ります。
◆M9.「COLOR」~実感が襲ってくるとき
後半戦に向かっていく「COLOR」「メロドラマ」「BLUE OVER」は、これぞ群青の世界といったステージでした。
振り付けには物語性があり、鳥肌に包まれます。
この時点で披露し終えたのは11曲、時計は見ていませんが1時間は越えているころでしょう。
ここまでで感じていたのは、群青の世界のライブそのものに対しての反応でした。
身体が震えるような感覚も、鳥肌が立つ感覚も全て、です。
多少見づらくとも群青の世界のライブは素晴らしい。
しかしここから、卒業ライブでは嫌でも目にしないといけないシーンを目にすることとなります。
奈落のような時間です。
ここから記憶が飛びがちになっているので、もしかしたら出来事と曲とが合っていないかもしれません。
12曲目に披露されたのは「最終章のないストーリー」。
自分が見る限りまず様子がおかしかったのは、村崎ゆうなさんでした。
村崎さん、早くも感極まっています。
終わりが見えてきたときに突如として襲ってくる、別れへの実感がここでやってきたのでしょう。
角度的に、フォーメーションの下手にいるメンバーはよく見えたのですが、村崎さんの目からほほにかけて、涙が通ったであろう透明な筋も照明に当たってはっきり見えました。
何というか、村崎さんはもうここからはほとんど無心で踊っていたのではないでしょうか。
その姿を見て、こちらとしても涙を止めることが出来ませんでした。
「最終章のないストーリー」では、人差し指を掲げたサビでリズムに合わせて2,3,4,5と指を一つずつ開いていく振り付けがあります。
だれかの「せーの!」の声でメンバーのみならずフロア全員で指を開いていくパートです。
いつも自分も一緒になってやるのですが、村崎さんの涙を観てからはとてもそんな気分にはなれませんでした。
そこには悲しさもあったのですが、それだけではなく仲間との別れを控えて流す涙という、美しすぎる光景を前に酔っている自分も居ました。
少しでもこの光景をとどめておこう、そう思いながらステージを眺めていました。
MCを挟んだ13曲目「青空モーメント」からは他のメンバーにも伝染していました。
コーラスの線は細くなり、横一列になってみんなで歌っているはずなのに一宮さん以外まともにマイクをとれない場面があり、工藤さんは言葉を失ってしまったかのようにただ下を見て震えています。
◆M14.「Puzzle」~真っ白なシルエット
14曲目「Puzzle」では一宮さんが隣にいる横田さんのほうを向きなおって歌うシーンがありました。
パズルのピースを「君」に当てはめる歌詞が印象深いこの曲は、メンバーどうしで向かい合って円状のフォーメーションを作ったり、センターにむかって皆でくっついたりと、結束を意識させるシーンがいくつもあります。
公式ツイッター画像にある、みんなで手を繋いでいるのはこの曲だったはずです。
「Puzzle」がここまで涙を誘う曲になるとは思いもしませんでした。
本編ラストの「未来シルエット」がはじまるころ、ステージ奥に動きがありました。
真っ黒なカーテンがゆっくりとためらいがちに開きました。
現れたのは白いスクリーン。
そこには横田さんに向けたメッセージと、これまでの活動を記録した数々の写真が映し出されていました。
君は君で、僕は僕で、多分それでいいんだけど 同じ明日を同じ時を夢見てしまったんだ
あの飛行機雲より 真っ白だ 未来シルエット
光のほうに向かって歩いているとき、自らの影はみえないものです。
その背中を眺める人の目に映るのみです。
そう考えるとこの曲は、過去から現在まで重なっていた点が未来に向かって別れ、その分岐点で「君」の背中を「僕」が仰ぎ見ているという、まさに横田さん卒業に際してのこの状況を指し示した曲だと言えはしないでしょうか。
スクリーン上の演出は写真を出すタイミングが絶妙で、だれかのソロパートではソロで歌っているメンバーと横田さんのツーショット写真がちょうど映し出されていました。
スクリーンの模様はメンバーだって横目で見たり、後ろを向いたときに目にしているはずです。
それにしては意外と冷静だった気がしたのですが、後のMCで実は「本番でいきなり観たら絶対泣くので事前に見ておいた」と知りました。
しかも2回見たようで、その2回ともみんな(村崎さんだけだったかもしれませんが)泣いていたようです。
