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【アイドルファンインタビュー#5】タイトル未定(かっしーさん)

取り上げるにあたって、少しだけ葛藤がありました。
2021年末の楽曲大賞ではアルバム「青春群像」がアルバム部門の一位、さらには推し箱(グループ)部門でも一位を獲得。
翌2022年のTOKYO IDOL FESTIVAL 2022のメインステージ争奪戦では優勝という最大の祝福までも与えられました。
そして2023年には全国流通盤のCDを2枚同時リリース、9月にはZepp Sapporoにてワンマンライブ開催予定と、順調すぎるほどにステージは大きくなっています。
北海道発のこの4人組はもはや、地方アイドルやローカルアイドルの枠で語られることはなくなりました。
このグループはパフォーマンスもさることながら、歌詞やSNSなどで発する言葉を大事にしてここまでやってきたという印象が強くあります。
小さく消えそうな言葉をより合わせ、やがてストーリーという確かな太い糸にしていった。
グループの歩みに感応する人たちは積極的に自らの言葉を共感の糊で補強し、4人組のストーリーに参加していきました。
音楽を耳で感じて楽しい!という一時の快感のみに留まらず、時として自分の生き方に照らして深く考え込むという楽しみ方が多くみられている気がします。
そうして共感の輪を広げて大きくなっていったグループです。
それだけに悩みました。
中途半端な理解で書いていいものだろうか。
強い言葉を使わず、読んでて嫌な気分になる人を出来るだけ生まないようにというのが、自分がnoteを書く上での最大の決め事なのですが、いくつもの答えが有りそうなテーマを一つの解だけを頼りに押し通してしまうのも気が引けます。
解釈違いだと思われてしまうのではないか。
かといって、あらゆる方向に配慮し、どうともとれる文章にしてしまうと記事に”顔”がなくなってしまいます。
とはいいつつもこうして記事に残しているのは、その決心がついたからでもあります。

フォロワーさんを中心とした音楽ファンの方へのインタビュー第5弾。
今回お願いしたのは、かっしー(@kasimasy)さん。
おススメグループとして挙げていただいたのは、タイトル未定というグループです。

かっしーさんもまた深く考え込まれる方の一人で、SNSやブログを通して積極的にタイトル未定に関する記事を発信されています。

個人的に、タイトル未定ファンには語る方が多い気がしているのですが、よく考えてみればかっしーさんのイメージがあまりに強いからかもしれません。
zoomにて初対面でしたが、内容濃く語っていただいたのと、ブログの内容が充実しているので、切り貼りするだけで十分なほどに素材が集まりました。
このインタビューは自分のように、ライブを数回しか見たことがない人や、最近よく聞くけどどんなグループなのかまるで知らないという方々にとってはかなり重要な道標になると思います。

※自分の様々な事情により、インタビュー(4月下旬)からかなり遅れてのアップとなってしまいました。
その後タイトル未定やかっしーさんの心情にも多かれ少なかれ変化はあったかと思いますが、4月現在までの感情を記したものとお受け取りください。


「アイドルを好きになった始まりは、モー娘。が一番盛り上がっていたころ。そのくらいからちょっと興味を持ち出したのが始まりですかね。当時は東京で学生していたので現場とかも身近で、ファンクラブにも入ってましたし、オタ仲間もその中で結構できて。
仙台が地元で、2011年に帰ってからはなかなか追いきれなくなったんですけど、今度は地元のアイドルが気になりだしたんですね。
当時は結成して間もなかったDorothy Little Happy(以下DLH)を聴いていて、ライブアイドルを観始めたのはそのころからでしたね。
それから妹分的なグループとしてParty Rockets GT(以下パティロケ)を中心に追いかけていって。」

タイトル未定は詞を大切にしている印象ですが、そのころから歌詞を中心に聞いておられたんですか?

