キャバ理論
日付が変わって今日から仕事始め。姫始めも済んでいないのに仕事始めとは、誠に遺憾である。
……びっくりするほど仕事したくない。わたくし蓼はキャバ嬢である。知名度はまだない。今日から爆裂飲酒、キモ客シバキが始まるかと思うと憂鬱。
飲み屋街に足繁く通うおじに伝えておくけど、清楚なあの子も親のために頑張ってるあの子も兄妹などのために働いているあの子も、みんな彼氏いるよ。キャバクラは夢を見る場所です。私たちはさしずめ、ディズニーランドのミッキー、ミニーちゃんといったところかな。私たちが見せる夢に入場料という名の対価を払います。ここまでは理解出来たかな?
夢を見せるのが仕事であって、叶えることは仕事じゃない。一回りも二回りも若い女の子と話すためにお金を払う。普段できない知的な会話や、美味しいご飯を食べさせていただく代わりに身だしなみを整えあなたがたに夢を提供する。
この物々交換が必要なんだな。それを「外で会おう!」なんていう男はゴミですよ、ゴミ。「結局金?」そうですよ、お店で出会ってるんですから。お店で出会っている=遊んでいる=私にも本気じゃない となる。なら、本気度をこちらも試さなければならない。なんでかってそういう人と毎日出会うから。キリない、マジで。時間とお金を使ってやっと「……もう少し中身みてみるか」になるんすよ。そこでやっと土俵に立てる。……そう言うキャバ嬢もいるでしょうね。私は違うが。客は客でしかない。好きな男はもっと他で見つけるんすよ。客からキスされても手握られても、私たちは『なんか当たったな』くらいにしか思わないよ。慣れっこ。
ここまで読んだおじ、お疲れ様でした。さいなら。
そして、三月で卒業したらキャバ嬢になろうと考えている女の子へ。ここからが本番です。
夜職は、キラキラしている場所ではありません。
ひめかちゃん、みゆうちゃん、ルナちゃんに憧れる気持ちもわかるよ。でも、キャバ嬢が載せるインスタグラムのストーリーや投稿は夜職の全てじゃないよ。あれは表面。ミッキーが急に被り物とってタバコ吸いながら「客多すぎんだろ、ろくにタバコも吸えねーよ笑」なんて言ってたらビビるでしょ?だから私たちも隠してる。容赦なく「ブス、おもんない、ヤらせろ、ちょっとくらい触らせろ」って言ってくるよ。高いプレゼントや高いシャンパンにはそれ相応のお返しが求められる。わかる?それが枕だよ。夜職って、今は良くも悪くも目立ってる。本来スポットライトを浴びるべきではないのに。コソコソと隠れてたらいい。路地裏の街灯と、それに群がる蛾。それがキャバ嬢と客。目立とうとしちゃいけない。夜職の女が、自分の承認欲求やらなんやらのために「夜職を認めろ」なんて言っちゃいけない。
大変な仕事だよ。飲んで吐いてを繰り返さなきゃいけない。彼氏がいても誕生日、バレンタイン、クリスマスは出勤しなくちゃいけない。体を触られても、キモいこと言われてもニコニコして躱さなくちゃ行けない。ホテル打診も沢山される。18歳の子にも容赦なく行くだろうね。若くて世間を知らない女が大好きだから。キラキラしたい、が理由なら、夜職に来るのはやめておきなさい。「家が貧乏、生活費のため、学費を自分で払いたい」などの場合は、一緒に頑張りましょう。こういう大きな理由がない限り夜職を選ぶのはお勧めしません。漠然とキラキラしたいってなっても、軸が無いからブレる。
だけど明確な目的があればそのために直走ることができる。変なプライドは捨てろ。でも一番大切な芯を曲げるな。「私は可愛い、私は強い」という自己肯定感は常に心に。プライドと自己肯定感は別物。似て非なるもの。長々と書いたが、要は『覚悟がないなら来ては行けない』ということです。
それではみなさま、よきキャバクラライフを。