マタタビ酒

番外編②マタタビ酒

恋の花咲く春…

場末のBAR M&Nでは…

ピアニストの音ちゃんが、優雅に『さくらさくら』を弾いていた。

看板猫のねねは、バーカウンターの上で気合を入れてしょっしょっと入念に毛づくろい。

「今夜の猫集会の為に磨きに磨かにゃいとね!」
どうやら今夜は、商店街の看板猫たちによる猫集会が開かれるらしい。

バーテンダーのみつはというと…

「ジン…ウォッカ…トニックウォーター…ラム…リキュール類…
よし!!行ってきます!!」

カクテルの材料を買いに行くところである。

「いってらっしゃいにゃ!ちゅるちゅる忘れるにゃよ!!」とねねが言えば、

「へいへーい!良い子にしててよ!」とみつの返事

「気を付けてー!!子分付けなくて良いか?」と心配して音ちゃんが言えば、

「大丈夫だって!!どっかの偉い人じゃないんだからさ、近所だし!」と言うみつ。

そしてみつは愛車ニャッシュを運転して、10分程度の行きつけのリカーショップYUZUに向かう。
店で材料をそろえ、駐車場に向かうと、道路向かいに見覚えのないお店ができていた。

CAT CAFE MAGUROと書いてあるそのお店。
ちょっと覗いてみると、高そうなペット用品や、エサなどが売っていて更に店の奥の方に猫カフェがあった。
丁度よく、ねねの好きなちゅるちゅるもあったので、買っておいた。

『…会社は違うけど、いいよね?』

『時間はあるし…ねねも今夜出かけるし…少しくらい…いいよね!?』

みつの身体の中いっぱいに響き渡るみつの心の声。
ねねに悪いなぁとちょっと後ろめたかったけど、冒険心には勝てなかった。

1時間コースで猫のちゅるちゅる付き、ドリンクバー付きで2000円。

夢のような猫いっぱいの世界が待っているんだろうかとワクワクソワソワしながら猫の部屋へのドアを開けると…。

猫たちはみーんな、夢の世界に旅立っていた…

でも…アメリカンショートヘア、ラグドール、マンチカン、エキゾチック、アメリカンカール…みんな可愛くて、みんな良い子!!

ちゅるちゅるに気づいた子が、一生懸命舐めてくる!!

「可愛い!ゆっくり舐めてね」
嬉しくなったみつは、つい猫たちに話しかけるたが、ねねと違って何の返答もなく、もくもくとちゅるちゅるを舐めてくる。

ちょい、ちょい!みつのスマホのストラップにじゃれついてくる子がいた!!
右へ左へとストラップを揺らし、スマホを引っ張れば、引っ張るほど食いついてくる!!

「楽しい!」

ガリガリ…爪とぎで爪を研ぐ子もいた。

でも、何故か猫たちはみんなみつに寄ってこなかった。
優しく撫でようとしても、逃げられてばかりいた。

『な~んだ、つまんないの』心の中でぼやくみつ

1時間にならないうちに猫カフェを出て家路につくと…ねねが店先で仁王立ちになっていた!!

「ねね…どうしたの?」数時間前まではご機嫌だったはずのねねが急に不機嫌になっていて、不思議がるみつ

「待ちくたびれたにゃん!」頭に怒りマークを付けているねね。

「?そんなに遅くないでしょ?ねねこそ、今夜お出かけじゃないの?」困惑しているみつに、

「コロニャで中止にゃん!!どこに行ってきたにゃん!?」ますますおかんむりなねね。

「?買い出しって言ってたじゃん!ほら、これ…」証拠の品をねねに見せるつもりで買い物袋を差し出し、

「ほら、ちゅるちゅる…機嫌直してよ」中身をねねに見せると、仲を取り持つつもりが、逆手に出たようで

「いつものと違うにゃ!!誰と一緒だったにゃ!?」いっそう怒りの炎をたぎらせるねね

「一人だけど?」本当のことを話したつもりが、

「嘘をつくにゃ!!その沢ー山のにゃんこ達のフェロモンが動かぬ証拠にゃ!!」ここぞとばかりに怒鳴るねね!!

「うっ!?これは…その…訳があって…話し合おうね…ねね…!!」みつは、そーっとそーっとねねを鎮めるつもりが…。

「問答無用にゃー!!」
ねねの一括でそれは砕け散り

「愛してんのは、ねね、アンタだけだよー!!」
みつはねねに哀願するも、

「うるさーい!!浮気人間の常套句にゃーん!!」
怒り爆発中のねねには通用しなかった…。そして、ねねの必殺技!!

「猫パーンチ!!猫キーック!!猫ひっかき!!猫かみかみ!!」

「ぎゃあー!!!!神様仏様ねね様ー!!ご勘弁をー!!」

「音ちゃん!!助けてー!!」

「今回ばっかりはいくらなんでも助けられないぜ、おい」
音ちゃんでさえも救いの手を差し伸べる気がなかったらしい…。

「ひぃー!!」

ねねにコテンパンに伸されボロボロになったみつ。

「じゃあ、お詫びに秘蔵のマタタビ酒を出しましょう」

「そうこにゃくちゃ!!」
瓶にマタタビを入れ、氷砂糖と焼酎を入れてつけておいたものをカクテルグラスに出す。

マタタビ酒の出来上がり。

マタタビ酒は、人間にとって薬臭い飲み物だが、猫にとっては最上級の味わいらしい。

どうぞ。

「コキュッ、やっぱこれだにゃー!」

チリンチリン♪…で良いのかしら…?(泣)

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