「いや、特に重視していなかったかもしれないですね。ただ結構そのころから曲の良さで見ているところはあったのかなって思います。ライブだけで盛り上がれればいいやって感じではなくて、日常で不意に聴いてテンションがあがるとか気持ちよくなるとか、音楽として好きなグループを見ていった感じ。」

東北発以外のグループにも、曲の質の良さという観点から目を向けていました。

「あとアイドルネッサンス。2015年か2016年に仙台で東京のグループが集まる対バンライブがあって、そこで生で観てやっぱこのグループいいなと思いました。今度はアイルネも噛みだすという感じで。」

ライブアイドルの世界は縁故の比重がそれなりに大きく、分かりやすいところで言えば一度グループを辞めた人が別グループで復活するなど、意外と狭い世界だなと思うことがよくあります。
自分も昔好きだったグループのメンバーがアイドル引退後、現在好きなグループの振付師をつとめているという例がありました。
一つのアイドルグループの寿命は一般的なアーティストと比べるとそう長くはありませんが、ずっとアイドルファンを続けていると思わぬところで繋がりを知り、そういったところも醍醐味だったりします。
DLHとアイルネを推していたことも、後に意外な形でタイトル未定と結びついていくこととなります。

「パティロケ中心だったんですけど、やがて東京に行きしばらくしたら解散しちゃって(事実上の解散が2020年2月)。
それからちょこちょこかいつまんで見ていてもなかなかハマるグループっていうのはなくて、そうして数カ月後ですよね。
タイトル未定というグループが出来るっていうのを知ったのは。
ツイッター経由で初めて見たんですけど、タイトル未定ってまず名前が気になるじゃないですか。
色々調べてみたらコンセプトとかがその時の自分にフィットするものがあって。
最初に『踏切』という曲が公開されたんですけど、聴いてみたらDLHやアイルネの系譜というか、似たようなものを感じて、ちょっと見てみたいなって思ったのが始まりかもしれないですね。」

ロングスカートの衣装で清らかなイメージのある3組は確かに、どこか共通点があるように見えます。

「結成のタイミングがちょうどコロナ禍だったのでお客さんを入れられず、配信でデビューライブをしたのが2020年の5月になるんですけど、その時に『踏切』と『いつか』が公開されました。新人グループだからある程度ハードルを低く、そこまで高いものを期待せずに見たんですけど、その低い期待値をグンと超えてきたというのが直感としてあって。」

かっしーさんの推しは阿部葉菜さん。
初めて観たときから一貫しています。

「知識もないままステージだけを見た印象で、歌にしても表情にしても阿部葉菜さんがなんか一番惹かれるものがあったというか。それはもともと彼女がアイドルをしていたからっていうのもあったと思うんですけど、一番目を引く存在で、ちょっとこの子気になるなっていう感じがあったんですよね。」

「配信ライブは6月にも同じような形で開催され、続いて7月に札幌で初めてお客さんを入れたライブが開催されました。そこが本当のデビューライブということになるのかもしれないんですけど、そこで自分もやっぱり見てみたくて札幌まで飛んでいった。」

それまでかっしーさんは北海道に行ったことはおろか飛行機に乗ったことすらもありませんでした。
「行く理由がなかった」からこれまで機会を逃していたそうですが、コロナ禍まっただ中で札幌外に来てくれる見込みが立っていなかったことと、この新人グループは何か違うのではないかという直感が「衝動」となって背中を押しました。

タイトル未定が初めて東京にやって来たのは2020年10月。
そこからは「大体月に一回」のペースで東京遠征を繰り返し、じわじわと認知度を広げていくことになります。
東京のみならず他の都市圏に行くこともあったと思いますが、移動手段は飛行機が主で、初めて新幹線に乗ったのは意外にも遅く、2022年の年明けでした。
どうしてこんなことを知っているかというと、自分が初めてタイトル未定を見たのが大阪から東京に新幹線でやってきたまさにそのライブだったからです。

コロナも気にしながらの遠征を少しずつ重ね、ファンの間だけでなく、「楽曲派」と呼ばれる一定の層を中心にタイトル未定の名が全国区になりだしたのもこのころでした。
自分はこの時期をリアルタイムで見られていないので、詳細をつぶさに振り返られずあっさりとした触れ方にならざるを得ないのは非常に残念なのですが、DLHよろしくストーリーを描いて共感の輪を広げていきました。
その結果、2021年の楽曲大賞にてアルバム部門・推し箱部門で2冠を獲得したのは先のとおりです。

「一つのターニングポイントはやっぱり楽曲大賞なんじゃないですかね。ライブを観てタイトル未定は良いぞって人は増えていったんですけど、とはいえライブを観ている人なんて限られるわけじゃないですか。
それよりも、ライブ外で結果が数字として出てくるとステージが変わったのかなと実感しますよね。楽曲ファンの注目を集めるきっかけになったでしょうし、本人たちはもちろん、ファンも盛り上がった。」

