番外編⑮ニャニ谷園のお茶漬け

番外編⑮ニャニ谷園のお茶漬け
沈丁花の甘い香りが香る春先。華やかなネオン街で猫のエサ会社ミャオカンの営業部新人歓迎会は行われた。
新入社員であるテンマは、張り切りすぎて、お酒に飲まれ、カラオケでは「冬を~飛ばして夏にな・れ~♪過激で~最高!!」と上機嫌だった。
しかし…テンマは歌い終わった途端に床に寝転んでしまい、しかし、テンマの先輩方は、介抱するどころか、「おい…コイツどうする?そこまで面倒見切れないよな…。」と相談し合い、なんとテンマを路上に寝かせたままでその場を去ってしまった…。
小一時間ほどたった頃、テンマは目を覚ましたが、ここがどこなのか、どこに行ったら良いのか分からない状態だった。
そこに現れたのが、BAR M&Nのマスター、みつと看板猫のねね(二ヶ月)だった。
「み~や?」(どうしたの?)と不思議そうにねね。
「あら、この人、酔いすぎて具合悪そうね。うちに連れて行こうね。」とみつ。
こうして、赤ちゃんのねねを連れたみつは、テンマを自分のBARに連れて行き、休憩室の布団で休ませることになった。
ねねは、テンマの寝ている布団の足元に丸くなって寝た。
しばらくして…。
グ~。テンマのお腹が鳴った。
みゃん!!とねねはビックリして飛び起きた。
みつは、お腹にやさしいニャニ谷園のお茶漬けをテンマに作ってあげた。
「ふ~、ふ~、温かくておいしい~。」
じんわり温かいお茶漬けが体中にめぐる
「僕はテンマ、助けてくれてありがとう!猫のエサを作る工場で営業だけど働いているんだ。これ、よかったら食べたみて、試作品なんだ。」
「あら、ミャオカンならねねにも食べさせてるわ、テンマさん、ありがとうね!」
「みゃん!!」(ありがとう!!)と嬉しそうにテンマのほっぺを舐めるねねだった。
それから、10余年経ったある日…。
突然テンマの会社が大手企業会社に吸収合併されて、人員削減のため平社員だったテンマはリストラされてしまった…。
ヤケになったテンマは、ひだまり商店街の居酒屋、猫吉でへべれけに酔ってまた道端に寝転がっていた…。そこへ…。
「あにゃっ?見たことあると思ったら、テンマにゃん?また酔いつぶれてどうしたにゃ?」と20才になったねね。
「あらら…、テンちゃんどうしたの?」とみつ。
「何だ?コイツ、仕方ねぇな…。どっこいしょ!しっかりしろよ!」
テンマをいとも簡単に担ぐ音ちゃん。
BARに着くなりテンマは、
「リストラにあっちゃった…アッハッハッハ!すごいなぁリスとトラでリストラ!!」
「あにゃ~…。何も言えないにゃん。」とねね。
「とりあえず、これ食べてね」とみつが出したのは、あの日と同じニャニ谷園のお茶漬け。
「グスッ…グスッ…僕が毎日サービス残業してまでやってきたあの仕事は、一体何のためだったの…??」
「まーまー、男がそんなに泣くもんじゃないよ。」と音ちゃん。
「アンタのとりえは明るさだから、何かにチャレンジしたら?」とねね。
「ありがとう!!みんな!!」と元気が出たテンマ。
それからまた数年後…。
「カムバック!マイホーム!!」とテンマ。
「どこほっつき歩いてたにゃん!?いつもいつもアンタは!?」とねねの怒号
テンマは、多額の退職金を基に、特にアテはないが、自分が悪酔いしない方法や、自分探しをする旅を続けているんだとのこと…。
チリンチリン♪

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