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曲の継承 転校少女*「じゃじゃ馬と呼ばないで」

10年、いや5年も経つとスターティングメンバーの顔ぶれががらりと変わるプロ野球界ですが、それだけ選手個人の「応援歌」も入れ替わりが激しいです。

移籍や引退などによって選手がチームを去ると、戦力としての損失はもちろんのこと、その選手の応援歌はもう二度と聴けないのか...という悲しみも押し寄せます。
こうした応援歌の中には「名曲」も数多くあり、選手との別れとともに、そんな名曲とも別れなければいけません。

個人応援歌はその選手のためだけに割り当てられたものであるため、基本的には使いまわされることが無いのですが、「流用」される例も無いわけではありません。

選手の移籍、あるいは引退などで宙に浮いてしまった応援歌が、同一球団の他の選手に「継承」されるケースはたまにですが見られます。
元は個人応援歌だったものが、チャンステーマとして生まれ変わるなんていう例もあります。
チャンステーマのように選手個人の応援歌で無くなれば未来永劫残される可能性が残されているということで、無くなる寂しさとも無縁になります。

また、選手と一緒に応援歌が移籍することなんていうケースもあります。

横浜ベイスターズから広島東洋カープに移籍した石井琢朗がいい例でしょうか。
2000本安打を達成するなど、横浜のショートの顔として長らく活躍した選手ですが、成績が下降しはじめた選手生活晩年には広島東洋へ移籍します。
そのさい、横浜時代に親しまれた応援歌が、広島に移籍してもそっくりそのまま使われたのでした。
移籍当時の石井はかなりのベテランでしたし、横浜時代の応援歌と石井はセットみたいな部分も有ったので、カープに行って今更新しい応援歌となっても違和感しかなかったでしょう。

何より、石井の応援歌は名曲です。まだまだ現役なのに使わない手はないだろう。
応援歌の作成や決定に関してどういった人達が関わっているのかは分かりませんが、こうした意見が少なからず出ていた結果なのでしょう。

そうした継承を目にすると、変わらないことの良さを感じ、感慨深くもなります。

さて、話変わって今回のトピックはアイドルについてなのですが、アイドルの曲においてもこうした「継承」があります。ただ、先述したプロ野球の応援歌よりもさらに割合は減ります。

そんな曲の一つが、転校少女*というアイドルグループの
じゃじゃ馬と呼ばないで」。

◆じゃじゃ馬と呼ばないで ライブ映像

前名義である「転校少女歌撃団」としてリリースした初の全国流通盤「この世界にサヨナラして」のカップリング曲です。

こうして書いておきながら、僕はこの「じゃじゃ馬」についてはおろか、転校少女*に関しもかなりのにわかです。初めてライブに行ったのは今月です。

先日、文化の日に行われた「秋葉原アイドルサーキットvol.0」という対バンライブについてライブレポを書いたのですが、そこに転校少女*も出演していました。

当時、というか数週間前は、もちろん転校少女*の知識はゼロでしたが、せっかくだからと曲を予習のつもりでザッピングしていくなかで、
この「じゃじゃ馬と呼ばないで」が目に留まりました。

他の曲ではピンと来なかったのですが、なぜか「じゃじゃ馬」というタイトルが引っかかりました。

以前にもどこかのアイドルで目にしたような...

「じゃじゃ馬」なんて特徴的なワードがタイトルになっている曲などそうそうないでしょう。
不思議に思って検索して、初めて謎が解けました。

この曲は、もともとは「GALETTe」という別のアイドルグループの持ち歌でした。

4年前のことですが、僕は一瞬だけGALETTeに興味を持ったことがありました。
2016年の夏にTokyo Idol Festival(TIF)というアイドルの大型フェスでGALETTeのステージを見たのですが、そこで「良いな」と気になりだし、YouTubeに上がっているライブ映像を観たりしていました。
好きになる一歩手前くらいの段階です。
ライブにも機会があればなんて思っている矢先、同年10月末にグループは突如解散してしまいました。

TIFからわずか2カ月ほどでの解散です。
noteには様々なアイドルのことを書いていますが、GALETTeの記憶はあまりにも短すぎてすっかり飛んでいました。

この時の最終メンバーであった古森結衣さんは、翌2017年に転校少女歌撃団へ「転校」しました。
そしてそれから3カ月後にリリースされたのが、くだんの「この世界にサヨナラして」ならびに「じゃじゃ馬」です。

そうした経緯を思うと、「じゃじゃ馬と呼ばないで」が継承されたことは、古森さんの転校と無関係では無さそうです。

普通、アイドルグループの曲は、そのグループが解散したら歌われることは無くなってしまいます。
たまに、現役のアイドルが過去グループの歌を企画などで歌うことはあったり、解散グループと同じ事務所所属の妹グループによってまれに披露されることはあるかもしれませんが、あくまで「まれ」であり、相当限定的です。

GALETTeと転校少女*の間には「姉妹グループ」的な関係が有ったわけでもないと思われます。
古森さんの移籍があったとはいえ、さして関係もなく見えるグループの間でこうして曲が引き継がれたということには、なにか事実以上の重みを感じます。

さて、曲としての話ですが、確かに解散したグループとともに消滅してしまうには惜しいと思わせるような良い楽曲です。

歌詞を見てみると、アイドルアイドルしているといいましょうか。
メルヘンチックな箇所が多く見られます。

0時の鐘が 魔法解けば 私のステップ踏んで
履き慣れたシューズも 脱ぎ捨てて裸足のままで
少女のように 踊りたいの

2番では

キュートで甘い ストロベリージュース
一口で飲み干して
焦ってた想いも もうふわふわしたりしないよ
指で書いた ハートマーク

メンバーが歌うキーも高めです。
けれども、曲を通して聴くとそんなに甘ったるさを感じません。
歌詞カードだけ読んでいるのと実際に聴くのでは随分と感じ方が違います。不思議です。

もしかしたら、伴奏とのバランスが程よく合っているのかもしれません。

この曲はおそらくベースでしょうか?低音の主張がとりわけはっきりと聴こえてきます。
伴奏の低音と歌声の高音によって曲としての音域を広げるとともに、両者が微妙にかみ合って気持よく聴こえるのかもしれません。

ひとたびベースの踊るようなメロディに耳を傾けると、そればかりを追ってもしまいます。
アッパーチューンでいかにもアイドル、といった曲ではあるのですが、ベースに裏打ちされる音にも魅了されるのです。

一方、歌声のキーの高さでいえば、Bメロのサビ直前。
ソロパートなのですが、ここは特に高音続きで非常に難しそうです。
けれども、ここのパートを担当するメンバーは楽しそうに歌います。
あくまで個人的ですが、YouTubeに上がっている過去のライブ映像の数々を見ていても、それは画面越しに伝わってきます。

ところで、「じゃじゃ馬」のリリースからは6年以上、転校少女*の持ち曲となってからでももう3年以上経っています。
今回の記事では「継承」という観点書きましたが、あくまで今歌われている「じゃじゃ馬」は単なるカバーでは無く、もはやほかでもない転校少女*の曲であるということだけは最後にことわっておきます。

アイドルの世界で、あまりに「継承」ばかりになっても、それはそれで曲の価値が薄れてしまうような気がするのですが、たまにはこうして歌い継ぐ、というかそのグループの曲にしてしまうこともアリなのでは、そういったことを思わせてくれる一曲です。

見出し画像:転校少女*公式ツイッターアカウント(@tenkoushoujo)より


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