【ライブレポ】タートルリリー 清藤恵 21st生誕祭~真っ直ぐ。~
9月18日(日)、新宿ALTA Key Studioにて「清藤恵 21st生誕祭~真っ直ぐ。~」が開催されました。
5人組アイドルグループ・タートルリリー(かめリリ)のオリジナルメンバーであり、9月11日に21歳の誕生日を迎えた清藤恵さんの生誕祭です。
対バン形式で開催され、4組のグループが出演した後、ラストに1時間枠で登場したのがタートルリリーでした。
今回はこの1時間についてのライブレポになります。
アルタという聞きなじみあるフレーズでピンとくるかもしれませんが、ALTA KeyStudioはかつてはいいともの収録場所でした。
現在KeyStadioのあるまさに7階が実際のスタジオだったらしく、ここで「世界に広げよう友達の輪!」などとやっていたのかと思うと、番組が終わって10年近い今でもその名残がどこかしらにはあるのではないかと思ってしまいます。
そんなお化け番組の拠点は、今では”ファンが育てるライブ”を旗印に、気鋭のアーティストが集うライブ会場へと生まれ変わりました。
自分が行くのは初めてでしたが、「キースタ」という略称でライブアイドルの対バンや単独ライブの会場としてたびたび目にしていました。
場内に入ってみると、目の前には大きな3面スクリーンがありました。
壁ごとスクリーンのような感じで、高さもあります。
直前に出演したアイドールBRAVEの出番が終わり、タートルリリー出演までの10分間の転換時間に入りました。
優先合わせて6×10列くらいある椅子席はほとんど埋まり、間隔をあけているとはいえそれなりの人の入りになっています。
スクリーンには、このように「清藤恵 21th Birthday Live」と大きな文字が踊り、その下には「真っ直ぐ。」と縦に伸びた矢羽があります。
文字や周りの模様の配色が黄色メインとなっているのは、これが清藤さんのメンバーカラーだからです。
よく見たらビジョンが映し出されているのは目前の3面スクリーンだけではありませんでした。
両サイドの、特にスクリーンでもない白い壁にも映像が投影されています。
流石に自分が入ってきたフロア真後ろのドアのところまではビジョンはないようですが、周り一帯を全てスクリーンで囲まれたような不思議な感覚でした。
開演予定は13時30分ですが、準備が整うまでにやや時間がかかったようでした。
10分ほど遅れて暗転し始めました。
いつものダンスSEもなく、5人が出てきました。
清藤さんをお祝いする4人は、「イチコイ」の深い紺色に金や赤のラインが入ったスカートに、トップスを黒基調に黄色チェックの模様が胸元にあしらわれた生誕Tシャツというスタイルです。
主役の清藤さんはというと、生誕用にあつらえた特別衣装を着ていました。
大好きなハロプロを意識したという、色合いも形も全て点対称なオシャレなデザインです。
黒と黄色をメインにした色使いが非常に清藤さんに似合っていて、登場してきた時に違和感が全くありませんでした。
初めて見た時に多少なり生まれてくるはずの異物感が一切なかったのです。
こんな衣装もあるんだと一瞬思ったほどです。
細かく見てみるとかなり装飾も凝っているのですが、派手すぎないところで留まっており、清藤さんの落ち着いた雰囲気と合っていました。
1曲目が始まろうとしています。
清藤さんを一番奥のセンターに据え、そこを起点として広がる扇形のようなフォーメーションとなったのを見て、「Say Hello!!」なのだと予感しました。
歌い始めのこのフォーメーションは他の持ち曲にはなく、コロナ前であれば「このフォーメーションは!」とどこからか声が聴こえてきたかもしれません。
「Say Hello! !」であれば歌い出しのソロは清藤さんです。
注目してみるとこの日の頭はまさにそれで、足を少し開いて息を吸い、歌う姿勢を見せていたのは他でもなく清藤さんでした。
恐らく過去ライブで数え切れないほど披露し、グループの中心となっているであろう曲を大切な1曲目に置くという清藤さんのチョイスは、自らが始まりのソロを歌うということもあってまったく不思議ではありません。