フォーメーションのなかで横田さんが一人後ろを振り返るシーンがありました。
顔は上がり、メンバーとの写真を見上げているようです。
息を吸い、こちらを振り返ったときにはいつも以上の笑顔がありました。
3年半、たくさんの「青春」と「笑顔」をありがとう
スクリーンの役目は、曲のラストでこの言葉を映したところで終わりました。
◆En1. そして原点へ
拍手が響く中、しばらくしてからメンバーが出てきました。
少し遅れて登場した横田さんが身に着けていたのは、この日のために作った卒業衣装のドレスでした。
背中にはこだわったという大きなリボンをあしらい、色は水色です。
グループのカラーである青があくまで基調で、群青の世界のメンバーとして卒業するのだということがはっきりと示されています。
その姿は、登場と同時に声が漏れてしまうくらい綺麗でした。
「もうちょっと曲を披露したい」と、群青の世界らしい独特の言い回しでアンコールのパフォーマンスに移ろうかというとき、横田さんがこう言いました。
「今から披露するのはカバー曲なんですけど、これは群青の世界の最終オーディションの課題曲でもあり、個人的にも好きな曲です。聴いてください。」(内容はニュアンスとお受け取りください)
披露したのは、乃木坂46の「サヨナラの意味」
サヨナラは通過点 これからだって何度もある 後ろ手でピースしながら 歩き出せるだろう 君らしく・・・
この曲を作曲した杉山勝彦さんは、「最後まで推し切れ」と「However long」という、群青の世界の最新2曲を手がけている方です。
群青の世界というグループが誕生する前、新グループ立ち上げのためのオーディションに通過した将来のメンバーはスタッフから「系統としては坂道系を志向したグループを作りたい」のだと言われたそうです。(何かの記事で見かけましたが出典が分かりません)
そういう青写真があったからこその課題曲のチョイスだったのかと思うのですが、横田さんが最後の舞台で歌ったことで、始まりと終わりが3年半を経て見事につながりました。
そして卒業ライブの会場・WWWは、群青の世界がステージデビューを果たした場所でもあります。
あれからいくつもの経験やファンや曲などを集め、たどり着いた先は始まりの地だったのでした。
綺麗な物語をここに見た気がします。
◆卒業セレモニー
あと2曲を残し、ここからは卒業セレモニーに映りました。
まずは横田さんからファンやメンバー4人へ向けたメッセージを、そして4人からも横田さんに対してそれぞれ思いを口にしていました。
横田さんはライブ後に更新したツイッターにも卒業コメントをまとめていて、会場でのスピーチの内容とはさほど変わっていないように思うので、URLごと拝借します。
4人での思い出が増えていくこれから先の未来、少しでも私のことを思い出してくれたら嬉しいと言っていたことが印象深かったです。
卒業後の進路にも触れていました。
「アイドルは群青の世界が最初で最後と決めていた」という言葉通り、今後どこかのアイドルになる予定はないそうです。
しばしお休みした後は、群青の世界のスタッフとしてメンバーを支えていく予定なのだと言っていました。
本人の意志で決める進路に良いも悪いもないとは思っていますが、卒業してもなおグループとかかわりを持ち続けるなんてものすごく素敵なことのように感じます。
そこまでのグループ愛があったからこそ、グループにいる時の自分の存在意義を高く求めすぎ思い悩んでしまったのだなと、再び納得しました。
メンバーへのコメントは、思い出せる範囲で書いてみます。
一宮さんへ「アイドルとして見習うべきところが多かった」
工藤さんへ「アイドルに対する考え方が一番近い。ここまでパフォーマンスで引っ張ってくれてありがとう」
村崎さんへ「私と同じで思いを口にするのが苦手なタイプだけど、一から十のことをくみ取ってくれる。何でも器用にこなしてくれて助かった」
水野さんへ「落ち込んでいるときとかに真っ先に気付き、気持ちを分かろうとしてくれていた」
4人それぞれから横田さんへのお手紙の内容は、書き出せるほどしっかりは覚えていないのですが、それでも記憶に残っているのが、皆が一様に横田さんには「かなり頼っていた」と言っていたことです。
MCの進め方、段取りにはじまりその日の各人の役割確認など...