アルバム「青春群像」は当時ライブ会場などでの限定版として売られているのみで、全国流通されていませんでした。
サブスクには残っているのですが、フィジカルなCDとしてはライブに何度も足を運ぶコアなファンしか手に入れられなかったのです。
ところが、人気が高まるにつれて「やっぱりCDが欲しい」という要望が多くなってきたのでしょう。
この9月に、現メンバーで再録・リミックスを加えた全国流通盤がリリースされることが発表されました。
まだ芽が出る前の初期のファンだけが手にできたプレミアものということにしておいてもよかったのかもしれませんが、いずれ札幌ドームを目指すグループはそれよりも、より多くの人の手元に思い出が残ることを優先しました。

先の通りかっしーさんは長らく仙台に住んでおられますが、タイトル未定が仙台にやってきたことはあったのでしょうか。

「仙台はね、一回だけ来たんですよね。2022年にツアーを行っていて、それに付随してアコースティックツアーというのも同時に回っていて。
作曲で関わってくれている青葉紘季さんがギター、あとピアノに松浦はすみさんが入り、メンバーもお客さんも全員着席で、歌を聴かせるのがメインっていうライブでしたね。
仙台は二部制だったんですけど、第二部がそのアコースティックライブ。
第一部がDLHとのツーマンライブでした。
メンバーはあの頃から全然替わっちゃいましたけど、好きだったDLHとのツーマンというのももちろんですし、これもちょっと運命的だなと思うんですけど、ライブの日が7月18日だったんですよね。札幌でのデビューライブのちょうど2年後。
自分自身も難しいとは思いながら仙台に来て欲しいとずっと応援してきた節があるので、ちょうど2年たってようやく来てくれたなっていうのが感慨深かったです。」

これ以降も今までかっしーさんは変わらずタイトル未定の応援を熱心に続けておられるわけですが、運命的なめぐり合わせを経験したことで「一個完結した」ような思いはさすがにあったようです。
ブログから受ける知的な印象通り、実際にお話してみてもかっしーさんは冷静に言葉を重ねられていたのですが、この思い出話をされるときだけは熱っぽく語っておられました。
それだけ大きな出来事だったということです。

その時のブログです。

「アコースティックの何が良かったかというと僕らもじっくり聴けて嬉しいですし、メンバーもね、表現力を鍛える場になるというか。上手じゃないとなかなか聴かせられない(筆者解釈=アコースティックの場がそもそも設けられない)ですしね。」

比較的ライトな目線でタイトル未定を見ていると、タイトル未定の曲にはひたすら「自分」とか「私」といった単語が出てくるような気がしています。
頻出するということはそれだけ重要視しているということ。

心臓の音が聴こえるくらい徹底的に自らと密着し、向き合っている姿が印象的です。
ガンバレワタシ」では今にも投げ出してしまいそうな自分を「今日もよく頑張りました」と一番の理解者でもある自分が慰め奮い立たせる様子が、北海道の大草原が思い起こされるようなゆったりとしたカントリーミュージックで表現されていますし、デビュー曲「踏切」では「僕はずっと息を切らしては 僕を探し続けていく」の語に、名はない未来への希望と少しの畏れを感じます。

溺れる」は初めて見たときに大きな衝撃を受けた曲でした。
先に”自らと向き合って”いる曲が多いと書きましたが、実生活においても生半可に”向き合う”という単語を使ってはいけないと思わされるほど強く心に響いてきたのはこの曲です。
つまらない現在地や現実に溺れそうになりながらコンテンポラリー風のダンスでもがく姿はどこまでも苦しく、さえない日常を表しているのか歌い終わりとリンクするピアノの音は無情に拍を刻みます。

「確かに初期の頃は自分と向き合いながら気持ちを出していく感じの曲が本当に多いですね。誰にでもある、一歩踏み出したい気持ちと怖い気持ちとの間で自分に問いかけ、ああでもないこうでもないというのを出しているなって思ったんですけど、だんだん外に向いてきてもいて。『鼓動』以降、『青春群像』とかでも、自分だけじゃなくて仲間とかあるいは応援してくれるファンとか、少しずつ視点が変わってきている気もしているんですよね。」

気付けば助けられてたよ あなたの言葉に
Wow wow
歓びを分かち合えたら なみだはもういらない

タイトル未定/鼓動

「初めての全国流通盤CDとして『』という曲を出しましたが、それもメンバーが2つ目のデビュー曲という言い方をしているように、誰かに向けて届けたいみたいなところがあるのかなと思いますね。『待っていてね 君に会いにいくから』みたいな。」

「『ガラスガール』という媒体がインタビュー記事を出していて、そこでメンバーが深く語っていたのが『タイトル未定って歌詞がクサいよね』ってエゴサしたときに見つけたらしいです。でもそれは悪い意味ではなくて『クサいけど、タイトル未定が歌うと嫌な感じがしない』とも書かれていて。説明はすごく難しいですけどそうなんだよなって思いますね。そういうところに惹かれて、タイトル未定ってすごいなってことを語りたくなる人が多いんじゃないかな。」

そうやって考えてみると、ポエトリーリーディングが入っている「最適解」も、外に視線が向き始めた曲のひとつなのでしょうか?

