黄砂って何が問題なの? -黄砂の健康被害-

note表紙アイキャッチ(黄砂)

1.黄砂って何?

この数日、ネットでニュースで

 「黄砂飛来」

って話題をお見掛けします。

黄砂情報

[2021年3月31日 黄砂情報(気象庁ホームページより)]

「黄砂(こうさ)」って皆さま御存じでしょうか。

黄砂とは『大気・室内環境関連疾患 予防と対策の手引き 2019』によると

東アジアの砂漠域や黄土地帯から強風により大気中に舞い上がった砂塵(さじん)が、偏西風に乗り浮遊しつつ降下する現象

のこととされています。

黄砂の粒子は大きさが数µm(マイクロメートル)から数十µmです。

10µm以上の大きさですと遠くには飛ばずに重力で下に落下しますが、小さな粒子は遠くまで空気中を浮遊することになります。

報告では黄砂が太平洋を横断して、

アメリカやグリーンランドで確認されたこともあるようです。

気象庁のホームページで飛来する黄砂の状況を確認することができます。

日本に飛来する黄砂の大きさは4µmくらいのものが中心です。

2.黄砂の身体への影響

黄砂ニュース

「黄砂が飛来する」「黄砂が観測された」って

ニュースをお見掛けしますが、

一体何が問題なのでしょう。

黄砂と呼吸器・循環器疾患・脳血管障害などとの

関連を調べた研究がいくつも報告されております。

中でも呼吸器疾患である「気管支ぜんそく」との

関連についての報告が目立ちます。

・小児ぜんそくで入院が増加する(AJRCCM 2010;182:1475)
・成人ぜんそくで症状悪化・肺機能低下と関連(Allergol Int 2011;60:267)

少し専門的なお話ですが粒子状の物質が

 -DNA損傷
 -酸化ストレス亢進
 -炎症性サイトカインの産生亢進

などが呼吸器疾患の悪化や発症のメカニズムとして考えられています。

これらの黄砂による身体に対する影響は

2002年以降に台湾や韓国を中心に数多く報告されています。

・黄砂が中国の汚染された大気をくぐりぬけてくると、
砂の小さな粒子の周りに硫酸塩や硝酸塩などの大気汚染物質を一緒にくっつけて運んでしまう

(Atmos Environ 2003;37:4253)

ことが分かっています。

黄砂は飛んでくる「飛来ルート」の違いによって

大気汚染物質を多く含む場合があり、

その際には健康への影響が大きく出てしまうことが考えられています。

3.黄砂への予防と対策

黄砂への予防や対策で重要な3つのポイントは

 ①持病をしっかりコントロールする

 ②外出を控え、外出時はサージカルマスクを着用する

 ③アレルギー性鼻炎の方はさらに注意する

です。それでは一つ一つ解説していきましょう。

①持病をしっかりコントロールする

先に示した『大気・室内環境関連疾患 予防と対策の手引き 2019』でも

・黄砂による疾患増悪の予防で重要なことは、
疾患によらず原病(持っている病気)のコントロールを
しっかり行うことである。

と記載しています。

②外出を控え、外出時にはサージカルマスクを着用する

まず一番重要なポイントは外出を控え、

黄砂との接触機会を減らすことです。

また外出する際には「サージカルマスク(不織布マスク)」を着用することが有効であると考えられています。

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黄砂に対するマスクの有用性を示した報告は見つかりませんでしたが、

10µm以下の粒子を意味する「PM10」に関しては

・サージカルマスクの着用で、PM10の身体への吸入量が減少する
(Sci Total Environ 2016;543:416)

と報告されています。

黄砂の大きさを考えますとサージカルマスクの着用は有効であり、

理論的にはマスクの目がより細かい「N95マスク」はさらに効果が高いと考えられます。

逆にバンダナなどでは黄砂より粒子が大きいPM10ですら有効性が示されていません。

③アレルギー性鼻炎の方はさらに注意する

大人のぜんそくの患者さんを集めた研究で

・黄砂により肺機能やぜんそくの悪い症状を認める危険因子に「アレルギー性鼻炎」の合併がある
(Int J Chron Obstruct Pulmon Dis 2016;11:183)

との報告があります。

呼吸で吸った空気に含まれる物質は、通常は鼻で濾過されて

10µmより大きな粒子は気管支や肺(下気道)には入りません。

花粉症などのアレルギー性鼻炎のある方は、

鼻が鼻水や鼻の粘膜が炎症を起こすことによってふさがり、

口呼吸をすることによって粒子が下気道に入り込んでしまいます。

気管支や肺に黄砂の粒子が入り込む量が増えてしまいますと、

ぜんそく症状も鼻炎症状も悪化してしまうことが容易に想像されます。

したがって黄砂によるぜんそく悪化の予防には

鼻炎を持っているぜんそく患者さんでは、

ぜんそく治療と鼻炎治療と両方が大事になってきます。

4.さいごに

「黄砂飛来」ってニュースを見て、

外に洗濯物を干すのをやめよう、とか

車が汚れちゃうな、とか

いろいろなことを考えているかと思います。

黄砂はただの小さな砂ではなく、硫酸塩や硝酸塩などの

大気汚染物質を一緒に運んできてしまうことが問題になっています。

「黄砂」のニュースを見た時には、

上に挙げた予防と対策を頭に入れて

行動することが肝要と思い記事にしました。

常に皆さまの健康を考えています。

自己紹介

キュート先生 | 田中 希宇人(たなか きゅうと)

医学博士。

総合内科専門医。呼吸器専門医。呼吸器内視鏡専門医。

専門は肺がん、COPD、喘息、呼吸器感染症。

日常診療の傍ら「キュート先生」として

ブログ『肺癌勉強会』、Twitter、Instagramなど

多くのプラットフォームで正しい医療情報発信を行っています。

家では「3児のパパ」として奮闘中(のつもり)。

皆さまの健康寿命を延ばすアカウントを目指していますので、

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