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2010年8月 札幌 4 腹が減るージンギスカン

2010年8月、北海道をツーリング中の夫が、転倒事故を起こした。幸い自損事故で、命にも別条なかったが、粉砕骨折を負い、札幌の病院にそのまま入院という事態になった。手術は、プレートを入れ補強するまでの手術と、プレートを取り出す手術とで、2回に渡った。ワタシは、2010年と2011年に、札幌滞在を余儀なくされた事態に便乗して、観光を楽しんだ。

*2010年と2011年に別のブログに投稿していた記録を転載したものである。


さて今日は何食べよう、と考えたとき、確実に焼肉日和という日があるものだ。その日がまさにそうだった。

焼き網からしたたる肉汁と、もうもうと立ちこめる煙、冷えたビール(実は苦手)のイメージは、比較的涼しい札幌の夏でも効果的だ。
  
わたしが行ったお店はカウンターのみ。夕方6時前に出向いたので、すぐに入ることができたが、いつも入り口には、狭い店内からあふれ出した人の行列ができているそうだ。

引き戸を開けると、カウンターが奥に向かって続いている。丸椅子と椅子の間隔は狭い。どのくらい狭いかというと、となりの太目のお兄さんの腕が時々接触するくらいの距離だ。

奥には中国人観光客が4、5人、座っていて、きょろきょろあたりを見回している。無理もない、わたしだって戸惑っている。

各席ごとに七輪が置いてあり、座ったとたん、おばちゃんが、炭を交換し、火の粉がぱっと舞った。ジンギスカン鍋に脂の塊が載り、荒く切り分けられた、たまねぎがぱらっと上から降ってくる。

1人前のマトン肉が載っている小皿もやってくる。注文を取ったりはしない。他に選択肢はないからだ。あわてて御飯を注文する。
飲み物は?と聞かれて、とっさに、ジンジャーエールと答える。

とても忙しい。となりの男は肉とビールをお代わりして、もりもり食べている。ちらっと後ろを振り返ると、壁に沿ってずらりと人が待っている。

うっかりその一人と視線を合わせてしまい、早く食べたいという気迫が伝わってくる。プレッシャーを感じる。

でも、一度に食べてしまうと勿体無いので、2~3枚を慎重に鍋に載せる。たまねぎが真っ白でやけに美味しそうに見える。

おばちゃんが楽しそうに、火ばさみでとんとんとたまねぎと肉を
ひっくり返して焼け具合を確認する。たまねぎは、口に含むと、苦手な独特の甘みが感じられず、しゃりしゃりとした歯ごたえだけが残る。

マトンもそっと1切れ、醤油ベースのタレに付けて食べてみる。癖がなく、柔らかい。御飯と交互に食べていると、肉っ!という実感がふつふつと湧いてくる。あっという間に完食だ。

この地では、手早く食事を済ませたいとき、ラーメン、牛丼、カレーなどの定番メニューにジンギスカンという選択肢もあるわけだ。うらやましい。

なにしろ一人用の七輪に自分だけの肉だ。誰に気兼ねすることもなく、上質のマトンを一人占め。素敵な街だね、本当に。

*2010年8月現在。
生肉1人前(たまねぎ付き)、ごはん、ジンジャーエール およそ1000円

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