「『最適解』はねぇ、思い入れが強くなりすぎてしまっているんですけど、あの歌詞はただのフィクションじゃないんですよね。ある少女がどこかのアイドルのバックダンサーとしてステージに立つことになって、そこで自分を思い切り表現してみたらすごく楽しくて幸せで。でもバックダンサーの自分たちよりもアイドルさんのほうがもっともっと楽しいんだろうな、憧れのアイドルになりたいなって思いだしたのが始まりなんですね。その中で2022年7月っていう具体的な日付が出てくるんですけど、実際にタイトル未定が(当時)過去最大規模の会場でワンマンライブをやった日なんです。演出としてキッズダンサーの子たちも出ていて。それから2番の歌詞では『時は経ち2028年、私は上京した』っていう一節が出てくるんですが、フィクションはフィクションとしても、本当にタイトル未定に憧れた女の子がどこかにいて、数年後にアイドルになる未来が訪れるんじゃないかって想像してしまう。」

「あとはもっと言うと...歌詞の中に阿部葉菜さんが過去自身のnoteに書いたワードとかが入っているんですよ、まるっと。そういうのもアツくて。」

阿部さんの投稿がまるごと採用されているのは例えばこんな歌詞です。

(でも)そんなことなかったよ。
夢は叶うんだよ!楽しいよ!って。
堂々と堂々と
堂々と堂々と
今は胸を張って言ってあげたい。

タイトル未定/最適解

阿部さんがもっと直接的にグループの作詞に関わっていったことはあるのでしょうか?

「あるんですけど、タイトル未定としてではなくソロ曲でですね。生誕祭で歌った『タイミング』という曲で、彼女が大事にしていることとして”すべてのタイミングには意味がある”っていうのがあるんですけど。ファンから『もっと早く出会いたかった』とよく言われるそうなんですけど、そういうときに阿部さんは『でも出会ったタイミングには意味があるんだよ』とよく言っているそうです。もしかしたら便利な言葉だからっていうのもあるのかもしれないけど、彼女自身タイトル未定に入る経緯を踏まえてもタイミングは大きかったんだろうなと思います。」

「というのも彼女はもともとWACKが好きで、前のアイドル卒業後にWACKのオーディションを何度も受けて、けれども毎回落とされていました。絶望的な気持ちになっていたところ、2019年10月に今のプロデューサーから新グループ立ち上げのお誘いを受けて、『歌える場所があるなら』とあまり考える間もなく地元の埼玉から北海道に飛んだ。コロナの直前だったので、決断がもう少し遅れていたら北海道に行くこともなかなか叶わなかったかもしれないですし、埼玉から出たことがない彼女が遠い遠い北海道まで行くという決心もぶれていたかもしれません。そういう状況一つ一つも、あとから振り返ったらタイミングだったのだろうなと思うんですよね。」

阿部さんはメンバーの中でも特に言葉による発信を大切にしている印象で、「心を言葉に」する彼女に共鳴してグループを応援している人も多いはずです。

「もともと文章を書くのは好きでしょうし、歌詞も書いてみたいと言っていたのが『タイミング』や『最適解』で形になった。タイミング以外に阿部さんが大事にしている信念として、『夢や目標は口に出す』というのを言っていて。やりたいことをやりたいって言っていく子なんですよ。作詞に携わることだって思いを運営に彼女なりにきっと伝えて、表に出していった結果なのだと思います。やりたいことを口に出すなんていろんな人が言うことではあると思うんですけど、言っていくことで運命が動いていくことを実感として強く思っている節はあるんですよね。そう、言葉の力を信じている。」

今のかっしーさんの発信とも通じるところがあります。
阿部さんを推しにしているのも大いに納得ですし必然だと思うのですが、一方で阿部さんにビビッと来たときはブログのことも彼女のパーソナリティも知らなかった。
これが非常に因果めいていて面白いところです。

