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初めてのサイクリング旅と破られた地図

「ペンションメッツア」で、自転車で日本2周目中の青年がお客さんとして泊まった話があった。


青年は、自転車で旅をしていると、たくさんの人に親切にしてもらえる、と言った。

えー?そりゃああなた、ラッキーな人だな。

私は、はるか昔、大学の夏休みに決行した、人生初めての大冒険を思い出した。

神奈川のアパートから自転車に乗り、途中の港でフエリーに乗り北海道に渡って自転車で旅をしたのである。

おそらく東京~苫小牧のフェリーがあった頃である。たぶん今は大洗~苫小牧しかないかな?

その頃は、スマホもネットもない時代。観光情報や地図は、本屋さんで買ったガイドブックのみであった。

20歳になったばかりのうら若き乙女(笑)であった私は、初めての一人旅ということもあり、仕切りのない雑魚寝では眠れなかった。

それで、夜の船内を散歩した。

フェリーにはカップラーメンの自販機があり
、丸窓から海の見えるお風呂があった。

夜のカップラーメンは実に美味かった。

明るいロビーで本を読んだり、デッキにでて海を眺めたり、飽きることがない。

明るくなり始めた頃、お風呂に入り、丸窓から海を眺めた。

初めてのフェリー旅はとても楽しかった。

さあ、今日から北海道を自転車で旅をするのだ!

ようやく到着した苫小牧港で自転車を組み立てていたら、同じように自転車で旅をしている青年に話しかけられた。

地図ありますか?と聞かれたので、私はその頃、なけなしのお金で買って毎日のように眺めていた、宝物のように大切にしていたガイドブックを貸してあげた。

そうして、自転車の組み立てをしている間、その青年はガイドブックを読んでいるようであったが、そのうち、ありがとうと行って本を返して、そのままふいと居なくなった。

自転車で旅をしている人は多いのだなあ、と思いながら、さあ、どっち方面だっけか、とガイドブックをひらいたら、ちょうど苫小牧港周辺のページだけ破られていた。

ガーン!

まさに、頭の中でそんな衝撃音がしたようだった。

私は突然の悪意に遭遇し、冷水を浴びせられた気持ちになった。

ああ、世の中には、簡単に酷いことをする人がいるんだな、と驚いたが、負けるもんかと、気持ちが引き締まった。

その後のひとりキャンプの旅を何事もなく終えて無事に帰って来れたのも、旅の初めにカウンターパンチを喰らったからかもしれない。

未だにその人のことは許していない。

バチが当たるがよい!とずーっとずーっと思っている。

そろそろ当たったかしら。

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