見出し画像

2010年8月札幌 7 番外編 ネットカフェ

2010年の夏、北海道をツーリング中の夫が、転倒事故を起こした。幸い自損事故で、命にも別条なかったが、粉砕骨折を負い、札幌の病院にそのまま入院という事態になった。手術は、プレートを入れ補強するまでの手術と、プレートを取り出す手術とで、2回に渡った。ワタシは、2010年と2011年に、札幌滞在を余儀なくされた事態に便乗して、観光を楽しんだ。

*2010年と2011年に別のブログに投稿していた記録を転載したものである。



インターネットカフェに入るのは初めてだった。受付をしようとガラスの自動ドアを進むと木目調のカウンターがある。中にはにこやかな若い男性と女性。

身分証明書を提示して会員証を作らなければいけないので、割に時間がかかる。まずは座席のタイプをカラー写真を見ながら選ぶ。

個室なのか、カフェ席なのか、
泊まるつもりなので個室。

リクライニングチェアか横になれるマットタイプか、
眠りたいのでマットタイプ。

テレビ室かパソコン室か、パソコン。

翌朝払った料金は9時間ナイトパックを利用し、延長時間30分とシャワー代で2540円。

選び終わった私は番号が書かれたカードをもらって、受付の左横を抜けフリードリンクバーの前を通る。

各種お茶類、コーヒー、カプチーノ、野菜ジュース、フルーツジュース、 炭酸系飲料等々、目移りするほど豊富な種類の飲み物が用意されている。
ソフトクリームまである。

バーの反対側にはずらりと雑誌類が並んでいる。さらに進み自分のブースを探す。壁面には、少年、少女、青年、女性、恋愛、ホラー、スポーツなど
ジャンル別に、何万冊もの漫画がぎっしり詰まっている。

歩き回っていると、オープンタイプのマッサージチェアの場所に来てしまった。 数人の男性が漫画の世界に没頭している。目の前を擦り抜けても何の反応もない。

そうこうしているうちに、やっと自分の番号が見つかった。個室といっても、仕切りで区切られているだけで、2㎡ほどの面積に置かれたビニールマットの上に立つと、私の頭が隣のブースから見えることになる。

作り付けのテーブルに17インチ程度のパソコン、内線用の電話機がある。 マットの横は50センチほどの空き。パソコンのスイッチを入れ、メールを一通り点検し終わるとほっとする。

シャワーの使用はタオル付きで320円だ。使いたいとき受付に電話すれば、
シャワー個室の鍵とタオルを持ってきてくれる。

予め見ておこうとブースを出る。トイレ、シャワーの表示に従って、
ブース席がずらりと並んでいる通路を真っ直ぐ突き進む。喫煙区域らしくたばこの煙が体全体を覆う。

女子トイレのドアを開けて中を覗いてみる。椅子が配置されている化粧スペースとトイレが分かれていて、ちょっとしたデパートのトイレの様に居心地がよさそうだ。女の子が1人鏡に向かって熱心に化粧をしている。

シャワー室の扉を開けようとすると鍵が掛かっているので断念する。
ひと通り検分し終わったところで夜ご飯を食べに出ようと思う。

カレー、ピザ、スパゲティー、デザート各種、ファミリーレストランのような カラー写真のメニューがブースの壁に掛かっていたが、 いったん外に出て食事することに決める。

夜は、ほとんど眠れなかった。考えてみると、漫画、インターネットが主で
宿泊は付属的なものだ。そう開き直るとなかなか居心地よい。

夜、何度も店内を散歩した。同じように他の人達も、うろうろしている。

一方的な奇妙な連帯感が生まれる。皆一様に、他人と視線が交わることのないように、その先を固定させて、 ドリンクを注ぎ、漫画本を物色する。

シャワーから戻ってきたらしい女の子が、ジャージー姿に濡れた髪のまま通り過ぎる。 人工的な甘い香りが鼻を刺激した。

繰り返すようだが不思議な連帯感、誰も口を聞かない、誰もこちらを気にしない。24時間提供されている飲み物とソフトクリーム、何万冊もの漫画本が、無言で私達をもてなしてくれる。

ネットカフェ 9時間ナイトパック+30分延長料金+シャワー代=2540円
フリードリンクバー付 2010年8月現在。


いいなと思ったら応援しよう!