「自分自身が半分面白がっている部分もあるのかもしれないですけど、掘れば掘るほどパズルのように繋がっていって。このグループはやっぱり面白いなって思うんですよね。阿部さんを推しているのも、思いを出さないで秘める子よりは出してくれる子のほうが理解もしやすいですし、自分としては付き合っていきやすい気はしますね。」

3年間の歴史を振り返り、推しメンについて語っていただいたあと、残る3人のメンバーについてかっしーさんなりの魅力を紹介していただいてインタビューは終わったのですが、「一個思い出したのでいいですか?」最後にご自身のブログ・SNS発信の源泉を語っていただきました。
こういう方が今のタイトル未定を支えているのだというn=1の重要な傍証になると思ったので、3人の紹介に割り込む形で記録してみます。

「僕はインディーズバンドを聴くのが結構好きなんですね。探すのが好きというか。フェスに行くにしても流行りのバンドには行かずに、今あまり注目されていないけど良いバンドはいるってことを発信もしていきたいっていうのがあって。それでちょっと共通しているなと思ったんですけど、地上のアイドルってあまり興味ないんですよ。聴きはするけど応援って感じではなくて。やっぱりタイトル未定を好きになったのも、はじまりがまだ芽も出ていないデビュー時で、そこに可能性を感じたからこそ見ているところはあるなって思ったんですよね。」

「現状で満足してただ存続していればいいやってグループではなく、もっと大きな会場でとか、いろんな人に届けたいなどという思いを胸に、言葉だけではなくてパフォーマンスなり作品なりで注目できるグループを見ていきたい。今後芽が出てきそうだなっていうグループを自分の目で見て探しているっていう節はありますね。」

インタビューをお願いする少し前から、かっしーさんはタイトル未定の楽曲一曲ずつにフォーカスして魅力を語りつくしていく連載企画をnoteにて行っていました。

「改めてタイトル未定をなんで好きなんだろうなって思ったときに、最初からずっと一貫して人生とか生き方についての曲が多い。人生のステージで色々な分岐点があると思うんですけど、タイトル未定はその一つ一つに対して支えとなってくれたり背中を押してくれるような気がする。それもあって今は歌詞を一番重視して聴いています。そして一曲一曲かみ砕いてみると『こういうところに心動かされているんだ』ってことを再認識することがあって、そのために書き始めたのがひとつありますね。もちろん自分の表現欲求もあるとは思うんですけど、それを越えるくらいタイトル未定がこんな思いを届けようとしているんだよってことを伝えたくて今は書いています。」

ではここから阿部さん以外のメンバーへの思いや印象について。

谷乃愛さん。途中加入組です。
あだ名は「タニヨ」なのですが、なぜタニヨなのかは明らかにされていません。

「途中から入った子ですけど、とはいってもデビューが2020年で加入が2021年2月なので、ほとんどオリジナルメンバーの感覚でいるんですよね。まずアイドルが大好きっていうのが一つ軸としてあって。乃木坂が好きで齋藤飛鳥さんが特に好きなんですけど、それ以外にも広くアイドルを見ている。だからというのもありますが研究熱心なところがあって、アイドルを見て自分にどう取り入れられるかを常に考えている。歌もダンスも実力を上げているのを肌で感じるんですよね。一つ具体例を出すと、参考にしているアイドルがいるっていうのを以前聞いたことがあって。その話を踏まえてステージを見たときに、僕はRingwanderungのみょんちゃんなんじゃないかと思ったんですよね。プライベートで仲良くしているって話を聞いたこともあったし。それで当時特典会でタニヨに『あのとき言ってた参考にしているアイドルってさ、みょんちゃんなんじゃないの?』って聞いたら『なんで分かったの!?』って言われて。」

Ringwanderungのみょんさんです。
みょんさんの特徴は感情が身体を支配したかのようなパフォーマンス。

「みょんちゃんはかなり感情が出るじゃないですか。それをトレースしている感じを僕としては受けたんですね。それまではなんというか綺麗なダンスをしていた谷さんが、みょんちゃんを見習ってダンスや表情に感情を出すようになった。そうして人の良いところをいい意味で盗んでいる気がするんですよね。可愛らしい子で凄くアイドル力があって、かついろんな見せ方を見つけて表現力があって、それでいてキャラクターにはどこか抜けたところがあり、愛される存在かなって思いますね。」

