ライブレポ「東京パフォーマンスドール ダンスサミット2020 NO LIVE, NO TPD Ver. 2.0」

ライブ本編だけのチケット(2500円)を買ったのに、本編終了後には本編プラスアンコールを聴けるプレミアムチケット(5000円)を買ってしまった。アンコールのためだけに2500円を余分に払ったことになるが、そこまでしても最後の最後まで見届けたくなるようなライブであった。

東京パフォーマンスドール(TPD)の無観客配信ライブが9/17日に行われた。終了後の熱気冷めぬままこのレポを書いてみる。

僕にとってオンラインライブは初めてであった。TPDも6月にライブをしていたり、ロックバンドもオンラインライブ/フェスはかなり盛んに行われているのだが、どうも観る気がしていなかった。個人的には、ライブは狭い空間にぎっしりと入った客同士の熱が充満する中、ステージを観ながら一緒に歌ったり、アイドルのライブなら軽くフリコピをしてみたりと、一人別の世界に入るのがこの上ない楽しみだった。ファン同士で交流するのも好きではなかったし、たいていのライブでは一人でいた。一人の世界を求めるのならオンラインライブはなおのことちょうどいいのではないかと思いきや、そういうことでもない。というのも、一人の世界を確立することはファンの出すコールや歓声があって成り立つもので、四方から聞こえるコールがまたライブへ没入させてくれる。オンラインライブには客の声は入らない。そのため、どこか興覚めというか物足りなさを感じるのではないかと思っていて、なかなか観る気がおきなかったのである。

しかし事態も収束しそうになく、結局年明けくらいからTPDを観れていない。ことアイドルはいつ観られなくなるかもわからない。逡巡はしたが物は試しだと思い、TPDとしては2回目となる今回のオンラインライブを鑑賞することとした。

結果、オンラインライブはこれはこれで良い、という結論に落ち着くことになりそうだ。だから冒頭で書いたように本編のチケットを買っておきながら追加で買ってしまうというとんでもない「愚行」を犯してしまった。

まず、普段のライブでは観られない角度や精度で映し出される映像は、同じ曲でも新たな発見を与えてくれた。「この曲のサビ、こんな細かい振りがあったの?」とか「メンバーはこの歌詞の時、こういう表情をするんだ」などである。ライブハウスでは 500人キャパでさえステージとの距離は最前列でもない限り遠い。それに加えて後方では視界が前の人にさえぎられたりする。その点、オンラインライブは視界はさえぎられないどころか超がつくほど至近距離でメンバーを観ることができる。カメリハもばっちりにメンバーの「おいしい」ところをしっかりと抜いてくれる。もちろん客席からステージを少し見上げるようないつもの目線も見せてくれ、ライブ自体の感覚も忘れずにおくことができる。

そして、これはライブ自体の良さでもあるのだが、聴いている回数が少ない曲を久しぶりに聴き、思い出すものがあった。ここ最近は、noteに書いている関係で「SURVIVAL!!」や「Brand New Story」など初期のかっこいい曲ばかりを聴きこんでいたのだが、TPDはこういった曲ばかりではない。むしろここ最近では2枚目のアルバム「Hey, Girls!」に代表されるかわいらしい曲が多い。「Glowing」や「Lovely Lovely」など最近の代表曲を歌っているメンバーを見ると、初めてTPDを観たアリオ川口でのリリースイベントの時のことを思い出し、少し懐かしいような、感慨深いような感情がこみあげてくる。

アンコールで披露した「Glitter」。数年ぶりに歌ったらしいが、新規の僕としてはTPDを好きになった頃、とにかく曲を調べようとYouTubeで検索したときに一番上に引っかかった曲だった。好きになりたては何も分からないので、そのMVをよく見ていた。ガーリーなこの曲は、初期の曲のイメージがしみついていた当時の僕にとっては虚をつかれたようなものだった。

けれども、ライブでは一回も聴いたことがなかった。似たような路線の曲は「Hey, Girls!」以降では何曲かあるし、構成の中にあえて特異な立ち位置のこの曲を挟む余地はなかったからなのか。今回のライブで披露されたのを聴き、やっとやってくれたか、忘れかけていたよ、という思いである。これを気にライブの中心曲へ..という可能性は低いとは思うが、僕にとってはある種原点となった曲だけに印象には残った。

歌唱部分以外の演出にも、メンバーがスタッフとともに考えたというアイデアが盛り込まれていた。特に中盤のユニット曲への転換の際、歌わないメンバーがステージを降り、客席からあたかもファンのように声援を送る、というコミカルな図を俯瞰で撮っていたのはオンラインライブくらいでしかなかなか観られないのではないだろうか。いつものライブではここは衣装の早替えの時間であり、MCがないノンストップライブでは無くてはならないものである。しかし、なんとなくルーチン化しているようなきらいもあったため、このような新しい試みはオンラインライブならではの希少性を与えてくれ、ライブの価値をより高めてくれる。「ハジケソーダ!」の曲中にはステージからメンバー全員が降りて歌ったり、アクリル板にサインをしたりというひとコマもあった。この曲はいつも早替えの時に3人で歌うのだが、今回6人が総出だったのも、これらをやるためなのだろう。

単純な視覚効果として、後ろの画面で曲ごとに変わる背景の演出もよかった。「Starship Flight」では宇宙空間をイメージしたようなグラフィックが施され、「Raining」では静かに降る雨が映し出された。これらの効果自体は従来のライブでも取り入れられることはあったが、普段は真っ正面からステージを見ることがないので、あまりじっくりとは見られていなかった。まじまじと観るとメンバーの表情ともマッチして、きちんとエフェクトの一部分になっていることがわかる。

久々のTPDであったが、ここ数年で広くなった楽曲の幅を活かしたような良いライブだったと思う。なにせ曲の振れ幅が大きい。曲も新旧を交互に出してきていたような気がするし、雰囲気も一曲ごとにがらりと変わり、はじける曲の後に笑顔一つみせないようなクールな曲を持ってくるなど、ギャップが大きかった。セトリの落差は意図して作り出したような感じすら受ける。MCを挟まないノンストップライブでありながら、曲間で展開を変えることができるのはTPDのこの上ない強みだろう。

来月にもオンラインライブが開催されることが決まった。こうライブが立て続けにあると、いったん盛り上がった流れがしぼまず、次回を楽しみにする気持ちが強くなる。
加えてアルバムのリリースも再来月に控えているが、これはまさにアルバムのリリースイベントをやりながら月1ペースのノンストップライブもこなしていた2年前のそのまま写し絵のようだ。メンバーは舞台やモデルなど外での仕事が増え、あの頃よりもハードなスケジュールになっていることは必至だと思うのだが、こうしてファンを楽しませる場を提供し続けてくれるTPDの存在はありがたい。ライブ後のMCでうれしいお知らせが聴ける喜びをかみしめながら来月のライブが来るのを待ちたい。

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