全て横田さんが主導となっていたそうです。
水野さんは言います。
「このグループにリーダーというものはないけど、いるとすれば間違いなくふみかちゃんだった」
断片的な情報ですが、前に出てグループを引っ張っていったのだろうなというのは先日のツアーファイナルの裏側の密着映像でも確認できます。
リハーサルの時にスタッフに対して挨拶の音頭をとっていたりPAのスタッフにマイク音量の指示などをしていたのは横田さんでした。
MCコーナーではいつも、群青の世界の曲のインストバージョンがうっすら流れているのですが、気が付いたら消えていました。
環境音は空調の音くらいで、鼻をすする音が時折聞こえてきました。
一宮さんの独特のワードセンスや、村崎さんが横田さんに「これからも連絡するから通知オフにしないでね」と言っておきながら自分はオフにしていたというくだり(照れ隠しだそうですが)等笑いどころもありましたが、でもやっぱり寂しさが襲ってくる。
一人一人が気持ちを届けたセレモニーは、そういう時間が流れていました。
◆大爆発の先に
最後の2曲は「カルミア」そして「僕等のスーパーノヴァ」でした。
泣いたせいで瞼は重く、充血しているであろうことは鏡を見なくても明らかでした。
そうしてやってきた最後の「僕等のスーパーノヴァ」ですが、ハイハットの4拍響くイントロにはじまるメロディーを聴いた途端胸のすくような、スカッとした気持ちが湧いてくる実感がありました。
終わりあるほど美しいのならば
スーパーノヴァ、超新星とは、人生の最後を迎える恒星が爆発の末とてつもないエネルギーを放つことを指すらしく、そのエネルギーの大きさには太陽の一生分のエネルギーをもってしても敵わないといいます。
この曲の作詞作曲を手がけたRIRIKOさんは、「スーパーノヴァ」を群青の世界という天体の数ほどにあるなかのたった一つのアイドルグループに重ね、ネガティブにも想起させてしまう「終わり」ではなく大爆発をきっかけにここから始まっていくのだという意味を付け足して「スーパーノヴァ」と銘打ち歌詞を広げたのだそうです。
照明は白みがかったオレンジ色で、ほとんどその一色のみのシンプルなものだったかと記憶しているのですが、これ以上カラフルにする必要はもはやありませんでした。
散りゆくアイドルは、その散り際にこそとてつもない輝きを放ちます。
横田さんがステージから消える直前の数分間、今この場に現れたのは、本来の意味での「スーパーノヴァ」だったのかもしれません。
ラストライブの演出を考えるにあたり、横田さんは直前まで「群青魂」を入れるか入れるまいかということや、カバー曲の選択などにも相当頭を悩ませていたそうです。
結果として、ライブ時間は2時間半にもおよびました。
「やりたいことが出来た!」と言い切った顔は晴れ晴れしていました。
いつもの笑顔がさらに光っています。
時にひと一倍自分を殺し気持ちに蓋をしながら活動をしてきたであろう横田さんにとって、ラストライブが今までで一番楽しいライブと断言できるほどのライブに終わって本当に良かったなと思います。
「ありがとうございました!」
こうして横田さんは、完璧な笑顔でステージから去りました。
ーーー
全てが終わり、自分はただ呆然としていました。
グループから一人抜けることへの喪失感はもちろんのこと、楽しさだけではない様々な感情に取り付けれたライブ会場の妙な居心地の良さから抜け出して現実に帰らないといけないことへの寂しさみたいなものに埋め尽くされていました。
村崎さんは最後泣きはらした顔でこう言いました。
「いつだって変化は慣れないもの」
しかしこう付け加えます。
これからもグループは走っていくのだと。
リーダー的存在を失ってしまいましたが、それでもなお、これからの群青の世界はより高いところに行けるだろうと信じています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?