誰もがそう疑わなかったはずです。
ところが、予想はあっさりと覆りました。
口にした歌詞は「Say Hello!!」のそれではありませんでした。
変わりに飛び出したのは、「ひとりで生きられそうって…」
Juice=Juiceの1番のヒット曲と言ってもいい「「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?」
本家では佳林ちゃんさんが担当する、曲名から始まるパートを歌いだしました。
ハロオタの清藤さんのこと、通例では2曲ほどカバー曲を披露する過去3回の生誕祭でもハロプロ祭りだったそうです。
4回目となるこの日も間違いなくハロプロのカバーがあるとは言われていましたし、過去の選曲からすると「一人で...」は高確率で入ってくるであろう(というかほぼ確)とも言われていたのですが、まさか1曲目からいきなりとは思いませんでした。
しかもその曲が偶然とはいえ「Say Hello!!」と全く同じフォーメーションからの始まりです。
待ち構えていたところに聞きなじみのない歌詞が聴こえてきたことの驚きと、しかし選曲を知って「やはり」と納得したような空気が、フロアにちょっとしたざわめきを起こしていました。
パート割りも全て清藤さん考案なのでしょうか。
このメンバーはまなかん、このメンバーはあーりーといったふうにイメージを当てはめてタートルリリーの5人に割り振っていたのかもしれません。
清藤さんに続いて一人ずつソロパートを歌って歩き出し、最初の扇形が形を変えていきます。
ハロプロは非常にパフォーマンスのレベルが高いので、カバーにあたってせいぜい1カ月程度しか取れないであろう準備期間のうちに詰め込むのは大変だったと思います。
振りがどうしても入らず心が折れかけたという投稿も見かけました。
ただ、それは練習の時までの話で、本番ではそんな苦しみを一切見せないパフォーマンスでした
自分が思うタートルリリーの魅力のひとつに、グループ全体の精神年齢の高さがあります。
慣れない曲をやる直前のMCでの「緊張する~」という呟きがどうもアンバランスに感じるくらい、全体として落ち着いていて出来上がっています。
大人っぽいよねと言われることは何度となくあったのだろうと思っています。
カバーしたこの「一人で生きられそう...」、恐らく特に共感を呼んでいるのはティーンの女子よりも20を過ぎ、社会に出て数年経ったくらいの女性だと思っています。
グループの平均年齢からすればもう少し上(年齢というものがクラシカルな指標になっていることは分かっていますが)くらいのイメージなのですが、カバーのクオリティはもちろんのこと、なによりパフォーマンス中の雰囲気が曲と合っていました。
背伸びをして大人っぽく飾ったという風ではなく、そのままのたたずまいが似合っていたのはこれぞタートルリリーという感じです。
ここからは少しメンバー各論へ。
有川奏絵さんはこの曲での声の出し方をグループの曲とは変えてきているような気がしました。
声量でなんとかなってしまうきらいもあるライブアイドルの中で、優しめの声でそのポジションを確立している有川さんですが、この日の序盤は強めにきていました。
佐伯鈴さんを見ていて思うのが、佐伯さんも佐伯さんで声がかなりいいということです。
特に中低音で独特の伸びがあります。
清藤さんという存在がいるので歌がフィーチャーされることがあまり少ないのだと思いますが、ぜひもっと光を当ててほしいところです。
その後の「ダイヤの翼」「空に青」、そしてMCを挟んだあとの「ねぇ、もっと、、。」も、タートルリリーらしさが存分に出ていました。
後ろのビジョンも大活躍で、「空に青」は空のVJが、「ねぇ、もっと、、。」での妖艶なエフェクトがかかっていました。
辻菜月さんのダンスはしなやかで、挑発的な笑顔ではきよりんさんが一番でしたし、主役の清藤さんはその表情です。
ふと横を向いたときの表情が映えていました。
自分が観たかったライブの形を見せてもらった気がして、まだ前半にも関わらずここだけで大分満足していました。