続いて冨樫優花さん。

「阿部さんとともにオリジナルメンバーの一人です。彼女はもうなんというか天才型。もちろん本人はものすごく努力しているに決まっているんですけど、でもやっぱりステージ見たら一目瞭然なんですよね。歌もダンスも誰にでもできる表現ではない。曲の中に没入していける力が人一倍強いような気がしていて、そういう意味で僕は天才型だと思っています。特に彼女のらしさが出ているのは『薄明光線』だと思っていて。あの曲は一個深く入り込んでいる感じがあります。『溺れる』なんかもそうかもしれないですね。ステージを見ればハマる人はハマるよなって感じ。表現者としての魅力にどっぷり浸かっちゃうんでしょうね。」

自分も、冨樫さんの憑依したかのような表現には目を見張る物があると思っていました。毛先を重めにカールさせたボブヘアは80年代の聖子ちゃんカットを想起させ、初めて見たとき昭和のアイドルっぽい風貌だなと思っていたら「スローモーション」などを歌っている動画がタイムリーにアップされていました。
昭和歌謡が好きで歌うことを武器にもしているという両輪があってその動画シリーズが生まれたわけですが、イメージと中身があまりに一致しすぎていて、70~80年代に青春時代を過ごしたおじさん世代なら確実に好きになると思います。

「先日ラジオでもそんなお便りが読まれていたんですけど、やっぱりルーツとしては松田聖子さんが大好きで、聖子ちゃんカットは意識しているそうです。2022年のTIFの企画で、アイドル対抗カラオケバトルって企画があって、もう何十人のアイドルが配信サイトで競い合っていたんですけど、冨樫さんは見事一位を勝ち取ってTIFのエンディングのステージで中森明菜のスローモーションを歌いました。この曲自体彼女は十八番にしているくらい大得意中の得意だと思うんですけど、歌唱力もとんでもない。冨樫さんがいる強みはタイトル未定に強くあるんだなって感じますね。」

最後に、川本空さん。

「(インタビュー時点で)加入から一年経つんですけど、一つは声質がわかりやすく独特です。それでもメンバーの中にしっかりと溶け込んでいるのは単純に努力の成果。すごいなって思いますし、あと最近称賛されているのが『』ですね。 動きはあまりなくてメンバーの表情をずっと追っていくようなMVなんですけど、そこでの空ちゃんの表情がすごいと言っているファンの方が結構いて。シリアス系も行けるってところがだんだん芽生えてきている感じなんですよね。基本真面目なんだと思います。今やっているかわからないですけど、特典会のときにマイメモ帳を持ち歩いていて、多分話をしたファンの名前とか内容とかを書いていたと思うんですけど、そういう努力も惜しまない子なんだって思いました。」

」の川本さんに改めて注目してみました。
歌っているかいないか判別しにくいほどかすかに唇が動くリップシーン。ものすごく単純な見方をすれば、背景である北海道の雪降り積もる厳しい冬の寒さを表現しているのかなと思ってしまいます。
一般的なアイドルのMVとも全体的に撮り方が異なる気がします。綺麗なスタジオの中で、首から頭のてっぺんまでしっかりと映し切るのが通常のリップシーンであるならば、顔色を失いそうな寒さのなか、頭の上部1/3くらいを切ったショットにしている「栞」の撮り方は特殊と言ってしまっていいでしょう。
リップシーンでかすかに唇を動かすのは4人のメンバーともに共通なのですが、川本さんの真っ直ぐ見つめる黒目がちな目はもう一つの言葉を語っているように見えました。

インタビューを通し、外側から見えているものはたったの一部分だったと気付かされました。
これからのタイトル未定は何を見据えているのでしょうか。
具体的な夢を描きながら、このインタビューを締めたいと思います。

「『花』のMVで、メンバーが部屋に集まって輪になって何かを書いているシーンがあります。その中には『札幌ドームに立ちたい』っていうのが書いてあって。目標や夢を口に出すとは言っていてもなかなか自信が持てなかったのがこれまでの彼女たちで、目標にする会場も特にないですっていうふうに言っていたんですよね。自分たちの歌や作品を届けていければいいやって言っていたのが、具体的な会場を言うようになった。これはひとつ自信の現れでもあるなって思うんですよね。YouTubeに上げたMVはこれまでにないような伸びを見せました。バズリズムのOPテーマに採用されていた『花』のスタジオパフォーマンスで地上波デビューも果たしました。ここからどんなきっかけで火がつくか分からないですからね。」

見出し画像:タイトル未定公式Xアカウントより改変


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