大人っぽいとはいうものの、いやらしい感じにもなっておらず、ここのバランス感覚も素晴らしいです。
こうしてみると時間に制約がある対バンライブで伝えきるのがいかに難しいかが分かります。
さてこの日の緊張ポイントは、この直後にやってきました。
カバー曲です。
静かに告げたのは「都会っ子 純情」。
℃-uteの、デビュー3作目のシングル表題曲です。
生誕祭の情報が解禁されたときから、清藤さんからは℃-uteの曲をカバーすること、そしてその中でも℃-uteの活動前半のころの曲をやるというほのめかしをしていました。
そのころの℃-uteが好きだった自分としては、ピタリと当てたかったのですが、解散から5年近く経ち、他のアイドルにどんどんハマっていく中で記憶にほこりを被っていっている曲も多くあります。
復習がてらYouTubeを漁っていったのですが「これ以上嫌われたくないの」や「Jump!」などを見つけたときは懐かしさにやられてしまいました。
ファンの間で人気だった曲を記憶とともに思いめぐらせつつ、いくつかの曲を頭に浮かべながらこの日を迎えたのですが、「都会っ子 純情」は盲点でした。
デビュー3作目でありながら、レコード大賞で披露して新人賞を獲得した曲ということもあってグループの立ち上げのイメージが強いこの曲。
ハロプロにありがちな、高すぎる歌詞の年齢設定に対してまだ幼いハロプロメンバーがつま先立ちのような極端な背伸びをしてパフォーマンスするという曲ですが、J=Jの曲同様、背伸びをせずとも大人びた雰囲気を保っているタートルリリーメンバーにとってはちょうどいいくらいでした。
後から知りましたが、振り入れで苦戦したのは先のJ=Jのほうではなくむしろ「都会っ子」だったそうです。
別の曲にすることまでよぎったらしく、真似できるところだけ気楽にフリコピしているような立場の自分からしたらそこまで難しいなんて考えが及びませんでした。
「はしたない子じゃ ないんだよ」
このパートと、最後の5人体制となってからのリアレンジバージョンのセリフパートはまいまいこと萩原舞さんの担当でした。
まいまい推しの清藤さん、確かどちらのパートもカバーしていました。
ここからの記憶は少し飛び気味です。
披露したのは曲数にして5曲と、いつもの対バンライブ+1曲くらいなのですが、ここまででかなり満たされたような感覚がありました。
カバー曲に対し、想像以上のパフォーマンスを前に呆気にとられてしまったところもありました。
「days」からの「シ・ゲ・キ・チュ・ウ♡」、事前の曲振りがないバージョンは初めて観ました。
ひと繋ぎだとかなりスムーズな流れです。
お祝いをするかのように、ビジョンが黄色に染まっていました。
ここから「イチコイ」までのブロックは、2曲の難易度の高い曲をやり終えたことでリラックスした様子に見えました。
ここで一旦5人は捌けます。
無人のステージ、ビジョンにはなにか映像が出てきます。
まったく明かされることのなかった、この日一番の見どころでした。
清藤さんが密かに制作を進めていたカバーMVがこの日の20時にYouTubeに公開されるというお知らせでした。
カバーする曲は大原櫻子さんの「瞳」。
生誕祭のサブタイトルが「真っ直ぐ。」であることを思い出しました。
歌詞がパッと浮かんだわけではないのですが、真っ直ぐな瞳という、一度くっつくともう切り離せないような言葉が頭をかすめました。
この二つの単語は非常に相性がいい。
ティザーが流れたあと、清藤さんが出てきました。
改めて一人でステージに立つと、先ほどと同じ生誕衣装なのにひときわ光っているように見えました。
今から「瞳」を披露します。
グループを支える清藤さんの歌声は宝です。
一曲通してその歌声を聞けるのだと思うと震えてきます。
胸に手を置いたまま歌う姿は、見た目通り実直でした。
歌声には張りがあり、どこまでも真っ直ぐです。
歌詞以上のメッセージを伝えようとか、上手く見せようという欲がなく、ただ歌うことが好きでこの曲が好きだからステージにやってきたという風に見えました。
「瞳」のサビにはこんな歌詞があります。
「まっすぐに夢を追いかける 君の瞳が大好きだよ」
ここにさしかかって、ようやく生誕タイトルに込められた意味を知ります。
真っ直ぐな純粋さを感じると同時に、言い表しようのないものが胸に広がってきました。
まさか涙が出てくるとは思いませんでした。
清藤さんのほうを見ていても、溢れてくる感情を押しとどめながらのパフォーマンスのように見えます。
いつもなら安定していて楽々出せるような音域も震えながら出しているような気がしました。
ライブ後に公開されたカバーMVを見ると、河川敷を歩く清藤さんの姿がありました。
本家のMVは、高校サッカーの応援歌になったこともあって駒沢公園のサッカースタジアムでの撮影でしたが、草野球のスコアボードなどが出てくるカバーMVはアナザーストーリーのようです。
昼の青空だった天気が曲が進むにつれて薄暮に近づいていき、一曲の中での時間の経過が映し出されていました。
再びライブに戻ります。
本来であればカバー曲の時は清藤さんだけでなく全員が出てくる予定だったようなのですが他の4人はここでは出てきませんでした。
出てこない4人はケーキを持ってじっとスタンバイしていたのでした。
曲が終わると同時に飛び出してきます。
ビジョンには「Happy Birthday」の文字が出てきて、ここでもお祝いムードに。
再び空気がゆるみます。
ほどなくして最後のブロックへと移りました。
「Say Hello!!」「真夏の空とキミ」の代表曲2曲です。
「Say Hello!!」で1曲目でも目にした扇形のフォーメーションとなり、清藤さんが少し笑いながら「今度こそ」と言いました。
このあたりからはもう鉄板の曲で、生誕のプレッシャーから解き放たれ、本格的なライブに入ってきた感じだったのですが、自分はここにきてもまだ「瞳」の時の感覚から抜け切れず、呆然としていました。
過ぎていく時間の流れに取り残されそうになります。
予定していた曲をすべて終え、清藤さんが締めのコメントを残しました。
「もっと積極的に引っ張っていけるような一年にしたい。」
カバーMVを出してみたいという願いもなかなか言いだせなかったようでした。
確かに、おとなしめのメンバーぞろいの中でも清藤さんは落ち着いていて、あまり引っ張っていくという感じには見えません。
ただ、オリジナルメンバーとして、そしてパフォーマンスの中核として期するところはあるようでした。
「かめリリはまだまだ真っ直ぐ向上していくので!」
腕を真っ直ぐに伸ばす身振りをつけながら、こう残してライブは終わりました。
この日は非常に心にくるライブで、終わってからもしばらくずしんとした感覚が残っていました。
清藤さんの選曲が見事に自分の知っている曲であったり、それどころか思い出深い曲も多かったことが、良かったという感想で埋め尽くされた理由の一つであることは間違いないと思います。
カバーの「瞳」を聴くと、今でも泣きそうになります。
でも、響いてきたのは単にセットリストが良かったからだけとは思いません、
生誕祭ということで忘れがちですが、この日はほとんど1時間で11曲披露でした。
かなり詰め込んでいます。
ただ曲を進めるだけでもハイペースにならざるを得ません。
ましてやカバー曲が複数あります。
しかしその限られた時間でも、本家に対する最大限のリスペクトと、それと同時にコピーやカラオケではなく自分たちのものにしようという意気を観た気がしました。
ここがすごく伝わってきたのでした。
「瞳」でポロポロとなったのも、良い映画の主題歌みたいなもので、主役はあくまでライブ本編です。
曲の質だけでなくそれらを含めたステージ全体が良かったからこそ、ここまで響いてきました。
これぞ求めていたというライブでした。
順列をつけるべきではありませんが、今まで見た生誕祭で一番でした。
改めて、清藤さんお誕生日おめでとうございます。
見出し画像:タートルリリー公式アカウント(@kameriri_office)画像を改変
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?